第13話:実技研修_3
「よし、みんな触ったかな? 次はシードについてだ。シードは既に現物を見て知っていると思う。キラキラしたガラスの欠片のような、宝石の一部のようなアレだ。大小様々、色合いも様々。そして、形も」
ブランはキャスが用意したシードを手に取った。昨日も見た箱に入っている。
「色で属性がわかれている。さっきはトウヤと話をしたから……ルリ、君はどうかな?」
「はっ、はいっ!」
「緊張しなくていい。大まかな種類と、それから属性を教えてくれないか?」
「わかりました。……触ってもいいでしょうか?」
「構わんよ」
「ありがとうございます」
ルリはブランからシード入りの箱を受け取ると、ひっくり返して一気に机の上にぶちまけた。
「中々大胆な子だね」
「広がったら見やすいかなと思いまして……」
ザラザラとまだ重なっているシードを平らにならし、色別に選り分ける。赤青黄色、紫に緑。他にも色はあるが、どれも透き通っていてキラキラとしているのが特徴だ。それこそガラスの欠片のような尖って危ない形もあれば、綺麗にカットされた宝石のように整った形もある。丸っこい滑らかな形に、歪なハートのような形、どれを選んでも基本的に性質は同じだ。エネルギーの多さや、魔法の強さに関わってくるのは大きさ、もしくは重さと色の濃度だ。大きくて重ければそのぶんエネルギーが詰まっているし、同じ赤でも淡い色より濃い色のほうが強い魔法を使える。
彼女はそれをよく知っていて、並べたシードをじっくりと見回した後、明らかにこの色だとわかるものを感覚を開けて一粒ずつ置いた。
「この赤は火でこっちの青は水、緑は風で黄色は雷です。一番濃くてわかり易いものを選びました。属性はそのまま、そのシードが持つエネルギーの種類です。シードの色が、そのまま魔法の種類に繋がります。……例えば、赤いシードを使えばアレフさんがやって見せたように、赤い炎を剣にまとわせて戦うこともできます。黄色の雷属性にしていたら、剣に触れたら感電したり痺れたりしたでしょうね。黄色い光を放ちながら、バチバチ音が鳴ったかも……。あ、こっちの茶色は土属性ですね。大きな岩を作ったり、泥の池を作ったり……作った岩を壁にして攻撃を受け止めるという使い方もあります、投げつけるだけじゃなくて」
「あぁ、そうだ」
「良かった。ちょっと避けましたが、それはこのためです。しばらく待ってもらえませんか?」
「……だそうだ」
何をするのか見当のついた候補生たちは、ルリのお願いの通りジッと待った。
すると、彼女が最初に移動させたシード向かって、同じ色のシードが引き寄せられるように近づいていった。
「これが一番簡単にシードをわける方法だと思います、種類別に。色の濃淡は少し難しいんです、見分けるのが。だから、こうやって一番わかりやすいと思うシードを選んで、一つ別に置くのがいいんです。そうしたら、あとは勝手にシードがわかれてくれますから。一つだけあるシードに、同じ属性のシードが惹かれるように寄っていく。変わった性質ですよね。これの面白いところは、似たような色を見分けることが苦手な人にも有効な点だと思います。人によって、見分けられる色の種類は違います。それに、あおは見分けられるけれど、緑は見分けられない人もいる。取り敢えず一つ良ければ、自動で選別してくれるんですもん」
彼女の置いたシードに一通り同じ属性のシードが集まると、それでもまだ残ったものへ目がいった。見比べてみると、確かに分けられたシードのどれとも色の異なるものが残っている。
「……昨日、エイナちゃんが掴んだ中に入っていた転移魔法のシード、今日はここには入っていません。アレが最後の一つだったのかな? シードにも比較的よく見る属性と、あまり見ない属性、ほとんど見ない属性があるんです。それぞれの量を見てもらえればわかるんじゃないかな。火や水は量が多いでしょ? これは……シールドを貼って、魔法の威力を和らげてくれる魔法が使えます。こっちは拘束ですね、動けなくする。……もっと、詳しくお話ししたほうがいいでしょうか?」
「十分だよルリ。基本的なことは教科書にもちろん載っているが、こうやって実際に目で見たほうが忘れないと思うんでね。それに、自分自身がしっかり理解していないと、人に説明することは難しい。基礎的なことだし、今後は常に接することになるだろうから、意外と気にしなくなるんだ。大事なことだから忘れないように。君はよく覚えているから、きっと忘れないだろう」
「! ありがとうございます!」
「さ、みんな触ってみなさい。光に透かしたり、黒い布を用意したからその上において見てみるといい。一体どんな色なのか。質感、重さ、ニオイ、何でもいい。とにかくシード一つからわかることを全て吸収してくれ。ピンチの時に君たちを救ってくれるのは、ウィッチボットだけじゃない。仲間だけでもない。自分の知識と度胸、それから勇気なんだ。どれか欠けてもいけない。そのために経験は大きな糧になる。どんな些細なことでもいいから、私に、キャス先生に、仲間に話してみてくれ」
各々気になるシードを手に取り、光に透かしてみたり、黒い布の上に置いたり、自由に観察し始めた。
今箱に入っている一番大きなシードは、おおよそ直径五センチの球体に近いものだった。色は赤、火の魔法が使える。触っても熱くないが、アレフが火の魔法を使った場面を見ている候補生たちは、赤いシードに火そのもののイメージを持っていた。シードを握り、自分の手の中に魔法があると実感して、みんな興味津々だ。




