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第十四話 前世の因縁 4

「ほぉ。私の『傲慢の罪』を破ったのか?」


 ラーは驚く。

 人間の魂を吸った直後のラーの実力は、クランヴィアを遥かに凌駕しているはずだ。

 それなのに、クランヴィアに攻撃を破られるとは。


「まさか、お前も人間の魂を!?」


「馬鹿なこと言わないで!」


 クランヴィアはラーを睨みつける。

 心の底から怒っているようだ。


「私はあなたと違って魂まで吸うことはできないわ。仮にできたとしても、絶対に吸うことはない。人間を殺すことになるから」


「人間を殺すことが何がいけないのだ? 人間はいくらでも増えるのだぞ」


「神との約束だから」


「……ああ。そうだったな。お前の話が本当だったらな」


 ラーは馬鹿にしたような笑う。

 当然ながら、ラーもクランヴィアと同じく、神々から「地上での威光を知らしめること」の使命を受けていた。

 しかし、「人間を増やすこと」の使命は受けていない。それを受けたのはクランヴィアだけだ。しかも、クランヴィアの話によると、ある一人の神から使命を受けたということだ。

 ラーはクランヴィアの話を信じていなかった。

 血を吸う吸血鬼(ヴァンパイア)にとっては人間が増える方が都合が良い。つまり、同族を増やす為のクランヴィアの単なる口実だろうと思っていた。

 とはいえ、ラーにも打算があった。地上で増えていく人間を上手く使えば、ファルス神族の威光を広めることになることは確かだ。

 さらに自分の能力向上の糧としても人間は多ければ多いほどいい。



「お前の話が本当かどうかはどうでも良いことだ。私はファルス神教を作って人間を支配する。人間の魂も好きなだけ奪う」


 突然、ラーは背中の羽根を飛ばして部屋の一面を破壊した。

 すると、壁の向こう側には数百人の人間が生きたまま鎖に繋がれていた。


「ラー! あなた、まさか?」


「はははは。見よ、これが私の吸収方法だ!」


 ラーは笑いながら両手を上に向ける。

 すると、人間たちが次々に倒れていく。

 ラーが人間の魂を吸い取っているのだ。


「お前のようにわざわざ直接血を吸う必要もない。間接的に吸収できる私は一気に数百人の魂を奪い、すぐに自分の能力に変えることができるのだ。つまり、お前よりも私は上位種なのだ!」


 数百人の魂を吸収したラーの身体は一回り大きくなった。


「傲慢の罪」


 ラーから放たれた黒い光によって、クランヴィアの身体は再び動かなくなる。


「さらに能力が跳ね上がった私の攻撃だ。指一本も動かすことはできまい」


 その通りだった。

 さらに強く締め付けられたクランヴィアの身体は動かない。

 それに、先ほど「傲慢の罪」を破った時に力を使い果たしてしまっていた。

 もはや、クランヴィアになす術はない。



「私を倒す、と強がっていたようだが」


 ラーは苦笑すると、哀れみの目を向けながら背中の羽根をクランヴィアに向ける。


「死ね!」


魂を覆う結界ブラッド・サイキヴェイル!」


 ラーが羽根を飛ばしたのと同時だった。

 最後の気力を振り絞ってクランヴィアが叫ぶ。

 すると、部屋中の空間が歪み始めた。


「何だと!?」


 突然、ラーは部屋から吹き飛ばされた。

 いや、正解に言えば、部屋から遠くへ転移させられたのだ。


「ここは……」


 ラーは自身の居城の遥か上空に浮かんでいた。

 慌てて戻ろうとするが、目に見えない結界によって居城を含んだ広域に入ることができない。


「……なるほどな」


 何が起きたのか、ラーはすぐに理解した。

 クランヴィアが血の術式を使って結界を張ったのだ。しかし、力を使い果たした状態で、あれほど高位の血の術式を使ったのだ。クランヴィアが生きていることはない。


「いや、転生をするつもりか」


 だから、強力な結界を張って自分の身体を守ったのだろう。

 いつの日か、魂が戻る時のために。


「よかろう、クランヴィア。お前が転生して戻ってくることを楽しみにしているぞ。その時までに身体があればの話だが」


 大きく笑ったラーはその場から消え去った。



 それから一万年もの間、冥々の大地中央部には何人たりとも入ることができなくなった。





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