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『剣と魔法の異世界で、俺の宇宙船だけ文明レベルが違いすぎる ~最新鋭艦の船長と10体のアンドロイド兄弟の異世界航海記~』  作者: あちゅ和尚


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第16話 客のままではいられない

「船長。俺たちにも仕事をさせてくれませんか」


 《古き門》の調査を終えて本船へ戻り、除染と医療確認を済ませたあとだった。


 航平を呼び止めたのは、救助した12人のうちの一人。


 ディーン・ロウ。40歳。


 海賊に襲われた民間調査船で、機関設備の保守を担当していた技術者だ。


 その隣には、短く切った茶髪の女性がいる。


 カーラ・メイスン。36歳。


 惑星資源調査を専門とする技師。


 2人だけではない。


 少し離れたところに、さらに7人が集まっていた。


 スリードから通常区画で過ごしてよいと判断された9人全員だ。


 残る3人はまだ医療区画で経過観察を続けている。


「仕事?」


 航平はディーンを見る。


「救助代を請求した覚えはないぞ」


「そういう意味じゃありません」


 答えたのはカーラだった。


「食事も部屋も用意してもらって、治療まで受けた。その上で、動ける人間までずっと何もせず待っているのはきついんです」


「スリードの許可は?」


「だから、許可が出た9人だけで来ました」


「準備がいいな」


「勝手に働き始めたら怒られるくらいは分かっています」


 航平は9人を見渡した。


 全員が万全というわけではない。


 海賊に襲われ、救助された直後に未知の惑星へ転移した。


 故郷へ戻れる保証もない。


 それでも、医療区画へ籠もっていなければならない段階からは抜けつつあるらしい。


「何ができる?」


 航平が尋ねると、ディーンがすぐ答えた。


「民間船の機関保守資格があります。推進機関の中枢や、この船独自の設備を触らせろとは言いません。ただ、一般規格の補機、配管、空調、電力系統なら経験があります」


「フォルドのところへ放り込んでも生き残れそうか?」


「技術者相手に物騒な言い方をしますね」


「あいつは機械を雑に扱う奴には厳しい」


「20年この仕事で食ってます。工具の置き場所で喧嘩する側です」


 航平は少し笑った。


「それなら話は早い。たぶん気が合う」


「たぶん、ですか」


「人間関係の保証までは業務外だ」


 今度はカーラが一歩出た。


「私は地質、鉱物、資源探査です。居住可能惑星の事前調査にも参加したことがあります」


「未知惑星は慣れてる、と」


「異世界は初めてです」


「そこは全員新人だ。安心しろ」


「安心材料になります?」


「ならないな」


 後ろで誰かが笑った。


 カーラも口元を緩めたが、すぐ真顔へ戻る。


「今すぐ地上へ降ろしてほしいとは言いません。ただ、この惑星に長くいる可能性があるなら、私の知識は使えると思います」


「長くいる可能性、か」


「帰れる時期が分からない以上、考える必要がありますよね」


 航平は答える前に9人を見た。


 救助した時は、まず生き延びさせることしか考えていなかった。


 食わせる。


 治療する。


 安全な場所で休ませる。


 それでよかった。


 だが、彼らは荷物ではない。


 帰る場所も、やってきた仕事も、それぞれある。


「一つ確認しておく」


 航平は腕を組んだ。


「助けてもらったから働かなきゃならない、と思ってる奴がいるなら、その考えは捨ててくれ」


 9人の表情が少し変わる。


「この船にいる代金を労働で払えとは言わない。働かなくても船から追い出さない。医療中の3人は当然そのまま休ませる。地上へ降りるかどうかも本人が決める」


 ディーンが頷いた。


「分かっています」


「その上で?」


「働かせてほしい」


 迷いはなかった。


「理由は?」


 今度はカーラが答えた。


「帰りたいからです」


 船内の空調音が、妙にはっきり聞こえた。


「私にも家族がいます。ディーンにもいる。他のみんなにも、戻りたい場所がある」


 ディーンが続ける。


「船長たちだけに帰る方法を探させて、俺たちが部屋で知らせを待ってるのは違うと思うんです」


 航平はすぐには返さなかった。


 当然の話だった。


 この世界へ飛ばされた人間は13人いる。


 帰りたいのも、自分一人ではない。


「分かった」


 航平は頷いた。


「希望者は仕事に入ってもらう」


 何人かの肩から力が抜ける。


「ただし、俺が今ここで適当に配置するのはなしだ。資格、経験、得意分野をナインにまとめてもらう。そのあと各担当と相談して仕事を決める」


「了解です」


「ディーンはフォルドに回す。最初はこの船の設備を覚えるところからだな」


「望むところです」


「カーラは――」


「地上はまだ駄目、ですよね」


「分かってるじゃないか」


「さっき聞きましたから」


「防疫もあるし、未知の魔力まで混ざってる。現地へ行く前に、まず船から取れるデータを見てもらう」


「船から?」


「軌道観測、地上ドローン、着陸地点の土壌、岩石。まだ量は多くないが、何もないわけじゃない」


 カーラの表情が変わった。


「見せてもらえるんですか?」


「機密に触れない範囲ならな」


「十分です」


「何を見る?」


「まず、この惑星で普通に手に入る資源です」


 返事が早い。


「水、鉄、銅、炭素資源。工業的に使える岩石。希少元素がどこに偏っているか。船内の再利用だけで回せない物が何なのか分かれば、優先順位を作れます」


 航平は少し興味を引かれた。


「もう補給の話まで考えてたのか」


「調査屋ですから。知らない惑星に降りたら、最初に見るのは景色じゃなくて使える物です」


「観光業には向いてなさそうだな」


「自覚してます」


 カーラは気にした様子もない。


「この船はすぐ燃料切れになるような船じゃないんですよね?」


「ああ。当面、動力そのもので困る状態じゃない」


「でも永遠には運用できない」


「そういうことだ」


 航平はそこで説明を止めた。


「船内でかなりのものは再利用できる。普通の資源なら現地から調達できる可能性も高い。ただ、機械は使えば傷むし、特殊な材料まで無限に湧いてくるわけじゃない」


「なら、なおさら早めに調べたいです」


「任せる。ただし、最初から金鉱探しを始めるなよ」


「そっちの方が船長は喜ぶかと思いました」


「現地通貨を勝手に作る相談が増えそうだから遠慮する」


「確かに面倒ですね」


「だろ?」


 ディーンが会話へ戻ってくる。


「船長。ここで暮らす準備も、本格的に始めるってことですか?」


 航平は少し考えてから答えた。


「帰る方法は探す」


「はい」


「それとは別に、明日帰れる前提では動かない」


 ディーンが黙って続きを待つ。


「半年になるかもしれない。何年かかるかもしれない。そこは分からない。なら、この世界で飯を食って、必要な物を手に入れて、船を維持できる状態は作っておく」


「帰れないと決めるわけではなく?」


「決める材料がないだろ」


「そうですね」


「帰れると決めつけて何も準備しないのも、帰れないと決めつけて調査をやめるのも同じくらい雑だ」


 ディーンは小さく笑った。


「それを聞けて安心しました」


「俺も30歳で野垂れ死ぬ予定はない」


 航平がそう言うと、張っていた空気が少し緩んだ。


 その後、9人は順番に簡単な経歴をナインへ伝えていった。


 ディーンとカーラ以外にも使えそうな技能は多かった。


 航法補助。


 通信設備の保守。


 環境分析。


 調査用ドローンの運用経験。


 船外作業の資格を持つ者までいる。


 全員を即座に働かせるつもりはない。


 この船の設備は彼らが乗っていた民間調査船より新しい。


 規格が同じ部分もあれば、そうでない部分もある。


 そこを無視して「経験者だから使える」と判断するほど、航平も雑ではなかった。


 やがて一覧の作成が終わる。


「船長」


 ナインから通信が入った。


『9名分の技能、資格、直近の職歴を整理しました。各担当への共有許可をお願いします』


「共有してくれ。必要な奴を拾ってもらう」


『了解』


 ディーンが少し驚いた顔をする。


「俺たちが希望した仕事じゃなくても?」


「もちろん希望は聞く。ただ、本人が得意だと思ってる仕事と、こっちが欲しい仕事が同じとは限らない」


「なるほど」


「嫌なら断っていい。その代わり、フォルドと工具の所有権争いを始めても俺は仲裁しない」


「まだ会ってもいないのに、どんな人なのか不安になってきました」


「会えば分かる」


「それ、説明を諦めてません?」


「半分くらいな」


 ディーンは苦笑しながら仲間たちと一緒に居住区画へ戻っていった。


 カーラだけが残る。


「私は?」


「もう仕事を渡しただろ」


「資源データですね」


「ああ。今ある範囲でいい。何が採れて、何が足りなくなりそうかを見てくれ」


「了解です」


「あと、現地の魔石は普通の鉱物と同じ扱いをするな。まだ分かってないことが多すぎる」


「むしろ、そこが一番気になります」


「気になるだけにしておけ。勝手に削ったり溶かしたりするなよ」


「私を何だと思ってるんですか」


「未知の石を見たら調べたくなる資源調査屋」


 カーラは少し考えた。


「否定しづらいですね」


「だろ」


 彼女も笑って去っていった。


 航平は船橋へ戻る。


 席へ着いた時には、9人分の経歴一覧が各担当へ共有されていた。


 ほどなくして最初の返答が届く。


『船長。ディーン・ロウを機関区へ回してください』


 フォルドだった。


「早いな」


『民間船で20年の保守経験があります。基礎から教え直す手間が減ります』


「本人も行きたがってる。明日からでいいか?」


『本日からでも』


「病み上がりを見つけて目を輝かせるな。今日は設備説明だけだ」


 一拍置いて返事が来る。


『承知しました』


 次はナイン。


『通信設備経験者2名について、補助業務への適性確認を希望します』


「本人たちにも話してくれ」


『了解』


 さらにスリードからは、医療区画で経過観察中の3人について、作業復帰はまだ認めないとの通知。


「そこは予定通りだな」


『はい。船長が勝手に仕事を与えないよう、念のためです』


「信用がない」


『過去5年間の実績に基づく評価です』


「反論しにくいやつだな」


 通信が切れた。


 航平は一覧をもう一度開く。


 救助した時には、名前と負傷状態を確認するだけで精一杯だった人間たち。


 その名前の横に今は、保守、資源調査、通信、環境分析、航法と具体的な技能が並んでいる。


「ワンス」


「はい、船長」


「明日までに各担当の希望をまとめてくれ。本人の希望とも合わせて配置を決める」


「承知しました」


「無理に全員へ仕事を作る必要はない。使えるところだけでいい」


「そのようにします」


 航平は画面を閉じた。


 23人でこの世界へ来た。


 なら、動ける11人だけで走り続ける必要もない。


 まずは9人。


 それぞれができる仕事から始めればいい。




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YouTubeショート動画作ってみました。

https://youtube.com/shorts/9GLwTygoDf0?si=78DTsosNQTR8DuE9

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