第8話:魔女到来_3
何か聞かれると思っていなかったキャスは、少し面を食らった様子だったがすぐに答えた。
「新たにナンバーを振ったあの魔女は、初めて顔を合わせる魔女なんです。だから、様子を見ているんですよ、情報のために」
「そんなことしてたら、あっという間に殺されるかもしれないのに?」
「危なくなったら、すぐに転送させます」
「だったら、さっさと攻撃仕掛けて逃げれば良いじゃない」
「そういうわけにも。簡単には……」
「あぁもう、つまりは腑抜けばっかりってこと? だから魔女の一人二人も倒せないでいるのよ!」
「そんな言い方……魔女はどれだけ存在しているのかわかりません。だから、情報はとても大事なんです! ウィッチボットだって、機体数が……」
「あーあーあーあー!! アタシ、言い訳なんか別に聞きたくないんですけど」
「えっ、あっ、エイナさん⁉︎」
エイナは机の上にあった箱の中から掴み取れるだけ掴み、見本として置いてあったウィッチコアに吸収させた。
「アタシが行く。アタシが倒す」
「いけません! まだ訓練もしていないのに!」
「ほっといてよ! 何もしないくせに!」
そのままコアを手に取り、ギュッと握りしめた。
「ダメです! エイナさん!!」
ピピッ。
音と同時に、エイナが消え始めた。アレフの時と同じように。
「えっ、えっ? エイナ?」
「キャス先生!? これって止められないんですか!?」
「起動した後は、本人の意思で出てくるか、生体反応がなくなるまでは出られないんです……」
「なっ……エイナ! 入ってもすぐに出てこいよ! 無茶だって!」
「エイナちゃん! ダメだよ! 危ないよ!!」
「うるさい!!」
そう言い残してエイナの姿が消えた。同時にまたピピッと音が鳴り、コアの色がパールホワイトから黒へと変わった。
「こ、このコアは、一体どのウィッチボットのコアなんですか……?」
トウヤが聞く。
「これは……」
黒くなった球は浮かび上がると、そのまま機体のほうへと飛んでいった。
「……オーブ。私たちとともに、一番最初に魔女と戦ったウィッチボットです。そして、一番最初に見つかったウィッチボットでもあります」
――ヴゥン――
「……オーブが……起動しました……」
ハッと目を開いて、キャスは急いでパソコンを操作すると、二つ目のモニタが付いた。
「エイナさん? 聞こえますか? エイナさん?」
『……何よ、大きな声出さないで。聞こえてる』
「良かった……。危険ですから、すぐに戻ってください!」
『戻らないわよ。何のために乗り込んだんだか』
「いけません! すぐに同化を解除してください!」
『嫌なんだってば。はぁ、シードの中にこれがあってラッキーだった。サポートにお願いしても、絶対に転送してくれないもんね』
「これ……って……?」
『えーっと――星都AA-05へ、転移!』
「エイナさん!?」
彼女が沢山のシード入った箱の中に見つけていたのは、転移魔法の使えるシードだった。どんなに小さな欠片でも、魔女が持つかコアに埋めれば転移魔法が使える。転移魔法は今見つかっているシードの中でも珍しく、見つけた時にすべて回収されているが、今回この中に残っていたのはその回収漏れだった。彼女は瞬時にそれが転移魔法のシードだと理解し、他のシードと混ぜてコアへ流したのだ。
『――あっ、ははっ!! 着いた、着いちゃった!』
『なっ――はぁっ!?』
アレフの乗るダスティ目線のモニタにはエイナの乗るオーブが、エイナの乗るオーブ目線のモニタにはアレフの乗るダスティが、それぞれしっかりと映っている。
『何しに来たんだエイナ! ってか、何で勝手に乗ってる!!』
『魔女をアンタが全然倒さないからよ!!』
『今回の目的は倒すことじゃない、あくまでも観察、情報収集だ!』
『悠長にそんなことしてるから、いつまで経っても魔女がやってくるんじゃなくて? 片っ端から殺していけば、魔女の数だって目に見えて減るっていうのに』
『だから、殺すばかりが手段じゃないんだ』
『甘いんだって! だいたい、こんなの感覚で乗れるのに、わざわざ実習なんか』
『お前はまた勝手なことをするのか! どれだけ迷惑が掛かったと思ってる!』
『何よその言い方! アタシは向いてるの! 適性があるの! 立場だって候補生の中の誰よりも上なの!!』
『そんなことはどうでも良い! 勝手な行動をとるなと言っている! 誰もここへ来ることを許してもいなければ、認めてもいないんだろ!? 早く帰れ! 早く!!』
『何なのよその態度! もうムカつく! アタシはわざわざアンタのために』
――キュルキュルキュル。
『!?』
渦を巻きながらできあがったのは、今までで一番大きな光の玉だった。先の二つとも違う、薄い緑色の球。球……というよりは、竜巻のような風の塊が、球を作るように忙しなく動いていると言ったほうが正しいだろう。
『……』
その風の塊をグググ……と両手で圧縮させて直径十五センチほどにすると、魔女が空高く跳びあがり、その球をオーブに向かって投げつけた。
『避けろ! エイナ!』
『えっ、え、え?』
ここまで魔法を使いやってきたエイナだったが、咄嗟のことに全く動けないでいた。その間にも、勢いよく放たれた球はエイナめがけて真っ直ぐ向かってきている。
『いっ……いやぁぁぁぁぁぁ!!』




