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第二十一話 再対峙

「ほぉ、思ったより早かったな。血の術式でも使ったか? さすがだな」


 聖天使ラーは驚きもしないで、フローレを見つめる。


「あら、あなたに褒められるなんて、なんか気持ち悪いわ」


 フローレは苦笑した。


「それにしても、随分元気になったわね」


「私には無限の補給源があるのでな」


 今度は聖天使ラーが苦笑した。

 眼下には聖都の煌びやかな灯りが無数に見える。聖天使ラーにとってはファルス神聖国の国民全てが自身の糧なのだ。



「人間を糧にする生き物について否定する気はないわ。人間だって動物の肉を食べているし」


 フローレの言葉は既に人間側の言葉ではなかった。全種族を広い視野で見ている、俯瞰した客観的な意見だ。

 それについてシャスターたちは否定はしない。実際に、人間も森で狩猟したり家畜を飼ったりしているからだ。主従の単語が入れ替わるだけだ。


「でも、あなたのやり方は気に入らないわ。ファルス神聖国を利用して人間を騙しているのは卑怯よ」


「奴等は私に飼われることを喜んでいる」


「人間には意志がある。騙されていることが分かれば、飼われたい者なんていなくなるわ」


「何とでも言うが良い。負け犬の遠吠えにしか聞こえぬ」


 聖天使ラーは馬鹿にした笑みを浮かべた。



「さて、お前との戦いのためにもう少し魂を摂っておくとするか」


 聖天使ラーが大きく息を吸うように両手を広げる。すると地上から無数の白い粒子が流水のように吸い寄せられて聖天使ラーに吸収されていく。


「無益な殺生はやめなさい!」


 フローレが大声で叫ぶ。

 きっと聖都では何百、何千もの人間が死んでいるはずだからだ。


「私の家畜をどうしようと私の勝手だ。そのために作った国だ」


 星天使ラーの身体が一層強く輝き始めた。


「傲慢の罪」


 次の瞬間、フローレの動きが止まった。

 聖なる呪い(サンクティオ)である七つの大罪のひとつ「傲慢の罪」。それによって動きを止められたのだ。先ほどまでの聖天使ラーとは比べものにならない強さだ。


「一万年前と同じ状況になったな」


 一万年前、始祖の吸血鬼オリジン・ヴァンパイアだったフローレは聖天使ラーの傲慢の罪によって動きを封じられた。しかし、その時フローレは最後の力を振り絞って、ラーの攻撃を防いだのだ。自分の魂の封印と引き換えに。


「あの時、お前の強力な結界で私は遥か上空に飛ばされてしまったが、今度は逃がさぬ」


 既に聖天使ラーは周囲に強力な結界を張っていた。

 一万年前のフローレを真似たのだ。これではフローレが新たに結界を張っても無意味だ。


「光の羽根」


 聖天使ラーの無数の羽根がフローレに向けられる。


 フローレは絶体絶命に陥っていた。



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