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第十三話 前世の因縁 3

「ここに呼んだのもお前を殺すためだ」


「……騙したわけね」


「ふん。敵対する相手の居城にノコノコと来る方が間抜けだろう? それとも、私と戦っても死ぬことはないと思ったか?」


 ラーが苦笑すると、さらに禍々しいオーラーが大きくなる。


「お前のその傲慢さが命取りだ」


 ラーの羽から黒い光が放たれる。

 その光を浴びたクランヴィアは動けなくなってしまった。


「これは『傲慢の罪』!」


 クランヴィアは激しく身体を動かすが、全く動かない。

 過去にも「傲慢の罪」の攻撃を何度か受けたことはあったが、ここまで動かないことは初めてだ。


「うわはははっ! 今までの私とは違うぞ」


 ラーは勝ち誇って大笑いする。


「こんなことして、ただで済むと思っているの?」


 苦しい表情を見せながらもクランヴィアはラーを睨みつけた。

 自分を殺そうとしていることにではない。

 人間を大量に殺していることにだ。


「地上でファルス神族の威光を知らしめるため、人間を増やすことが神々の意思よ。あなたはそれを守らないの?」


「私がファルス神教をつくれば、神聖魔法が使えるようになった人間は強くなる。さすれば人間はさらに増えていくだろう。私は神々に貢献しているのだ」


「……」


「それに、私は代行者だ。少しぐらい役得があっても良いのだ」


 ラーは冷酷に笑ったが、すぐに収まる。


「そんなことは絶対に許さない!」


 クランヴィアの凛とした声が部屋中に響いたからだ。その声にラーは怯んだのだ。



 叫んだクランヴィアには強い使命感があった。



 神代の末期の頃だ。


 ファルス神族の地上の代行者に指名されたクランヴィアは到底納得していなかった。天界に昇る予定の神々はもう地上に戻ることはない。つまり、神々とは今生の別れとなるのだ。

 クランヴィアはファルス神族の(しもべ)として常に最前線で戦い、多くの敵を倒してきた。その軍功から序列第一位までなった。

 それなのに地上に残されるのだ。しかも、地上でファルス神族の威光を知らしめるとは。神々のいなくなった地上で威光を示すなど、何の意味があるのだろう。


 しかも、険悪な関係である序列第二位のラーと共にだ。

 これは自分を追い出すためのテイの良い口実なのだろう。

 クランヴィアは悔しい気持よりも、神々に必要とされていないという悲しい気持ちの方が大きかった。


 地上に残ることが決まった時からクランヴィアは塞ぎ込む日々だった。

 しかし、そんなクランヴィアにある日、ひとりの神が声を掛けてきたのだ。


「ファルスの神々はあなたを信頼しているからこそ、地上に残すのです。無論、私もあなたを眷属の中で一番信頼しています。人間を増やして地上を守りなさい。幾星霜の後、再び会えることを楽しみにしています」


 自分が必要とされていることを知ったクランヴィアは感極まり、その場で泣き崩れた。

 そして、地上で使命を果たすことを心に誓ったのだ。



 だからこそ、自分の能力を上げるためだけに、多くの人間を殺しているラーが許せないのだ。


「私があなたを倒す」


 クランヴィアの身体が眩く光る。

 次の瞬間、クランヴィアを覆っていた黒い光が四散した。


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