幽閉、再び
トレスは、暗闇の中、床の冷たさを肌に感じ取った。
重い瞼を開いても、周囲は、まだ暗い。
松明の灯りのある牢の外に、柱と鎖が落ちている。
腕の鎖を外して、そのまま牢に放り込まれたのだろう。
ついでに肩のチャージャーも外されている。
雑に転がる様にして、床で寝ていた。
トレスの黒縁の目は、腫れていて、現状を思い出すだけでも、再び涙が込み上げて来る。
不幸な今の状況とは裏腹に、とても幸せな夢を見ていた気がする。
夢でも良い。
もう一度、あの笑顔に逢いたい……思い出せなくなる前に……。
トレスは、冷たい床に顔を押し付けて、咽び泣いた。
「うわああああああああああああああ……。」
強固な壁に、トレスの叫びが反響した。
叫び疲れたトレスは、しゃがれた喉で世界を呪い始める。
「俺が……俺が…儀式に…無関心だったからか?見て見ぬフリをしてきたツケが回って来たって?っクソ!あんまりじゃないか……。」
トレスは、握った拳を床に叩きつけた。
床に八つ当たりした所で、何の意味もない。
しかし、この爆発しそうな感情を、どうにか発散しなければ、まともな考えが浮かばない。
トレスは、歯を食い縛る。
「ミカも…ババアも…街のみんなも……ちゃんと考えて生きてきたんだ……。俺だけが、のん気に…何も考えず……。」
トレスの頭が段々と冷静になり始めた。
頭に溜まった血を下げる様、上体を起こす。
怒りで染め上げていた顔の血の気が引いて行く。
トレスは、真っ暗な天井を見上げる。
まるで、そこに希望の光でもある様に。
「いや、目を背けてただけか。自分や自分の大切な人が、選ばれる筈がない。そう高を括っていたんだ。俺が馬鹿だっただけだ……。」
見上げた瞳からは、枯れる事を知らない涙が溢れ続けた。
トレスの腕は、膝上に脱力し、体中の血が枯れてしまったかの様に、暗い牢の中で座り続ける。
すると、その時。
地下牢に、重低音が鳴り響いた。
部屋全体が小刻みに震え、ぱらぱらと、天井から土が降り注ぐ。
この地下にある石造りの牢獄にまで届く程の振動だ。
この揺れは、尋常ではない。




