鎖の中の対話
──王宮特別警備隊本部・独房棟。
鉄の扉が軋む音とともに、リルヴェット・クローディアは独房へと足を踏み入れた。
薄暗い空間の中、鎖に繋がれた男が壁にもたれて座っていた。
リーンは、リルヴェットの姿を見て口元を歪めた。
「これはこれは、立派な隊長さんがやってきたとは。これでようやく俺も処刑されるのか?」
リルヴェットは、眉をひそめる。
「……死にたいの?」
リーンは、肩をすくめてため息を吐いた。
「んー、どうかな。正直言うと、どっちでもかまわない」
そう言って、彼はその場に腰を下ろした。
鎖が小さく鳴る。
「どうして?貴方は魔王を倒した英雄じゃない」
リルヴェットの声は、静かに揺れていた。
リーンは、仮面のような笑みを浮かべる。
「君がそれを聞くのか?……その英雄が、パレードの中心にならず、牢獄にいる理由を?」
彼は、鎖に繋がれた両手をゆっくりと持ち上げて見せた。
リルヴェットは、言葉を失い、静かに頭を下げる。
「……それは……悪かったと思ってるわ。ごめんなさい」
リーンは、しばらく黙っていた。
そして、目を伏せたまま言った。
「もういい。君は気狂いの男から部下を救った。それは当然だ」
リルヴェットは、拳を握りしめながら言った。
「そのことも、謝罪しに来たの。貴方の言う通りだった。被害者の奥さんは、嘘をついていた。そして、加害者だった」
リーンは、目を細めて遠くを見つめた。
「そうか……。やったのか。あの、サンって子は」
リルヴェットは、静かに頷いた。
「隊長としては恥ずかしくもあり……頼もしくもあるわ。あの子の方が柔軟に物事を見ていて、貴方の手記を読み、サイプスと向き合って、真実を見つけた」
リーンは、少しだけ笑った。
「……なら、手記はやる。好きに使えと言っておいてくれ」
話は終わりと、リーンが手を振り、床に寝そべったので、リルヴェットは踵を返して扉へ向う。
「……借りは、返すわ」
独房の扉の前で立ち止まったリルヴェットはそれだけ言うと、その場を去る
「…………」
リーンは、目を閉じたまま答えず。代わりに鎖の音だけが、静かに響いていた。




