変わり果てた街
トレスは、御社の渡り廊下を走っていた。
街中から上がる炎と煙が、空を覆い隠している。
その反面、龍穴から上がっているはずの煙が出ていない。
空からは、龍脈のエネルギーが噴き出た後の様な、キラキラとした青白い輝く鱗が、灰と共に空から舞い落ちる。
どこもかしこも火事を起こし、街の様子が様変わりしていた。
この御社も、大半が燃えている。
トレスのいる場所の反対側。
御社の本堂の向こう側では、轟々と燃える炎の壁が立ち昇っていた。
「何なんだよ!これは!ちっ。一体、何処に向かえば……。」
トレスは、周囲の空を確認した。
ダラックは、龍が生まれたと言っていた。
まずは、その姿を確認しなければ――。
青いレーザー光線が、空から一直線に駆け抜けた。
物凄い轟音と共に、家々が吹き飛んで行く。
「は……。こんなの、あり得ないだろ!」
その光景は、トレスの想像の範疇を、遥かに超えていた。
レーザーの余波で、強風がトレスに襲い掛かった。
「――っ!?」
大量の残骸が上昇気流に乗って、御社を駆け抜けた。
トレスは、屈み込み、太い木の柵を掴んで身を隠す。
今の強風で、更に火事の勢いが増した。
火の粉が舞い上がり、新たな場所が燃え始める。
破壊が破壊を連鎖して行く。
トレスは、起き上がり、レーザーが放たれた場所に顔を向けた。
輝く鱗と火の粉が、舞い揺れる最中。
立ち昇る煙の隙間に、その姿を見つけた。
「あれが……龍?」
龍と言えば、トカゲの様な風貌を想像していたが、全く違った。
まるで、人間と龍が入り混じった様な見た目をしている。
二足の脚に、二本の腕。
そこには勿論、鋭い爪がある。
筋肉の付き方が人間に近く、両肩の間の胸板も厚い。
しかし、その体は、黒い鱗に覆われていて、長い尻尾の先までびっしりと鱗が生え揃っている。
そして、獰猛な龍の頭。
黄色い眼光を釣り上げる頬肉。
眉先や頬には刺々しい角。
ゴツゴツとした鼻筋。
レーザーを放った大きな牙の生えた口元からは、煙が漏れ出ている。
ここからでは、どれだけその姿が大きいのか、遠すぎて把握が出来ない。
だが、人間の比でないことだけは確かだ。
背中には、大きな黒い翼を携えているが、何故その翼で滞空出来ているのか――。
完全に人智を超えていた。
トレスは、その姿を見て驚愕する。
「嘘だろ……なんだよ、あいつは……。」
龍の姿を捉えた事で、トレスの忘れていた感情が込み上げてくる。
「くっ…あいつの所為で……。」と、握った拳に力が入る。
そして、キッと、歯を閉じて、本堂の方に顔を向けた。
トレスは、再び走り出した。




