第2話:星都の歴史_2
教師の申し出に、エイナは表情を明るくした。
「はい! えーっと、まだこの星に降り立った時は、まっさら……というか砂地と岩肌だらけでした。水や草木はなく、当然ながら住居や施設もありませんでした。星の中心に位置する遺跡の中に、キューブをはめ込む装置はあります。遺跡……といっても、歴史の教科書によく載っているような大きなものではなく、人が数人入れる程度のサイズです。窮屈で装飾はほとんどありません」
「その遺跡は、どの星でも同じですか?」
「いいえ、少しずつ違います。でも、見れば遺跡だとわかります。それで、遺跡の周りや大地を観察した後、私たちはキューブを装置にはめました」
「はめた後の様子はどうでしたか?」
「こう……キューブが光を放ってバアァァァ――っと、保存されている記憶が遺跡を介して辺り一面に広がっていくんです! ただの砂地や岩肌だった星が、星都として塗り替えられていきます。遺跡は星都になった後も見ることができますが、基本的に一般開放はされていません。悪戯されると良くないらしいです。星都庁にあり、厳重に管理されています。それで……星都の構築が終わると、キューブは光るのを止めます。そこで、星都の構築が終わったということがわかるんです」
「その瞬間は、きっと綺麗で面白いんでしょうね?」
「もちろん! 始めて見た時は、とっても興奮しました! 同時に、自分の立場に感謝しました。普通なら、こんな凄い場面に立ち会うことなんてできませんから」
ニコニコ話し続けるエイナに、冷たい視線が刺さる。普通なら立ち会うことのできない星都の誕生の瞬間に、言い方は悪いがエイナは親のコネで立ち会った。彼女の両親はエイナの願いは全て叶えてきており、このキューブをはめて生まれたばかりの星を星都へ換えるという作業を、他の参加予定だった職員を押しのけて彼女を参加させたのだ。そんなことばかりしていたら一家に対して周囲の不平不満は募る一方だが、両親はおろかエイナ自身も気が付いていない。なぜなら、彼らにとってはあまりにも当たり前のことだったからだ。
「んんっ。なるほど! ……とても良い経験ができたのですね」
「はい! それはそれは物凄く! 楽しくて珍しくて、貴重な体験ができたと思います!」
「折角なので、もう少しお話してから実技に移りましょう。……最近、とある脅威が発現しました。平和な星都にあってはならないもの、その見た目から、脅威とみなしにくいもの。……さて、アナウンスにもありました。皆さんわかりますね? では、ルリさん。その名称と特徴を教えてください」
「は、はいっ! えーっと……あの、な、名前は魔女……です。魔女は、その、この星都ができた時に、同時期に発現しました……あの、えっと、えっと……」
「ねぇ、もっと大きな声出せないの? ちっちゃくてよく聞こえない! あと、ハッキリ喋って?」
「ご、ごめんなさい!」
エイナが口を挟む。オドオドとするルリに、講師であるキャスが助け舟を出す。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。皆さんお静かに。ルリさんは落ち着いて、一度、頭の中で言ってみると良いですよ。文章にすることで、口にし易くなりますし」
「はい! あの、あ、ごめんなさい……」
「はぁ……」
「エイナさん、ルリさんも緊張しているのだと思います」
「……はぁい」
ムスッとした表情で、エイナは机に肘をついてルリを見た。その視線に気付いたルリは更に緊張したが、何とか落ち着こうと手をすり合わせている。
「えっと、えっと……魔女は、私たち人間と同じ姿をしています。ですが、魔女は私たちには使えない魔法を使うことができます。例えば、指先から炎を出して遠くに飛ばしたり、雷を発生させて落としたり。私たちに、攻撃してきます。喋ることができないのか、言葉を発することはありません。音は発します。生身の私たちは、魔女に勝つことはできません。悔しいですが、彼女たちに遭遇したら、アナウンスの通り逃げることしかできません。……一般の方は特に」
「そうですね、魔女は私たちと同じ姿をしていますが、似て非なる者です。攻撃的で、意思疎通ができません。怪我をさせられた人間が何人も、何百人もいます。その姿に騙されてはいけません。ですが、対抗策はあります。攻撃される一方ではないのです。さてルリさん。その対抗策とは、一体何でしょうか?」
「すぅ……はぁ……は、はい! 魔女がなぜ私たち人間を攻撃してくるのかはわかりませんが、魔女が初めて発現した時に、同じように発見されたものがあります。それがは【ウィッチボット】です。名付けたのは人類幸福支援機構の方だと聞いています」
「ウィッチボット。皆さんが、この後見に行く機体の総称です。ウィッチボットは、どんなものなのでしょう?」
「私たちより少し大きくて、見た目が幾つかあります。それぞれ名前がついていて、ウィッチボットはまるで魔女のように魔法を使ったり、空を飛んだりできるので、過去の人間が使用していた対魔女兵器と言われています。機械的な見た目ですが、わ、私は愛嬌があると思います……」
「ありがとうございます! ルリさんも、ちゃんと学んでいますね。私たちは今この星都に住んでいますが、以前の星に住んでいた時魔女はいませんでした。この星を星都とした時に突然現れたため、人類が接してきた期間は短いです。今わかっているのは、魔女が人類の敵であること。個、または複数で魔法を使った攻撃や偵察をしてくること。そして、意思疎通ができないことから私たちよりも劣性であることのみです。人類幸福支援機構のみなさんや、私たちピィスメイカーに所属する人間も、日々研究をしてます。やられてしまったら、たまったものじゃあないですからね」




