神器・龍殺剣ヘムべロス
ゲキリンの御社の本堂には、神器が祀られている。
かつて、龍を討ち滅ぼしたと云われている大きな剣。
二又の龍殺剣・ヘムべロス。
刃渡180cm、刃幅50cm。
黒金の刀身。
二又と呼ばれるだけあり、中央で二つに分かれた両刃の剣だ。
その刀身だけで、トレスの体を包み隠せる程に大きい。
龍殺しと呼ばれる剣では、あるが。
この様に大きく――そして重い剣を。
誰が振れようか。
燃え盛る本堂の中の――。
しめ縄で祀られた神聖な領域。
その白い小石の撒かれた岩の上で、怪しく輝く黒い刀身。
炎の明かりに揺られ、トレスの姿をその身に映し出す。
「悪くねえ。人相の悪い、俺にピッタリだ。」
ギザギザの黒髪に隈の太い目。
ボロボロの服に、肩の変換機。
体中の張り詰めた筋肉からは、青白い輝きが感じられる。
そんなトレスの表情は、いつになく真剣だ。
トレスは、剣の柄を封じたしめ縄を、掴み取って外した。
炎の熱気で汗が滴る。
額の汗を拭い、薄くなった酸素を肺に取り入れる。
そして、両手で柄を握り締めると、引き抜くのではなく、剣を刃に沿って横に倒した。
「――ふんっ!」
すると、岩に亀裂が入り、パカッと、岩が二つに割れた。
龍殺剣の二つに分かれた綺麗な刀身が、露わとなる。
トレスが、片腕で剣を振り上げて、正面に突き出す。
大きく風を斬る音と共に、熱気を断ち斬った。
天井を燃やす炎が真っ二つに割れ、刃先に向かって突風が吹き荒れる。
突き出した剣を持つ腕が、ぷるぷると震える。
「くっ、重すぎだろ……。」
そう気の抜けた声を上げると、その黒い刀身を床に落とす。
ヘムべロスは、「ガタン。」と、言う音を立て、木の床に大きな傷を付けた。
トレスは、青白く輝く両腕で、巨大な大剣を持ち上げた。
大きな鍔を肩に掛け、剣を肩に担ぐ。
「チャージャーを使って、やっとって所か。それより急がねーと、街が滅びちまう。」
トレスは、天井を見上げた。




