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第二十話 一万年前からの策略

「血界の応用を使ったのか」


 予めダリアーナは聖都に自身の血を付着させておいたのだ。

 しかし、それだと新たな疑問も出てくる。


「でも、永遠の吸血鬼エターナル・ヴァンパイアが血界で転移できるのは二人が限度では?」


 実際、以前にシャスターは永遠の吸血鬼エターナル・ヴァンパイアの公爵たちから、そう聞いていた。


「ダリアーナは私の最初の吸血鬼ヴァンパイアです。永遠の吸血鬼エターナル・ヴァンパイアの中でも最も私の血を濃く受け継いでいるのです」


 先ほどもフローレが覚醒で動けない間、ダリアーナが聖天使ラーの攻撃を防いでいた。聖天使ラーが消耗していたとはいえ、永遠の吸血鬼エターナル・ヴァンパイアには出来ない芸当だ。

 だからこそ、この人数でも同時に血界の応用が使えるのだろう。



「それにしても、聖天使ラーも吸血鬼ヴァンパイアみたいに血を吸う……あっ、いや、じゃなくて……魂を吸う生物だったとはね」


 慌ててシャスターが言い直す。

 吸血鬼ヴァンパイアのフローレに対して悪いと思ったのだろう。

 そんなシャスターを見てフローレが笑う。


「もちろん、私たちは吸血鬼(ヴァンパイア)ですから人の血は吸います。でも、絶対に吸わなくてはならないものではありません」


 血の摂取をすると活力が増すが、普通の食事でも問題はない。人間の血は嗜好品の類に近い。だから少量でも良いのだ。


「実際、私は四人の永遠の吸血鬼エターナル・ヴァンパイアに血を分け与えた後からは人間の血を飲んでいません」


「どうして?」


「人間の作る料理の方が美味しいからです」


 フローレはもう一度笑った。

 フローレが血を飲んでいた頃はまだ人間の文明はそれほど発達していなかった。しかし、文明が発達し、料理も非常に美味な食物へ進化していったのだ。


「美味しさだけでいえば、血よりも高級料理のほうが断然上ですよ」


「しかし、実際多くの吸血鬼ヴァンパイアは人間を襲って殺している。だから神官などは吸血鬼ヴァンパイアを悪しき存在、滅ぼすべき存在だと認識しているはずだ」


 話に割って入ったヴァルレインが一般論を話した。

 五芒星の後継者として中立の立場をとっているのだ。


「もちろん、悪逆非道を働いている吸血鬼ヴァンパイアもいるでしょう。しかし、ほとんどの吸血鬼ヴァンパイアは血を飲むだけであって殺すことまではしていません」


 フローレに代わってダリアーナが答えた。

 始祖の吸血鬼オリジン・ヴァンパイアとしてのフローレは一万年間封印されていた為、現世の状況を知らないからだ。


「変だな。吸血鬼ヴァンパイアは人間の血を吸って殺す、というのが定説だが……なるほど、そういうことか!」


 自分自身で答えに辿り着いたヴァルレインは驚く。


「全ては聖天使ラーの策略か」


「はい。ラーによって、吸血鬼ヴァンパイアは人間に害をなす悪しき存在だと情報操作されているのです。ファルス神教を通じて一万年も前から」


「それで合点が行く」


 ヴァルレインは、吸血鬼ヴァンパイアに襲われた事件の多くがファルス神聖国で起きていると聞いたことがあった。神官たちが多い国で吸血鬼ヴァンパイアが多発していることを不思議に思っていたのだが。


「犯人は吸血鬼(ヴァンパイア)ではありません。ラーの仕業です。自分の国で好き放題しているのです」


 つまり、聖天使ラーは自国で大量の国民の魂を吸っていたのだ。



「まぁ、伝説上の者(アウディミス)が何をしようが勝手だし、ましてや自分でつくった国でやることに口を挟むつもりもないけど」


 ヴァルレインとダリアーナの会話を聞いていたシャスターが口を開いた。


「しかし、フローレたちを悪人に仕立てたのは許せないな」


 シャスターの声には多少の怒りがこもっていた。


「ほぉ、いつもやる気のないお前が珍しいな。始祖の吸血鬼オリジン・ヴァンパイアに惚れたか?」


 冗談でもなく真顔でヴァルレインが言い放つ。

 すぐさま、反論しようとしたシャスターだったが。


「シャスター様!」


 いきなり、フローレが抱きついてきた。

 フローレの大き過ぎる胸に顔を挟まれてシャスターは息ができない。



「来ます」


 そんな中、一人だけ冷静な星華が叫ぶ。


 ついに、聖山方面から光り輝く天使が現れた。



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