第18話:適性_3
アリスはキャスを含め全員座らせると、シード入りの錠剤を持ってみんなの前に立った。
「これがさっきみんなに飲んでもらった錠剤。中身はご存じの通りシードよ。シードは人間の体内に入ると、時間経過で吸収されることがわかっているの。細かければ細かいほど、吸収される速度は速い。これくらい小さければ、十分も経てばしっかり血中に流れていく。で、このシードを体内に取り込んだ時の効果なんだが……。疑似的に魔女と同じ状態になる」
「魔女と同じ!?」
驚いて声に出したトウヤにつられて、他の候補生たちもザワザワと騒ぎ始め出した。疑似的とはいえ、魔女と同じ状態になるなんて聞いていない。今候補生たちは全員シードを取り込んでいる。見た目に変化はないし、魔法が使えそうにもなかったが、敵である魔女と同じと言われてあまりいい気分ではなかった。
「落ち着きな。魔女は体内にシードの素を持っている。だから魔法が使えるんだ。魔法を使って魔力……シードが枯渇したって、休めば回復する。体力みたいなもんさ。私たちはシードの素も持っていないし、魔力を貯めておけるような器官もない。だから取り込んでも、時間とともに消えていくのさ。魔女と同じじゃない、あくまでも疑似的、一時的な効果だから安心しな」
「……」
ざわついていた候補生たちは、その話を聞いて落ち着いたのか静かになった。
「その過程で血液を見ると、身体に馴染むようなシードと、反対に拒絶するようなシードがあることがわかる。もう一つは、何にも反応しないシードだね。反応がないのは、全然適応してないってことなんだ。だから、どんなに頑張ってもその魔法は使えない。ウィッチボットに乗り込んだ時、エネルギーにはなるけどそれで終わりだ。馴染むほうは向いてるんだね。そのシードが指す魔法に対して素質がある。だから、威力の高い魔法を使ったり、連発したりエネルギーとしても長持ちする。拒絶するほうは向いてないんだ。魔法を使おうとすると威力が弱まったり最悪暴発する。エネルギーとしてもイマイチだ。向いてたらプラスに、向いてなかったらマイナスに数値が出る。ゼロは適応なし」
「アリス先生、質問いーい?」
「どうぞパスコ」
「その錠剤、何種類もシードが混じってるんだよね? じゃあ、何種類も拒絶したり、馴染んだりってのが出てくるの?」
「そうだよ。アレルギーと同じだね。何種類もアレルギーを持ってる人がいるだろ? 逆に、全くない人もいる」
「てことは、途中で素質が変わって苦手だったのが得意になったり、得意だったのが苦手になったりするわけ? 今までアレルギーじゃなかったのに、急にアレルギーになったりする人もいるよね?」
「……私はあるんじゃないかと思ってるよ。今のところ、そこまで研究がいってないんだ。使い過ぎて拒絶反応が出ても、反対に得意になってもおかしくはないと思ってる。まだその反応を見せたパイロットがいないんだ。……アナタたちの中で出ても不思議じゃないね」
「可能性はあるんだ」
「あるよ。まぁ、だからウィッチボットへ乗り込んだ後は、ちゃんと血液検査をするのさ。その他検査もね。数値に変動があったら、今まで使ってた魔法が使えなくなるかもしれないから。それに、マイナスのシードを使い続けると、身体によくないことが起こる……っていうのはわかってるから」
「よくないこと?」
「そうだ」
「例えば?」
うーん、と考える仕草を見せて、アリスは言葉を選んでパスコの問いに答えた。
「アレルギー反応って、どんなのが出るか知ってるかい?」
「知ってるよ。蕁麻疹が出たり、皮膚が腫れたり。気管支が腫れて塞がれたりするんだろ? メチャクチャ酷いと意識がなくなったり、呼吸できなくなるって聞いたけど。後は嘔吐繰り返したりとか。身体が凄い拒絶してる感じがするよ。話に聞いただけだけど、俺は怖いと思うね」
「パスコの言う通り、アレルギー反応は怖いものが多いです。酷ければそのまま死に至る可能性もある。……シードでも、同じことが起こる」
「え!?」
「アナタたちは、ウィッチボットに乗った時コアの一部になります。アナタたちを経由して、コアの中に取り込んだシードをウィッチボットへ供給して魔法を使いエネルギーにする。目には見えなくとも、身体の中をシードのエネルギーが循環するんです。もし、大量に拒絶反応を出すようなシードの魔法を使ったら?」
「最悪……死ぬ……?」
「その通り」
『死』という単語に候補生たちは固まった。このピィスメイカーへやってきて、死を連想させたのはこれが初めてだ。確かにここへ来る前の面談や資料で、魔女と戦うことの危険性は知っていた。だがそれはあくまでも『魔女との戦闘での攻防』を意識したもので、シードへの反応ではない。
「じゃあ、もし今飲んだ錠剤の中のシードに、全く身体に合わない、酷い拒絶反応を起こすようなシードが入っていたら……? 俺たち死ぬ……ってこと?」
「これは心配しなくていいよ。反応が見られる程度にしか入れてないからね。これで死ぬほどの拒絶反応が出たら、今ごろその人は悶えながら床に転がってるさ。……ビビらせるつもりはないが、それくらいの心づもりでいて欲しいんだ。下手にシードを使わないように。……大丈夫、拒絶反応が出ても薬があるし、そもそも検査でしか反応しないように上手いこと調整してあるから。安心してくれていいよ」
「良かった……」
「得手不得手を知りたいだけだから。でも、これでもしマイナスに出るシードがある場合は、使わないほうがいい。選択肢は狭まるが、命をそんなところに賭けるより遥かにマシだからね」




