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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
排除と決断

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減らされるということ

 数は、減るものだ。


 増えることもあるけれど、

 この場所においては、逆の方が自然だった。


 最初から、分かっていること。


 全員は残らない。


 誰かは、落ちる。


 それだけの話。


 朝。


 講義室の扉を開けた瞬間、

 少しだけ違和感があった。


(……少ない)


 人が。


 いつもより、明らかに。


 数を数えるまでもない。


 視界で分かる程度に、減っている。


 席に着く。


 空席が、ぽつぽつと目立つ。


 誰も、そのことに触れない。


 でも。


(全員、気づいてる)


 静かなままの空気が、逆にそれを強調する。


 しばらくして、老女官が入ってくる。


 いつもと同じ足取り。


 同じ表情。


 何も変わらないように見える。


「本日より、一部候補者の再選別を行いました」


 淡々とした声。


 説明は、それだけ。


 理由も、基準も、詳細も言わない。


 ただ。


(いなくなった、ってこと)


 それだけが、事実として残る。


「講義は通常通り行います」


 それで終わり。


 いつも通りに戻る。


 討議が始まる。


 意見が出る。


 流れは変わらない。


 でも。


(少しだけ、軽い)


 人数が減った分、発言の回転が速い。


 沈黙が、短い。


 そして。


(余裕がない)


 どこかで、全員が分かっている。


 次は、自分かもしれない。


 その意識が、ほんの少しだけ混ざる。


「……」


 リリアは、特に何も言わない。


 聞いているだけ。


 いつも通り。


 でも。


(違うな)


 空気が。


 同じようで、同じじゃない。


 講義が終わる。


 人が動き出す。


 ざわめきは、小さい。


 でも、消えない。


 廊下に出る。


 足音が、少しだけ早い。


「減ったわね」


 隣に並んだのは、アマーリエ。


「そうですね」


「誰か知ってる?」


「いいえ」


 本当に、知らない。


 確認する方法もない。


 それでいいのかどうかも、分からない。


「……あっさりしてるのね」


「そうですね」


 感想を返す。


「怖くない?」


「怖いですよ」


 少しだけ間を置く。


「でも、それだけです」


 それ以上でも、それ以下でもない。


 アマーリエは、小さく息をついた。


「あなた、ほんとに変」


「よく言われます」


 短いやり取り。


 そのまま、少し歩く。


 前方に、セレナの姿が見える。


 声はかけない。


 ただ、同じ方向に進む。


 中庭。


 人は、やはり少ない。


 空いた空間が、少し広く見える。


 ベンチに座る。


 風が、少し冷たい。


(減る、か)


 頭の中で、整理する。


 制度としては、自然。


 選考である以上、削る必要がある。


 全員を残す意味はない。


 でも。


(やっぱり、実際に減ると違う)


 言葉で理解しているのと、

 目で見るのは、少し違う。


 足音。


 視線を上げると、セレナが立っていた。


「……ここ、いいですか」


「どうぞ」


 彼女は、隣に座る。


 少しだけ距離を空けて。


 沈黙。


 特に、会話はない。


 それでも、何かは共有されている。


「減りましたね」


 先に言ったのは、セレナ。


「そうですね」


「予想はしていましたけど」


「はい」


「実際に見ると、少し違います」


「そうですね」


 短い言葉が、続く。


「……どう思いますか」


 少しだけ間を置いて、彼女が聞く。


「何がですか」


「この選び方」


 曖昧な問い。


 でも、十分に伝わる。


 リリアは、少しだけ考えた。


「妥当だと思います」


 そう答える。


「感情的には?」


「特に何も」


 嘘ではない。


 本当に、何もない。


 ただ。


(少しだけ、現実になった)


 それだけ。


「……そうですか」


 セレナは、それ以上何も言わなかった。


 風が、少し強くなる。


 木の葉が揺れる音。


 静かな時間。


(排除)


 その言葉が、頭に浮かぶ。


 制度としての排除。


 個人ではなく、基準による選別。


 そこに、感情はない。


 だから。


(余計に、冷たい)


 誰が悪いわけでもない。


 ただ、残らなかっただけ。


 それだけ。


 第8章は、ここから始まる。


 減らされるという現実。


 選ばれないという事実。


 そして。


 それを受け入れるか、抗うか。


 まだ、誰も決めていない。

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