第二十二話 壮絶
「血の無効化」
しかし、フローレも負けてはいない。
傲慢の罪の効果を無効化したフローレは間一髪で光の羽根の攻撃を避けた。
「なっ!?」
「ふぅ、ギリギリ間に合ったわ」
時間の経過と共にフローレの能力がさらに上がっていたのだ。
覚醒を始めたフローレの身体が始祖の吸血鬼の能力を十二分に引き出し始めている。
「血の星々」
今度はフローレが攻撃を仕掛けた。真っ赤な隕石が次から次へと天空から聖天使ラーに向かって襲いかかる。
圧巻な光景だった。
聖天使ラーは反撃もできずに攻撃を受け続ける。シャスターとヴァルレインも固唾を飲んで見ている。
しかも、隕石は地上に落ちる前に消えるため、地上への被害な皆無だ。フローレが人々を守っているのだ。
「フゥ、フゥ、フゥ……」
攻撃が止んだ後、全身がボロボロになった聖天使ラーがフローレを睨みつける。
「いい気になるな!」
次の瞬間、瀕死の身体に力を込めた聖天使ラーは一気に全ての羽根をフローレに向けて飛ばした。
「血蝕の門」
だが、フローレは全く動じていない様子で血の術式を放つ。
すると、一帯を覆うほどの巨大な血の蝕が現れた。真っ赤な口を開けたような蝕が全ての羽根を吸い込んでいく。
今度は聖天使ラーが追い込まれた。
と思われたが。
「はははははっ!」
血蝕が消え去った後、そこには笑みを浮かべた聖天使ラーが立っていた。しかも、先ほどまでの疲弊が嘘のように全身から活力がみなぎっている。
血蝕でフローレの視界から消えていた間、聖天使ラーは地上にいる大勢の人間たちの魂を吸い取っていたのだ。
「ラー、あなた!」
「いくらでも攻撃するがよい。その度に私は人間の魂を吸い取るだけだ」
二人の伝説の者の戦いは凄まじいものだった。
ただ戦っている場所は聖山よりも遥か上空だ。聖都の何十万人もの人々からは二人の戦う姿が見えることはない。
しかし、夜空に焼けるような激しい閃光と天をも揺るがす爆音が連続して続いているため、人々は何事が起きたのか分からず、聖都では騒乱が起きていた。
そんな人々以上に驚愕していたのは八聖卿たちであった。彼らは一般人とは違い、何が起きているのか知っている。
彼らは八聖卿の間で上空の画面を見つめていた。再び、聖天使ラーが降臨されたのだ。しかも、宿敵である吸血鬼の王、始祖の吸血鬼と戦っているのだ。これほど歓喜することはない。全員が画面を食い入るように凝視していた。
ただ、すでにカナルダン騎士団長は聖都の人々の治安維持のために陣頭指揮をとりに八聖卿の間にはいない。また、ナルイザ卿も高官たちに指示を出すためにいなかった。
そして、いつの間にかユーリットも八聖卿の間から消えていた。




