龍の降臨
ガンッ!っと、階段の上の扉が、勢い良く開く音がした。
すると、バタバタと、足音を鳴らして、階段を人が駆け下りて来る。
トレスは、魂の抜けた顔を向け、その姿を確認する。
ダラックだ。
緑髪の下の明るい瞳は、瞳孔を大きく開き、何やら慌てていた。
頬は、黒くススで汚れ、袴の彼方此方が破れてしまっている。
どれだけ走ろうとも、袴を綺麗に保つ事がポリシーの韋駄天らしくない行動だ。
ダラックは、薙刀を壁に立て掛け、牢の鍵を取り、急いでトレスの牢に駆けつける。
「不味い事になった!お前の機嫌を、どうこう確認している間もない。今直ぐ街を離れるぞ。」
ダラックは、覚束ない手つきで鍵を開けると、急ぎ足でトレスに近づいた。
トレスの腕を引っ張り上げ、引き摺る様にして足で立たせる。
「さっきの揺れは何だ?上で何があった?」
トレスは、ダラックにされるがままの状態で、呆けた口を開いた。
ダラックは、牢の扉を潜り抜け、トレスを引っ張り出しながら答える。
「シャイニングスケールだ。さっきのは、水工場の爆発だ。」と、トレスの背中を押して、牢の外に立たせた。
「輝く鱗?それで何で爆発するんだ?」
「ちげーよ!龍の降臨!龍穴から、龍が生まれたんだよ!誰だよ!こんなややこしい名前付けた奴は!」
焦りと苛立ちで、ダラックが爆発しそうだった。
すると、トレスがダラックに飛び付いた。
ダラックの襟を掴み、喚き散らす。
「何で龍が生まれるんだよ!?ミカは、ちゃんと飛び込んだじゃねーか!穢れは、祓われたんじゃないのか!?」
そうトレスは、必死に言うが、ダラックも、負けずに言い返す。
「俺に聞かれても分かんねーよ!実際に今、地上で龍が暴れてるんだ!もうこの街は、終わりなんだよ!」
ダラックは、諦めた様に腕を投げ出した。
そんなダラックの話を、トレスは、聞いちゃいない。
自身の肩を指し示して、ダラックに叫ぶ。
「俺の装備は、何処だ!」
「そこにあるぞ。でも、武器は家だろ?」
ダラックは、通路の隅の机を指差した。
そこには、穴の空いた鉄の箱が、丁寧に並べられていた。
「これさえあれば、問題ない。」
「それ着けたら、街の住民の避難を手伝えよ?その為に来たんだからな!今は、猫の手でも借りたいんだ。別に牢に放置していても、良かったんだぞ?聞いてるか?」
ダラックは、チャージャーを装着しているトレスに呼び掛けるも、トレスは、無我夢中という感じだった。
ダラックは、先行きが不安となり、頭を抱えた。




