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夜鷹の夢  作者: 首藤環
一章
25/47

24 年少組の半生

 大陸から前回の戦火が消え、小競り合いはあったが、人々にとってはそこそこに平和だった永い時が経ったある年。

 大陸の西方の広大な領地を誇る超大国、その頂点に君臨する時の皇帝は宣戦を布告した。

 当時、皇位を継承したての皇帝は齢三十程。

 支配者として若くはあったが決して暗君ではなく、無茶な政策を打ち出したりの圧政はせず、むしろ名君とも言える。

 皇帝は魔物の脅威を大陸より一掃するため、全国家首脳に人類統一連合軍を提唱したが、国家間の軋轢により、それは露と消え、最終手段として武力を用いた大陸の統一を図った。


 しかし、選民思想に染まった者の先行や各国の思惑により捻れに捻れて開かれた戦端は、飢饉や高い租税を地方の貴族領で誘発した。


 安定を欠いた上に大陸のおよそ半分を敵に廻すも、帝国はその莫大な人的資源と物量を用いた圧倒的な軍事力で各国を撃破。

 極東では数ヶ月に渡り最後の一国から激烈極まる抵抗を受けたものの、大貴族に率いられた数百万の極東鎮定軍が圧殺。

 最果ての皇国を残して大陸の全国家の首都を制圧、大陸中を巻き込んだ空前絶後の大戦争は幕を閉じた。




 開戦と同年、貧しくなりつつある帝国領の北西部の辺境に、クレア、クウリ、イリスは産まれた。


 村では三人きりの同い年で、村では纏めて扱われた。

 粟や稗と薄いスープだけの粗末な食事を三人で一緒に食べ、五歳からは一緒に畑を手伝い、共に育った。



 三人が九歳になった頃、村を飢饉が襲った。

 飢饉自体は何年かに一度は起こるもの故、いつもは備えもしてある。

 だが、領主の兵による供出という名の強制徴収で村の蓄えは無くなっていた。


  三人の両親は口減らしとして自分達の子供を奴隷商に売った。

 ただの農民の子の割には容姿が整っていても慢性的な栄養失調で痩せている三人は随分と安値で買い叩かれたが、その金で彼らは冬を越せた。


 悲劇的だが、飢饉に襲われたどの村でも少なからず似た事態が起きている。

 同じような境遇の子供を奴隷商の店で山ほど見た三人は、両親が生きていけるならそれで良いと思った。


 それに自分達はまだマシだ。

 村が滅びて三人とも孤児になるよりは奴隷の方が食べるアテもまだありそうだ。

 最悪じゃないと開き直り買い手を待った。



 買い手はそう待たずして現れた。


 三人が奴隷商に用意された一室で寝泊まりを始めて二週間程が経った時だった。


 客が来たと麻の服を着せられて鉄格子の陳列ケースに纏めて送り込まれて突っ立っている三人を買い上げたのは、かなり身なりが良く裕福だが、シニカルな笑いを浮かべている若い商人だった。

 三人を選んだ理由は、服を誂えればそう見苦しくないであろう容姿と、奴隷商が捲し立てた農村育ちの体力というセールスポイントを認めたからだった。


 商人ーー痩せ気味で常に口の端だけ吊り上げて笑っている男ーーに買われた三人はどのような扱いを受けるのかと、奴隷搬送用の籠馬車の中でやきもきしながら不安な気持ちを募らせた。


 名前も知らない都会に建つ商人の屋敷に連れていかれた三人は、家屋の巨大さに驚く間もなく屋敷の地下の奴隷部屋に押し込まれた。


 ベッド代わりの藁束と排泄用の下水道へ繋がる穴以外に何もない、鉄格子に閉じ込められた部屋だった。

 例えるならまさに監獄。


 村より貧しい食事出されたが、奴隷とはそういうものなのだろうと三人はとりあえず食べて眠った。


 翌朝、乱暴に蹴り飛ばされて目を覚ました三人は寝惚け眼を擦る前に手錠と足錠で繋がれて馬車に積まれた。


 奴隷の脱走を許さない堅固な馬車に揺られて着いた場所は森の端だった。


 予定も仕事も説明されないままに待機させられた三人が話し声にふと目を遣ると、先に着いていた商人は、華美な装飾を着けた肥満体の貴族に胡麻を摺っていた。


 いつものシニカルな笑みを抑えて下卑た表情であの手この手で貴族を持ち上げている。





 貴族が訪れる様ならば、ここは危険な場所ではないのだろう。

 護衛の騎士もちらほらいるが、兜を脱ぐなど気を抜いた様子でいる。

 捕って食われるような事態には陥るまいと三人は胸を撫で下ろした。



 しかし、その考えは雨季の水溜まりよりも浅かった。





 やがて三人は森の中に放された。

 勿論、脱走すれば両親共々殺すと脅されている。


 一体何事かと訳も判らず呆然と森を歩く三人は、いつの間にか一匹の魔物と遭遇した。




 それは、訓練を受け武装した大人ならば脅威にはならない貧弱な部類の魔物だったが、三人は幼い子供で戦いの技術や武器は無い。


 それがただの動物なのか魔物なのかを考える前に、威嚇に牙を剥いた相手にすぐさま背を向けて逃げるという賢明な判断を三人は下した。


 魔物に執拗に追われる三人は森の中を元来た方へと走りに走って命辛々逃げ出した。


 息も絶え絶えで森から抜けた三人を鋼鉄の装備で身を固めた騎士達が包囲陣を敷いて槍を向けていた。


 魔物がすぐそこまで迫っていると説明しようとした三人を突き飛ばし、木立から飛び出した間抜けな魔物を騎士達は槍で四肢を傷つけると道を開けた。


 無駄な金細工で装飾された剣で瀕死の魔物に止めを刺したのは貴族だった。

 獲物を剣に刺して掲げる脂ぎった貴族を三人の主人の商人は賞賛し、これでもかと誉めちぎる。


 三人が目撃したのはそこまでで、再び枷を填められて行きの馬車に載せられた。


 奴隷部屋に戻った三人は疲れきった体を藁越しにも冷たい床に横たえる。


 その日々を何度か繰り返して三人は自分達の役目悟った。


 自分達は生き餌なのだろう。

 商人が帝国貴族に提供する道楽の狩りの餌だ。


 その予想はまさしく正解だ。


 開戦の噂を耳にした商人は食料を買い占め、高値で売り付け短期間で凄まじい利益を上げた成り上がり者だった。


 弱者からすれば悪魔以外の何者でもないが、商売人としては極めて正しく、安く仕入れ、あり得ない値段でも売れる濡れ手で粟の状況を生かして彼は財を築いた。


 食料を欲した人にあのシニカルな笑顔で散々に足元を見て売り付けたのだ。


 それでも満たされない商人は更なる躍進の為に帝国の貴族に取り入ろうと画策した。


 まずは大した領地も無い小物貴族から足掛かりにと、金に飽かせて接待にこぎつけた。


 飲ませ食わせ抱かせ、というありきたりな接待に飽きた貴族に僅かなスリルと味わわせ、自己顕示欲を満たしてやるこの方法は効果覿面だった。 


 晴れてお気に入りとなった商人は何度も狩りの供に呼ばれるようになった。


 これが事の次第だ。



 度々囮にされる三人は魔物から逃げる事に徐々に慣れてはいくが、気を良くした貴族は日に日に危険度の高い地帯を選び始める。


 死ぬ思いで奴隷部屋に戻り粗末な食事を食べるだけの三人はやつれる一方だった。


 商人に買われてから二年、三人の中で最も体が弱かったイリスが体調を崩したがそれがどうしたと商人は笑い、治療もせずに酷使を続けた。


 やがて高熱で立ち上がる事も出来ないようになったイリスは奴隷部屋に転がされて放置され、クウリとクレアだけで生き餌となった。


 役目を果たしている二人の分だけしか出されなくなった食事の大部分を、病に冒されたイリスに食べさせ続けた。


 代わりに二人は衰弱し、毎回魔物から逃げ切れずに攻撃されて傷だらけで帰るようになった。



 半死半生の二人が血と膿が滲む擦り切れた手で自分に食べさせていた事をイリスはぼんやりと覚えていた。

 そんな二人の献身である程度まで回復したイリスは食事係が夜半に溢した呟きを聞いた。


 最近、街道に魔物が出没して商人の隊商に少なくない損害を与えたという。

 よく使うルートに現れたとなると、今後も襲われる可能性は高い。

 護衛を雇おうにも通常の剣士で被害を完全に防ぐのは難しく、魔物を一掃出来る魔法使いは高い金を要求してくる。

 商人はその出費を見積り苛ついているということだ。


 その話を聞いたイリスは身動ぎ一つせずに涙を流して静かに喜んだ。


 自分が魔法使いとなって主人の歓心を買えばこの待遇も改善されるかも知れない。

 今までただの足手纏いだった自分に、二人への恩を返す機会やって来たと。


 他の二人が気絶するように寝静まったのを見計らって食器を下げに来た食事係にイリスは平身低頭して頼み込んだ。


 自分に魔法使いの試練を受けさせて欲しいと何度も額を不潔な床に擦り頼んだ。


 幼い少女が小さくなって懇願する内容を食事係は戯れに侍従に伝え、侍従は気紛れで商人に伝えた。


 奴隷の戯言と切り捨てるだろうという周囲の予想を裏切り、商人はニタニタと笑いながらイリスを呼びつけた。


 商人は無駄を嫌う男だった。

 削減すべき箇所は確実に削ぎ商いをしている。


 魔法使いと雇用契約を結ぶなど、虫酸が走ってしょうがない。


 商人は己の利益になることなら何でも好んだ。

 当たり前のように安値の奴隷を集めては魔法使いに仕立て上げようとしたのだが、生きる気力に欠けた奴隷は一人残らず死亡した。


 心身の髄から悶え苦しむ試練を乗り越える気骨を持った奴隷はなかなかに見つからなかった。


 そこにクレアとクウリの為に地獄を味わおうとイリスが進み出た。


 無価値も同然のイリスが死ぬ損害と成功した場合の利益は、商人も天秤にかけるまでもなかった。 


 善は急げと二人が寝ている間に連れ出されたイリスは近場の試練の遺跡に送られた。


 古代人が造ったと言われている魔物の殲滅された遺跡に一人で放り込まれたイリスは、渡された地図に従って所々光る金属の回廊を歩いて下り、最深部に着いた。


 床と同じ素材の扉が壁に吸い込まれるようにしてひとりでに開き、あちこちが輝く部屋の中でしつこく言われた通りに砂時計の砂が落ちるまで暫く待機した。


 鬼が出るか蛇が出るかと身構えていたイリスは拍子抜けで戻ったが、試練は始まってすらいなかった。


 地上に出たイリスは商人の部下に即座に縛られ、硬い猿轡を噛まされた。


 拘束される必要がどこにあるのかイリスには分からなかったが、その日の夜、確か必要な処置だったと思い知った。



 真夜中に、馬車に転がされていたイリスは体を這い回る違和感に目を覚ました。


 そしてすぐに痛みが訪れた。


 余す所なく全身を裏側から鋸で削られているような激痛に絶叫を上げた。


 激痛は絶え間なく襲い掛かり、イリスは穴という穴から、血尿、血便、血痰、血涙を流して縛られた体を方々にぶつけて七転八倒し続けた。


 大の大人がショック死するような激烈な痛みを、生きて二人とまた会う事だけを考えて僅か十歳のイリスは耐えに耐えた。


 三日三晩の苦しみを越えてイリスは試練を生き延びた。


 商人は魔力の適合に耐えきったイリスを少しだけ休ませて即座に次の段階に移行した。


 魔法使いになるには魔力の適合ともうひとつ、魔法の継承が必要となる。

 その継承の方法とは、魔力に適合した者に魔法の直撃を食らわせる事だった。




 気が付けばイリスが居なかった二人は食事係に何度も行方を訊いたが答えは返っては来なかった。


 それから一週間以上が過ぎて、イリスは変わり果てた姿で戻った。

 部屋に投げ込まれたイリスは深い火傷を負った体に薄汚れた包帯を大雑把に巻かれていた。


 被せられた汚い毛布と包帯を剥いでイリスの容態を心配する二人に、食事係はこうなった一部始終を明かした。


 それから二人はイリスの覚悟に報いようと、悪臭にも怯まず火傷に口を付けて交代で膿を吸い出してはひたすらに祈った。



 体力が回復しても胴体から首筋に掛けてのケロイドは消えず、特に喉の火傷は酷く発声に障害も残ったがイリスは死の縁から生還した。


 商人はイリスに魔法の基本的な教育を施すと隊商に護衛として連れて行った。

 イリスの立てた条件は履行され、二人も生き餌の役目から解放されて小間使いとして隊商に同行するようになった。


 商人を頂点としたカーストの未だ最下位に位置する三人の扱いは変わらなかったが、以前のように死の危険は無いとイリスはひと安心し、役目を忠実にこなした。



 それから更に二年、状況は変わりつつあった。


 統一戦争で大陸の人口は一億人も激減したという。

 実に多くの非戦闘員も犠牲となったが、大陸東部の戦闘員は大半が命を落とした。

 最後まで抵抗していた極東のとある国家の戦闘員の死亡及び行方不明者は全体の九割を超えるという恐ろしい消耗率を叩き出した。


 それだけ戦いの技能を持つ者が減れば、魔物の間引きが足りずに増えるのが道理だ。


 兵士崩れの冒険者が増えてはいても、追い付かない。


 イリスの休む暇も与えられず、酷使される日々が続いていた。

 魔物へ火球を一発放つだけで膝を折る疲労困憊のイリスの様子にクウリとクレアは危機感を抱いた。


 このままでは遠からずにイリスは再起不能となる。

 あの主人の事だ、役立たずは道中でも簡単に切り捨てると危惧した。


 事実、商人はそれも選択肢に入れていた。


 三人はこの商人に始末される前に逃げるようと決めた。


 枷が外されるのは作業中のみ。

 三人は機を待った。

 一月後、商人の配下が率いる隊商の夜営の準備中に好機が訪れた。


 道具の積み降ろしに使われていたクレアとクウリは手と足の枷を外されて労働に従事して時だった。


 魔物の群れが道外れに張られた隊商の天幕を捕捉して襲った。

 護衛の援護にイリスも引っ張り出されたが魔法を撃つ事はなく、水際で魔物を防げなかった隊商は混乱に包まれた。


 天幕から火の手が上がり、商人の部下が食われていった。


 混乱の中で三人は合流して手当たり次第に誰かの財布を掴み、食料を拾ってバッグに詰めると脱兎の如く走り出し、誰にも見つからず夕闇へ逃げ出した。


 家にも帰れず、逃げる宛もない三人はたどり着いた町で仕事を探したが、小汚ない子供を雇ってやる大人はいなかった。


 いつ来るやも知れない追手から逃れる為にも食う為にも、三人は冒険者になるしかなかった。


 虎の子の金を使い、親から貰った名前すら捨てて新たな名前を創ってまで三人は冒険者ギルドに登録したが、待っていたのは更なるストレスと飢えだった。



 装備も持たない子供を仲間に入れてやれる余裕のある冒険者は居らず、火炎魔法使いのイリスも精度に多大な不安があり拒絶された。

 しかしそれも当たり前だった。

 ダンジョンに潜るだけでも予測不可能な危険は多い。

 無能な仲間のミスで殺されてはたまらない。

 現実主義の冒険者はリスクを拒んだ。


 仲間も集まらず、装備を買う金が無い三人は拾った木を棍棒として持ち、ダンジョンの魔物が現れないほど浅い地点で日銭稼ぎをしては命を繋いでいた。


 隊商では重装備の護衛という前衛がいて発揮されていたイリスの魔法は少人数の戦いの役には立たなかった。


 いつ魔物に襲われ殺されてもおかしくない薄氷を踏むような生活は、満足に食べられていない三人の心身を憔悴させた。


 明日の保証の無い生活は子供の身に重くのし掛かった。


 冒険者として大成するという類いの夢を見る事もなく、今日一日を生き延びられた、と安宿の硬いシングルベッドに身を寄せ合って眠る。


 朝が来ればギルドに重い体を運び、見つからない簡単な依頼を探して暗澹たる気分で冒険者に埋もれた。



 生活と呼べるのかも怪しい時を過ごしていた三人に、彼ーーマルコーーは手を差し伸べた。

 その日も埃を被った依頼を探すつもりで立ち寄った中規模の町のギルドでは、げっそりと痩せた子供達がテーブルに突っ伏していた。

 お人好しの虫が騒いで話し掛けたのが、飢え、渇き、絶望の沼に浮き沈みしていた三人とマルコの邂逅だった。


 身の上話を訊き、あまつさえパーティーのサポートをしようと言い出したあからさまに怪しいマルコに、普通ならば不信感、ないしは警戒心を抱くものだ。

 戦争の混乱に紛れ、親切を装って奴隷狩りに勤しむ輩の噂は治安の悪い町には付き物だった。


 しかし、三人はどうでもよかった。


 装備も体つきも、とてもじゃないが売り物にならない貧相で汚い、そこがギルド館内でなければスラムの孤児にしか見えない事を自覚していたのだった。

 三人は死ぬ事だけを恐れたが、裏を返せばそれ以外を諦めて痛みも差別も、何もかもを受け入れて生きて来た。

 痩せ細り労働も出来ない自分達には価値がない。


 自分達の命を奪うメリットなど、その者がよほどの性格破綻者でなけれは無いのだ。

 三人はあっさりとその提案に乗った。


 当時のマルコは既にギルドナイトの候補で多忙だったが、その合間を縫って三人を育てた。


 初めて同行した移動中、高くもない材料で作ったシチューに三人が涙して食べた時は、不憫な暮らしをさせてきたとマルコは謝罪した。


 本来なら子供を守るのが自分達大人の役目。

 しかし、現実はどうか。

 戦争で荒廃した大陸に、この三人のような子供が何人居るのかなど見当も付かない。


 それが、この大陸に生きるあらゆる大人の犯した罪だと、呆気に取られている三人に落涙して謝った。


 しかし、なぜマルコが泣くのかは三人の物差しでは測れなかった。

 その涙の意味を、マルコの無念を理解するには三人は幼過ぎた。



 マルコは三人の人生を変えた。


 読み書きや冒険者としての常識を始め、あらゆる事を教えたのは彼だ。


 ほぼ無一文の三人に初心者用の装備を買い与え、自分の指導の元に魔物との戦いの経験を積ませもした。

 三人が何かを学ぶ度にマルコは自分の事のように喜んだ。

 マルコに誉められるのが嬉しくて三人はよく学び、よく食べ、よく眠った。


 栄養が満たされた三人の体には肉が付き、特にクウリは背が伸び始めた。


 天幕で川の字になって眠る三人を横目に、マルコはある日サラへの手紙を書いた。


 険しい人生を歩んできた三人と旅先で出会い、面倒を見てやらなくてはいけないと思ったと、新婚というのに、自分の我が儘までしばらく会えず詫びる事を書き綴った手紙だ。

 ギルドを通じてサラから返ってきた返事には、だから私は昔からあなたに惚れていたのだ、とだけ短い文で書いてあった。


 マルコは幼馴染みの妻の深い愛に、声を殺して感謝し、胸の奥に仕舞った。


 そして三人を一人前にしてやろうと再度誓った。


 マルコと出会った幸運に三人は感謝し、優しくも厳しい教えを熱心に受けた。


 時には経験の浅さから危うい場面もあったが、マルコの介入で何度も切り抜けた。

 イリスも魔法の技術を身に付け、コンビネーションも形になっていった。

 マルコの手助けが必要無くなる事も増えていった。

 仲間と糧を得て、共に食べ暮らす幸せを三人は噛み締めて過ごした。


 生きる喜びを思い出し笑顔が蘇った三人を見て、マルコは決心を固めていった。




 出会ってから一年。

 三人は十分な経験を得て一定の水準に達したと判断したマルコは、別れを切り出した。


 パーティーの課題である即応性と継戦能力を補う人員として、ハザウェイに頼んでリマイトと伊織を紹介した。

 惜しまれながらもマルコは本拠地へと帰った。


 新たに出会った二人は少し変わっていたが優秀で、三人と絆を深めていった。


 クウリの力任せな戦い方の隙を伊織が器用に補い、イリスがまとめて焼き払い、クレアが指揮を取る傍らでリマイトが治療する。

 組み上がったコンビネーションで、五人はランクを上げていった。


 そして数年が過ぎて今に至る。

 年少組の回想でやっとイリスが口数が少ない理由が書けました。

 こう見ると踏んだり蹴ったりな人生のキャラクターしか本作のレギュラーには登場しないようです。


 よりによってマルコの登場した所で分割してしまいましたので次回は早めに書きます。



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