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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
排除と決断

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同じ土俵の重さ

 同じ土俵に立つ、というのは。


 公平になることじゃない。


 逃げ場がなくなる、ということだ。


 朝。


 講義室に入ると、

 机の上に一枚の紙が置かれていた。


 個別評価の結果。


(早いな)


 いつもより、少しだけ。


 手に取る。


 まだ開かない。


 周囲の気配を感じる。


 誰も、すぐには見ない。


 でも。


(全員、気にしてる)


 分かりやすい。


 数秒。


 そのまま時間が流れる。


 やがて、一人が紙を開く。


 それに続くように、他も動く。


 リリアも、視線を落とした。


 紙を開く。


 簡潔な記載。


 選択:第二案

 評価:可


(……妥当)


 それだけ。


 特に高くも、低くもない。


 理由の欄に、短いコメント。


 ――判断過程は安定しているが、決定に至る基準が曖昧。


(まあ、そうなる)


 予想通り。


 これまでの評価と、矛盾しない。


 紙を閉じる。


 特に感情は動かない。


 ただ。


(並んだな)


 と思う。


 他と。


 候補者たちと。


 同じ形式で、同じ基準で、同じように評価される。


 それだけのこと。


 でも。


(逃げられない)


 外から見ていたときとは、違う。


「結果について、簡単に講評します」


 老女官の声。


 全員が顔を上げる。


「今回の課題では、“決定に至る基準”が重視されました」


 静かな説明。


「結論そのものではなく、

 なぜそれを選んだのか」


 視線が、ゆっくりと巡る。


「そこが明確であるほど、高評価となります」


 数人が、わずかに頷く。


「逆に」


 一拍置く。


「基準が曖昧な場合、評価は下がる」


 短い言葉。


 でも、十分。


(分かりやすい)


 誰に向けているのかも。


「以上です」


 それだけで、終わる。


 講義は、そのまま進む。


 通常通り。


 でも。


(違うな)


 結果が出たあとの空気。


 少しだけ、重い。


 討議が始まる。


 発言は、いつも通り。


 でも。


(選ぶ前提で話してる)


 逃げ道がない。


 だから、最初から“決める”ことを前提にしている。


 リリアは、少しだけ視線を落とした。


(……面倒だな)


 今までは、途中まででよかった。


 考えるだけで、終われた。


 でも今は違う。


 最後まで、行かなければならない。


 結論まで。


 講義が終わる。


 人が動き出す。


 ざわめきは、小さい。


 でも、確実に残る。


 廊下。


 歩きながら、紙のことを思い出す。


 評価:可


 特に問題はない。


 でも。


(面白くもない)


 突出していない。


 安全な位置。


 それは。


(落ちないけど、上がらない)


 そういう場所。


「どうでした?」


 横に並んだのは、イーサ。


 久しぶりに声をかけてきた。


「普通でした」


「評価は」


「可です」


「そうですか」


 短い沈黙。


「納得は?」


「しています」


 本音だった。


 評価としては、正しい。


「では、問題はないですね」


「はい」


 そう答える。


 でも。


(問題はないけど)


 違和感はある。


「ただ」


 少しだけ、言葉を足す。


「基準を持つのは、やはり面倒です」


 イーサは、わずかに目を細めた。


「なぜですか」


「固定されるので」


 静かに答える。


「一度決めた基準に、引きずられる」


「それは安定とも言えます」


「そうですね」


 否定はしない。


「でも」


 少しだけ間を置く。


「変えるのが遅れる」


 それも事実。


 イーサは、何も言わなかった。


 ただ、小さく頷く。


「興味深いですね」


 それだけ言って、離れていく。


 一人、歩く。


(同じ土俵)


 言葉が浮かぶ。


 公平ではない。


 ただ、逃げられないだけ。


 評価される。


 比べられる。


 そして。


(落ちる可能性がある)


 今さらだけど。


 それが、現実。


 中庭。


 ベンチに座る。


 紙は、もう見ない。


 見なくても、内容は分かっている。


(どうするかな)


 このまま、同じように続けるか。


 少し変えるか。


 どちらでも、いい。


 でも。


(変えたら、それはそれで面倒)


 結局、どちらも面倒。


 小さく息を吐く。


 空を見上げる。


 第8章は、まだ続く。


 選んだ結果が出た。


 そして。


 次に来るのは――


 さらに削るか、残すか。


 その判断。

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