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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
王妃にならないものの発言権

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採用された違和感

 影響は、分かりやすく来るとは限らない。


 大きな変化ではなく、

 ほんの少しの修正として現れることもある。


 だからこそ、気づきにくい。


 そして。


(気づいたときが、一番面倒)


 朝。


 配布された新しい資料を見て、そう思った。


 内容は、これまでと大きくは変わらない。


 政策案の比較。


 評価基準。


 討議の進め方。


 どれも、見慣れた形式。


 でも。


(……一文、増えてる)


 視線が止まる。


 評価基準の欄。


 これまでは、明確だった。


 決断力。

 実行力。

 安定性。


 そこに。


 ――検討過程の妥当性。


(ああ)


 小さく、息を吐く。


 言葉自体は、珍しくない。


 むしろ、自然な項目。


 でも。


(タイミングがな)


 これまで、なかったもの。


 そして。


 今、追加されたもの。


 誰もが、それに気づいている。


 でも、誰も何も言わない。


 ただ、静かに受け入れる。


「本日より、評価基準が一部変更されます」


 老女官の声。


 説明は、簡潔。


「決断に至る過程も、評価対象とします」


 それだけ。


 理由は言わない。


 背景も説明しない。


 でも。


(十分だな)


 それで、伝わる。


 講義が始まる。


 いつも通りの討議。


 いつも通りの流れ。


 ただ一つ違うのは。


(見られてる場所が違う)


 結論だけじゃない。


 そこに至るまでの過程。


 迷い方。

 考え方。

 選ばなかった理由。


 それらが、評価される。


 静かに、変わっている。


「今回のテーマは――」


 老女官が、議題を提示する。


 内容は、難しくない。


 でも、単純でもない。


 討議が始まる。


 意見が出る。


 反論が出る。


 その流れは、今までと同じ。


 けれど。


(少しだけ、違う)


 結論を急がない。


 途中を、丁寧に辿る。


 誰がどう考えたか。


 それを、意識している。


「……」


 リリアは、少しだけ視線を落とした。


(これ)


 自分のせいだとは、言わない。


 でも。


(無関係ではない)


 昨日の記録。

 あの発言。


 責任と発言の話。


 それが、形を変えて入っている。


 責任がなくても、過程は評価できる。


 そういう形で。


(うまいな)


 否定もしていない。


 肯定もしすぎていない。


 制度として、吸収している。


 誰も損をしない形で。


「どう思う?」


 隣で、アマーリエが小さく聞く。


「いい変更だと思います」


「素直ね」


「実際、そうなので」


 過程を見るのは、悪くない。


 むしろ、必要。


「でも」


 少しだけ間を置く。


「面倒にはなります」


「でしょうね」


 彼女は、小さく笑う。


「あなたのせいで?」


「一部は」


 否定しない。


 セレナは、何も言わない。


 ただ、静かに考えている。


 その様子で分かる。


(ちゃんと受け取ってる)


 結論だけじゃない。


 そこに至るまでを、見られる。


 それは。


 彼女にとっても、簡単ではないはずだ。


 討議は続く。


 時間いっぱいまで。


 結論は出る。


 でも。


 それ以上に。


 過程が、残る。


 講義が終わる。


 人が動き出す。


 ざわめきは、小さい。


 でも。


(変わったって、分かってる)


 全員が。


 廊下。


 歩きながら、考える。


 発言が、記録される。


 記録が、評価に影響する。


 評価が、制度を変える。


(……面倒な流れ)


 関わるつもりはなかった。


 それでも。


 関わった結果が、ここにある。


「ねえ」


 後ろから、声。


 振り向くと、セレナ。


「今回の変更」


「はい」


「どう思いますか」


 短い問い。


 リリアは、少しだけ考えた。


「いいと思います」


 正直に答える。


「ただ」


 続ける。


「誰かのために作られた制度は、

 その人がいなくなったあとに歪みます」


 静かな一言。


 セレナの表情が、わずかに変わる。


「……あなたのことですか」


「かもしれません」


 否定はしない。


「違うかもしれません」


 どちらでもいい。


 そのくらいの距離。


 沈黙。


 少しだけ長い。


「でも」


 セレナは、ゆっくり言う。


「必要だったと思います」


「そうですね」


 それも、否定しない。


 風が吹く。


 静かな空気。


 変化は、小さい。


 でも、確実に起きている。


(採用された)


 違和感が。


 制度の中に。


 それは、悪いことじゃない。


 でも。


(もう、戻らない)


 前と同じには。


 第7章は、ここで一度、形になる。


 言葉が残り、

 影響を持ち、

 制度に触れた。


 そして。


 次に来るのは――


 結果。

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