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ジャッジメント・マナ  作者: 顕微鏡


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28/40

第28話「ランキング戦」

翌日。

 能力者育成校の朝は早い。

 神代透は欠伸をしながら校門をくぐっていた。

「眠い……」

 昨日は訓練場に残り過ぎた。

 帰宅。

 夕飯。

 課題。

 風呂。

 気付けば深夜。

 当然眠い。

 だが。

 今日は休んでいる暇がなかった。

 教室へ入った瞬間。

 騒がしかった。

「マジかよ!」

「今年は早くね?」

「終わった……」

 朝から大騒ぎである。

「何だ?」

 透は席へ向かう。

「神代!」

 高梨が駆け寄ってきた。

「見てねぇのか!?」

「何を」

 高梨は教室前方を指差した。

 掲示板。

 そこには大きな文字。

【一年生ランキング戦開催決定】

「おぉ」

 透が声を漏らす。

 ついに来たか。

 能力者育成校名物。

 ランキング戦。

 学年内の順位を決める実力試験。

 単なるイベントではない。

 順位によって

使用施設

訓練予算

指導内容

まで変わる。

 能力者育成校で最も重要な行事の一つだった。

「三週間後だぞ」

 高梨が言う。

「思ったより早いな」

「だろ?」

 高梨は苦笑する。

 教室の空気も独特だった。

 緊張。

 期待。

 不安。

 様々な感情が入り混じっている。

 透も少しだけ胸が高鳴った。

 実力を試せる。

 今の自分がどこまで通用するのか。

 知りたかった。

 その時。

 教室の扉が開く。

 全員が静かになった。

 桐生だった。

 相変わらず無駄のない足取り。

 教壇へ立つ。

「知っていると思うが」

 低い声。

「ランキング戦が行われる」

 教室が静まる。

「これはただの試験じゃない」

 桐生は続ける。

「実力を示す場だ」

「上へ行きたいなら勝て」

「落ちたくないなら勝て」

「評価されたいなら勝て」

 シンプルだった。

 だが。

 それだけに重い。

 能力者の世界は実力主義。

 ここでは結果が全てだ。

「質問は」

 一人の男子生徒が手を挙げた。

「Sクラスとも当たるんですか?」

 その瞬間。

 教室がざわつく。

 皆気になっていたのだ。

 桐生は頷く。

「ああ」

 一言。

 だが。

 その一言の破壊力は大きかった。

「マジかよ」

「終わった」

「勝てるわけねぇ」

 悲鳴が上がる。

 透も少し驚いた。

 学年合同。

 つまり。

 玲司。

 隼人。

 美月。

 迅。

 全員が相手になる可能性がある。

 そういうことだ。

 胸の奥が少し熱くなった。

 面白そうだ。

 その感情が先に来た。

「神代」

 高梨が呆れた顔をする。

「お前今楽しそうな顔しただろ」

「したか?」

「した」

 否定できなかった。

 強い奴と戦える。

 それだけで少しワクワクする。

 授業終了後。

 透はいつも通り訓練場へ向かっていた。

 ランキング戦まで三週間。

 長いようで短い。

 今から出来ることをやるしかない。

「しゃーないか」

 自然と口から漏れた。

 誰に聞かせるでもない。

 ただの独り言。

 だが。

 その言葉と共に少しだけ気持ちが軽くなる。

 不思議なものだった。

 その時。

「何がだ?」

 後ろから声がした。

 透は振り返る。

 そこにいたのは。

 九条玲司だった。

「お前か」

「質問がある」

 玲司は相変わらず前置きがない。

「何だよ」

「ランキング戦」

 一拍。

「出るんだろうな」

 透は少し笑った。

「出るに決まってるだろ」

 すると。

 玲司も少しだけ笑った。

 本当に少しだけ。

「そうか」

 そして。

 それだけ言って歩き出す。

「おい」

 透が呼び止める。

「何だ」

「お前も出るんだろ?」

 玲司は振り返る。

 そして。

 当たり前だと言わんばかりに。

「当然だ」

 そう答えた。

 夕陽が校舎を赤く染める。

 ランキング戦まで残り三週間。

 それぞれの思惑を抱えながら。

 学園の空気は少しずつ変わり始めていた。

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