第41話「Sクラス」
第41話 Sクラス
神代透が一回戦を突破した頃。
会場の熱気はさらに増していた。
ランキング戦。
勝者と敗者が生まれる。
歓声
落胆
驚き
様々な感情が入り混じる。
透は医務室で軽い治療を受けた後、再び観客席へ戻っていた。
「おう」
隣に座ったのは桐山だった。
「悪くなかったぞ」
「上からだな」
「先輩だからな」
まだ一年だろ。
そう思ったが口には出さなかった。
「でも最後危なかったな」
桐山が言う。
「分かってる」
透も頷く。
勝った。
だが圧勝ではない。
むしろ紙一重だった。
藤堂は強かった。
もし対応が少し遅れていたら。
負けていたかもしれない。
まだまだだ。
そんなことを考えていると。
「次の試合を開始する」
桐生の声が響いた。
大型モニターへ名前が表示される。
『朝霧隼人』
『高橋誠』
会場がざわつく。
「隼人か」
透は競技場を見る。
隼人が気軽な様子で歩いていく。
まるで散歩だ。
緊張感がない。
対戦相手はBクラス上位。
決して弱くない。
だが。
「始め!」
試合開始。
高橋が突撃する。
一直線。
速い。
しかし。
隼人は動かない。
「おい」
透が眉をひそめる。
避けろ。
そう思った。
次の瞬間。
ドォォン!!
爆発。
高橋の足元が吹き飛んだ。
「なっ!?」
高橋が体勢を崩す。
さらに。
ドォン!!
今度は背後。
爆発。
高橋が転がる。
「いつの間に……」
透が呟く。
隼人は笑った。
「設置済み」
爆発。
爆発。
爆発。
競技場中に仕掛けられた魔力。
高橋は防戦一方だった。
そして。
「終わり」
最後の爆発。
高橋が場外へ吹き飛ぶ。
「勝者、朝霧隼人」
歓声。
透は思わず苦笑した。
「えげつないな」
「だろ?」
桐山も笑う。
「だからSクラスなんだよ」
その言葉に透は黙った。
確かに。
今の試合。
自分なら勝てる気がしない。
隼人は強い。
想像以上に。
そして。
次の試合。
モニターへ名前が表示される。
『橘美月』
『西園寺香織』
再び歓声。
美月が静かに競技場へ向かう。
緊張した様子はない。
いつも通りだった。
「始め!」
試合開始。
西園寺が能力を発動する。
水。
大量の水が宙へ現れる。
「へぇ」
透は少し驚いた。
強そうだ。
だが。
美月は動じない。
右手を上げる。
光。
細い糸が広がる。
数十本。
いや。
百本近い。
蜘蛛の巣。
そんな表現が一番近かった。
水弾が放たれる。
光糸が動く。
切断。
切断。
切断。
全て斬り裂いた。
「嘘でしょ……」
西園寺が顔を引きつらせる。
次の瞬間。
光糸が伸びた。
一瞬だった。
気付いた時には。
西園寺の両腕。
両足。
胴体。
全て拘束されていた。
「降参します」
即答だった。
「勝者、橘美月」
歓声。
透は遠い目になった。
「怖いな」
「敵に回したくないだろ?」
桐山が言う。
「回したくない」
本気でそう思った。
すると。
観客席の反対側からどよめきが起きる。
透は視線を向ける。
モニター。
表示された名前。
『九条玲司』
会場の空気が変わった。
期待。
興奮。
緊張。
全てが混ざる。
玲司が競技場へ降りる。
静かに。
堂々と。
まるで。
最初から勝者であるかのように。
透は無意識に拳を握った。
強い。
分かっている。
受験の時から。
嫌というほど。
それでも。
見たかった。
今の玲司を。
そして。
ランキング戦最注目の試合が始まろうとしていた。




