第10話「Sクラス」
実力確認はその後も続いた。
炎を操る能力者。
風を操る能力者。
身体強化型。
武器具現化型。
様々な能力が披露される。
透は改めて実感していた。
この学校には強い奴が多い。
本当に多い。
「次」
桐生が名簿をめくる。
「朝霧隼人」
「はいはい」
隼人が気軽な様子で前へ出た。
その姿に透は少し首を傾げる。
そういえば。
隼人の能力をまだ見ていない。
受験の時も別ブロックだった。
何となく強いのは分かる。
だが能力までは知らなかった。
「見せろ」
桐生が言う。
「了解」
隼人は右手を前へ出した。
魔力が集まる。
そして。
何も起こらなかった。
「……?」
透が眉をひそめる。
だが次の瞬間。
ドォン!!
訓練場の壁が爆発した。
「は!?」
透が叫ぶ。
訓練場がざわつく。
隼人は苦笑した。
「だから嫌なんだよなこれ」
「今の何だ?」
透が聞く。
「能力」
「いやそれは分かる」
全然分からない。
桐生が代わりに説明する。
「能力名《起爆》」
教室が少しざわついた。
「起爆?」
透が聞き返す。
「自分の魔力を設置し、任意のタイミングで爆発させる能力だ」
透は目を見開く。
強い。
単純だが強い。
「壁に魔力仕込んでたのか」
「正解」
隼人が笑う。
「見えない場所に設置できるのが強み」
確かに厄介だ。
戦闘中に使われたら相当嫌だろう。
「Sクラスなだけあるな」
透が呟く。
「まあな」
珍しく隼人が得意げな顔をした。
そして。
「橘美月」
美月が前へ出る。
静かに右手を上げた。
淡い光が現れる。
次の瞬間。
数十本の光の糸が空中へ広がった。
まるで蜘蛛の巣だった。
「綺麗……」
誰かが呟く。
だが。
美しいだけではない。
光の糸は一瞬で訓練人形へ巻き付いた。
締め上げる。
金属が軋む音が響いた。
そして。
バキン。
訓練人形の腕が捻じ切れた。
透の顔が引きつる。
「怖っ」
「敵にはなりたくないですね」
近くの生徒が呟いた。
全面的に同意だった。
「黒瀬迅」
迅が面倒そうに前へ出る。
ポケットに手を突っ込んだまま。
「やる気出せ」
桐生が言う。
「出してます」
「出てない」
即答だった。
だが迅は気にしない。
訓練人形の前へ立つ。
そして。
軽く地面を踏んだ。
瞬間。
ドゴォォン!!
訓練場全体が揺れた。
地面が爆ぜる。
訓練人形が宙を舞った。
そのまま天井近くまで吹き飛び、壁へ激突する。
沈黙。
透は言葉を失った。
何だ今の。
「能力名《震動》」
桐生が言う。
「触れた魔力の振動を増幅させる能力だ」
透は思わず迅を見る。
迅は欠伸をしていた。
あれで本気じゃないらしい。
そして最後。
「九条玲司」
空気が変わる。
玲司が前へ出た。
誰も喋らない。
受験の時の戦いを見た者も多い。
期待。
緊張。
様々な感情が混ざっていた。
「やれ」
桐生が言う。
玲司は静かに頷いた。
そして。
一歩踏み出す。
バチッ。
青白い雷光が走る。
その瞬間。
玲司の姿が消えた。
次の瞬間には。
訓練人形の目の前。
拳を振り抜く。
轟音。
訓練人形が吹き飛ぶ。
壁へ激突。
さらに。
雷が炸裂した。
爆発音。
訓練人形が粉々になる。
静寂。
誰も言葉を発せなかった。
強い。
あまりにも。
「やっぱ化け物だな」
隼人が苦笑する。
透も同意だった。
今の自分では勝負にならない。
いや。
何年かかっても届くのか分からない。
それほどの差があった。
だが。
不思議と悔しいだけではない。
むしろ。
少しだけワクワクしていた。
いつか追いつきたい。
いつか肩を並べたい。
そう思える相手だった。
「今日はここまでだ」
桐生の声が響く。
生徒たちが動き始める。
その時だった。
透のスマートフォンが震える。
メッセージ。
送り主を見た瞬間。
透の表情が変わった。
病院。
妹が入院している病院からだった。




