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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
王冠より重いもの

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軽くするための方法

 重さは、軽くできる。


 やり方はいくつかある。


 分ける。


 減らす。


 あるいは。


 誰かに渡す。


 朝。


 講義室の空気は、どこか曇っていた。


 言葉は少ない。


 でも、静かでもない。


(……混ざってるな)


 違うものが。


 席に着く。


 すぐに、老女官が口を開く。


「本日は、前回提出された案の検証を行います」


 短い説明。


「特定の事例に基づき、結果と責任の所在を明確にしなさい」


 一拍。


「共同案については、代表者を一名選出すること」


 その一言で、空気が変わる。


(ああ)


 そうなる。


 当然。


 分けた責任は、最後に誰かが持つ。


 完全な分散なんて、ない。


 ざわめきが広がる。


 小さいけど、はっきりと。


 視線が動く。


 さっきまで組んでいた相手。


 今度は、誰が前に出るか。


 静かな押し合い。


「では、始めなさい」


 自由。


 でも。


(自由じゃない)


 構造は決まってる。


 リリアは、動かない。


 一人だから、関係ない。


 ただ、見ている。


 小さなグループ。


 三人組。


「誰がやる?」


「……どうする?」


 声は抑えられている。


 でも、はっきり聞こえる。


「あなたがまとめたじゃない」


「でも、全員で決めたし」


「代表でしょ?」


「……」


 押し付け合い。


 露骨ではない。


 でも。


(分かるな)


 誰も、前に出たくない。


 理由は単純。


(責任が来る)


 結果が悪ければ。


 評価が下がれば。


 その矢面に立つ。


 だから。


(避ける)


 自然な流れ。


 少し離れた場所。


 アマーリエのグループ。


 彼女は、笑っている。


「じゃあさ」


 軽い声。


「順番でよくない?」


「順番?」


「今回は私、次はそっち、みたいな」


 提案。


「それなら公平じゃん」


「……まあ」


「そうね」


 完全ではない。


 でも。


(丸めたな)


 形としては成立する。


 アマーリエは、軽く手を上げる。


「じゃ、今回は私やるね」


 あっさりと。


 そのまま決まる。


(やるのか)


 少し意外。


 でも。


(ああいうの、嫌いじゃなさそう)


 押し付けるより、引き取る。


 その方が、楽なタイプ。


 一方で。


 別のグループは、まだ決まらない。


 視線が交錯する。


 沈黙。


 誰も、言わない。


(止まってるな)


 決められない。


 決めたくない。


 そのまま時間が過ぎる。


「決まらない場合は、こちらで指名します」


 老女官の声。


 静かに落ちる。


 一瞬で、空気が固まる。


(それは嫌だろうな)


 自分で選べない。


 でも、逃げられない。


 結局。


 一人が、小さく手を上げる。


「……私がやります」


 諦めに近い声。


 それで、終わる。


(こうなる)


 押し付けきれないと、誰かが引き受ける。


 形は違っても、結果は同じ。


 講義が進む。


 代表者が前に出る。


 案を説明する。


 検証される。


 指摘が入る。


 評価がつく。


 はっきりと。


 個人に対して。


(見えるな)


 責任の所在。


 逃げ場はない。


 終わる頃には、空気はさらに重い。


 でも。


(静かだな)


 騒がない。


 もう、分かってるから。


 廊下に出る。


 誰も、すぐには話さない。


 しばらくして。


「疲れたー」


 アマーリエが伸びる。


「お疲れ様です」


「思ったより来るね、これ」


「そうですね」


「でもまあ」


 軽く笑う。


「自分でやるって決めたし」


「はい」


「納得はしてる」


 それが、重要。


 押し付けられたわけじゃない。


 自分で選んだ。


 だから、受け入れられる。


 少し歩く。


 セレナが並ぶ。


「どうでしたか」


「問題ありませんでした」


 短い答え。


「指摘も想定内です」


「そうですか」


「はい」


 揺れない。


 最初から、そのつもり。


(強いな)


 やっぱり。


 リリアは、何も言わない。


 ただ、聞いている。


 三人で歩く。


 言葉は少ない。


 でも。


(見えたな)


 重さの扱い方。


 軽くする者。


 引き受ける者。


 そして。


(渡そうとする流れ)


 それも、確かにある。


 中庭。


 ベンチに座る。


 空は、少し曇っている。


(軽くする方法)


 いくつかある。


 でも。


(どれも、消えるわけじゃない)


 重さは。


 ただ、移動するだけ。


 第9章は、終盤に入る。


 次に来るのは――


 その重さを、それでも持つかどうか。

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