第十八話 強化
以前、聖天使ラーは第二、第三聖騎士団の約千人、さらに五万人もの一般兵の魂を吸い取った。
それなのに、第四聖騎士団の聖騎士たちの魂だけを吸わずにそのままにしておいた理由。
「万が一のことを考えて、第四聖騎士団を残しておいて正解だったな」
聖天使ラーは五芒星の後継者と連戦になった場合に備えて、最悪の状況を想定し第四聖騎士団の死体をストックしておいたのだ。
「まさか、クランヴィアと戦うことになるとは思っていなかったがな」
聖天使ラーは上空にいるフローレに視線を向けた。
「人間とはいえ、聖騎士の魂だ。この数でも十分に満たされる」
すでに聖天使ラーは第四聖騎士団約千人の魂を吸い取っていた。シャスターと戦う前の体力に戻っているようだ。
「あなたの大切な聖騎士団の聖騎士たちでしょ? どうしてこんな酷いことができるの?」
フローレが地上に向かって叫ぶ。
「酷いこと? すでにこの者たちはラティーマの後継者によって殺されていたのだ。それに私に魂を吸われるのだ。彼らにとってこの上ない栄光だと思うがな」
聖天使ラーはもう一度笑った。
「許せない!」
フローレは地上に急降下すると、ダリアーナから借りた剣を振りかざしながら聖天使ラーに攻撃を仕掛ける。
以前は短剣さえも扱えなかったフローレからは想像もできないほどの剣さばきだ。
しかし、聖天使ラーは全て紙一重で避けていく。
「お前は一万年前よりも強化した身体を手に入れたようだが、私は魂を吸収すればすぐに能力が強化されるのだ。しかも、吸収すればするほど強くなる」
それを物語るように、先ほど戦った時よりも明らかに聖天使ラーは強くなっている。
「でも、その強さは一時的なこと。長続きはしないでしょ?」
「そうだ。だから私は常に魂を吸い続けるのだ。無尽蔵にいる人間からな」
聖天使ラーは攻撃を避けながらも余裕の表情だ。
「とはいえ、このままでは私の方が不利だな」
聖天使ラーは上空を見上げた。
そこには二人の五芒星の後継者がいる。今後、彼らが参戦してくる可能性が高い。
さらに覚醒したばかりのクランヴィアも身体が慣れてくればさらに強くなるだろう。
そうなると、聖騎士千人の魂を吸い取ったラーでも敵わない。
「この場は一旦、去ることにしよう」
「逃がさないわ」
フローレは聖天使ラーが逃げられないように休む間もなく攻撃し続ける。
しかし、聖天使ラーはそんなフローレを嘲笑うかのようにその場から突然消えた。
「なっ!?」
「私と戦いたいのなら聖都に来るがよい」
聖天使ラーの声だけが聞こえてくる。
「待ちなさい!」
しかし、返答はない。
「ラー!」
フローレの叫び声は虚しく響き渡るだけだった。
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