第4話「黒瀬迅」
午後の実技試験が始まった。
透たちは観戦席から他の受験生たちの戦いを見ている。
「しかし本当に強い奴ばっかだな」
透が呟く。
「ここ国内最高峰の学校だからな」
隼人が言う。
「お前は余裕そうだけど」
「全然」
「嘘つけ」
二人が話していると、試験官が次の対戦者を呼び上げた。
「黒瀬迅」
その名前が響いた瞬間だった。
「おっ、来た」
隼人が身を乗り出す。
「知ってるのか?」
「有名人」
「玲司みたいな?」
「いや」
隼人は苦笑した。
「別の意味で」
透が首を傾げる。
そして試験場へ現れた人物を見て納得した。
「うわ」
金髪だった。
しかも派手。
ピアスまで付いている。
どう見ても優等生には見えない。
「受験生?」
「たぶんな」
迅は欠伸をしながら試験場へ入る。
やる気があるようには見えなかった。
相手の受験生が露骨に安心した顔をする。
しかし。
「始め!」
試験官の合図と同時に空気が変わった。
迅の目から眠気が消える。
次の瞬間。
ドンッ!!
轟音が響いた。
「え?」
透は目を見開く。
相手の足元。
地面が爆発していた。
受験生が吹き飛ばされる。
さらに。
ドン!
ドン!
ドン!
次々と地面が破裂した。
逃げ場がない。
相手は必死に能力を使うが意味を成さない。
「そこまで!」
試験官が試合を止める。
わずか十数秒。
一方的な勝利だった。
「強っ……」
透が呟く。
「だろ?」
隼人が頷く。
迅は頭を掻きながら試験場を出ようとしていた。
やる気のない顔に戻っている。
「何の能力なんだ?」
「知らね」
「知らねぇのかよ」
「本人が教えないからな」
隼人が肩を竦める。
その時だった。
「見てたか?」
声がした。
透が振り向く。
そこには先ほどの金髪が立っていた。
「お」
隼人が手を上げる。
「久しぶり」
「誰だお前」
「ひでぇな」
迅は笑った。
そして透を見る。
「お前、盾のやつだろ」
「そうだけど」
「玲司とやってた」
透は少し驚く。
見られていたらしい。
「結構面白かった」
「負けたけどな」
「そりゃ相手が悪い」
迅はあっさり言った。
「玲司は化け物だから」
本人のいないところでも遠慮がない。
透は思わず苦笑する。
「黒瀬迅」
迅が名乗る。
「神代透」
「知ってる」
迅はそう言って笑った。
初対面なのに妙に距離が近い。
「なぁ」
「ん?」
「受かったらよろしくな」
迅は軽い口調で言った。
「俺、面白いやつ好きなんだ」
そう言って去っていく。
透はその背中を見送った。
「なんか変なやつだな」
「変なやつだぞ」
隼人が即答する。
「でも強い」
「それは分かった」
透は改めて試験場を見る。
玲司。
美月。
迅。
自分と同じ受験生とは思えない連中ばかりだった。
だが不思議と嫌な気持ちはしない。
むしろ。
負けていられない。
そんな気持ちの方が強かった。
透は静かに拳を握った。




