表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャッジメント・マナ  作者: 顕微鏡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/22

第20話「余韻」

帰りの車内は静かだった。

 行きとはまるで違う。

 誰も騒がない。

 誰も笑わない。

 全員が今日見たものを頭の中で整理していた。

 窓の外を流れる景色を眺めながら、透は大きく息を吐く。

 疲れた。

 身体よりも頭が。

 災害級魔獣。

 レーガ。

 赤い結晶。

 分からないことだらけだった。

「……」

 隣を見る。

 隼人も珍しく黙っていた。

 普段なら何かしら喋っている男なのに。

「どうした」

 透が聞く。

 隼人は少し考えてから答えた。

「いや」

「ん?」

「思ったよりヤバかったな」

 透は苦笑する。

「今さらかよ」

「いや本当に」

 隼人は頭を掻いた。

「ニュースで見てるのと実際に見るのじゃ全然違う」

 それは透も同じだった。

 映像越しと現実は違う。

 あの圧力。

 あの空気。

 あの恐怖。

 実際にその場にいたからこそ分かるものがある。

「正直」

 隼人が続ける。

「少しビビった」

 透は目を瞬く。

 珍しい。

 隼人が弱音を吐くのは。

「俺もだよ」

 正直に答えた。

 隠す必要もない。

 怖かったものは怖かった。

 すると。

「それ聞いて安心した」

 隼人が笑った。

 透も少し笑う。

 前の席では美月が資料を読んでいた。

 何の資料かと思えば魔獣の図鑑だった。

「何してるんだ」

 透が聞く。

「復習です」

 即答。

「真面目だな」

「皆さんもやった方がいいですよ」

 美月は本気だった。

 隼人が嫌そうな顔をする。

「今はいい」

「良くありません」

「先生助けて」

「俺に振るな」

 桐生は即答した。

 車内に少しだけ笑いが起きる。

 ようやく張り詰めた空気が緩んだ。

 その時。

「なぁ」

 迅が口を開いた。

 全員が見る。

 迅が自分から話し始めるのは珍しい。

「レーガ」

 その名前が出た瞬間。

 空気が少し変わった。

「どう思った?」

 透は少し考える。

「怖い」

 正直な感想だった。

 強い。

 じゃない。

 怖い。

 それが一番近い。

「分かる」

 隼人も頷く。

「先生より怖い」

「それは否定しない」

 桐生が言った。

 全員が吹き出した。

 だが。

 一人だけ反応が違った。

 玲司だった。

 ずっと窓の外を見ている。

 無言。

 透は少し気になった。

「玲司」

 呼びかける。

 玲司が振り向く。

「お前はどう思った」

 数秒。

 沈黙。

 そして。

「強かった」

 それだけだった。

「そりゃそうだろ」

 隼人がツッコむ。

 だが玲司は首を横に振った。

「違う」

「?」

「強いんじゃない」

 玲司は続ける。

「完成していた」

 車内が静かになる。

 透はその言葉を反芻する。

 完成していた。

 それは。

 どういう意味だ。

「俺達とは違う」

 玲司の視線が自分の手へ落ちる。

「能力の使い方も」

「戦い方も」

「全部」

 そこまで言って。

 玲司は黙った。

 それ以上は話さない。

 だが透は何となく分かった。

 玲司ですら。

 レーガとの差を感じたのだ。

 車が学校へ到着する。

 夕焼けが校舎を赤く染めていた。

 透たちは車から降りる。

 疲れているはずなのに。

 妙に眠くなかった。

 頭の中が整理できていない。

 そんな感覚だった。

「今日は解散だ」

 桐生が言う。

「しっかり休め」

 その言葉で生徒たちは散り始める。

 透も帰ろうとした。

 だが。

「神代」

 呼び止められる。

 振り返る。

 桐生だった。

「先生?」

「少し来い」

 短い言葉。

 だが断れる雰囲気ではなかった。

 数分後。

 透は職員棟の一室へ通されていた。

 応接室。

 学校には不釣り合いなほど高級そうな部屋だった。

「座れ」

 桐生が言う。

 透は素直に従う。

 すると。

 コンコン。

 ノックの音が響いた。

「入れ」

 桐生が言う。

 扉が開く。

 透は何気なくそちらを見た。

 そして。

 固まった。

 入ってきた人物を見て。

 整った顔立ち。

 穏やかな笑み。

 スーツ姿。

 どこか知的な雰囲気。

 テレビで何度も見た顔だった。

「初めまして」

 男が笑う。

「神代透君」

 透は言葉を失う。

 何故なら。

 目の前にいたのは。

 魔力庁長官。

 天城黎人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ