第43話「読み合い」
第二回戦。
『神代透』
『森本海斗』
モニターへ表示された名前を確認すると、透はゆっくりと立ち上がった。
「行ってこい」
桐山が軽く拳を上げる。
「負けんな」
相沢も短く言う。
「……おう」
二人に背中を押され、透は競技場へ向かった。
先ほどまで玲司が立っていた場所。
同じ舞台。
だが。
立っている人間が違えば、感じる重圧も違う。
歓声が聞こえる。
名前を呼ぶ声。
期待する声。
透は一度だけ深呼吸をした。
「神代くん」
振り返る。
美月だった。
「いつも通りで大丈夫」
それだけ言うと、美月は微笑んだ。
透も自然と笑う。
「ありがと」
競技場へ足を踏み入れる。
対戦相手。
森本海斗。
茶色の短髪。
透より少し背が高い。
右手には魔力剣。
左手には小型の盾。
攻守のバランスが取れた装備だった。
「神代透か」
森本が笑う。
「一回戦見た」
「そうか」
「面倒な戦い方するな」
「褒め言葉ってことでいいか?」
「どうだろうな」
二人とも笑う。
だが。
試合が始まれば別だ。
「始め!」
桐生の合図。
森本が一気に距離を詰める。
速い。
透はすぐに盾を展開した。
金属同士がぶつかるような音。
森本の魔力剣が盾を叩く。
すぐには離れない。
押し込んできた。
「重っ……!」
透は歯を食いしばる。
藤堂より力は劣る。
その代わり。
技術が高い。
一撃ごとに角度を変え、盾の隙間を狙ってくる。
「なるほど」
透は距離を取った。
強い。
だからこそ。
焦る必要はない。
相沢との訓練を思い出す。
『一人だけ見るな』
視線を広げる。
森本だけじゃない。
地面。
距離。
立ち位置。
全部を見る。
森本が再び踏み込む。
右から斬る。
違う。
フェイント。
本命は左。
透は盾を滑らせるように動かした。
ギィン!
魔力剣を受け流す。
「っ!」
森本が目を見開く。
透はその隙を逃さない。
左手の盾で相手の剣を弾く。
同時に。
右手へ魔力を集中させた。
淡い光が集まる。
一本の魔力剣が形を成した。
「はぁっ!」
一歩。
踏み込む。
森本も剣を戻す。
剣と剣。
激しくぶつかり合う。
甲高い音が競技場へ響いた。
互角。
観客席がどよめく。
「神代、剣も使えるのか」
「当たり前だろ。盾だけで戦う奴なんていねぇよ」
上級生の会話が聞こえた。
森本が笑う。
「いいな」
「何が」
「楽しくなってきた」
透も口角を上げた。
同じだった。
強い相手。
だからこそ面白い。
森本が低く構える。
透も剣を握り直した。
ここからが本当の勝負。
互いに同時に地面を蹴る。
距離が一気に縮まる。
勝敗を分ける一撃が、今まさに交わろうとしていた。




