花の意味ー5
──森の奥。
草木は踏み荒らされ、倒れた木々が無秩序に横たわっていた。
枝は折れ、地面は抉れ、風が通るたびに土の匂いと血の残り香が混ざって漂う。
現場には、村の警備隊の制服を着た兵士の死体が四、五体。
その周囲には、犬型の魔物や、ゴブリンのような小型魔物の死骸が散乱していた。
武器、破れた布袋、金属片、そして荷物を運ぶための縄や布――
争いの痕跡が、あちこちに残されていた。
捜査隊の作業員たちが、現場のあちこちで記録や回収作業を進めている。
その中心に、リルヴェット、リーン、ケルヴィ、サンの四人が集まっていた。
ケルヴィが端末を操作しながら、地面に膝をついて魔力痕を確認していた。
「……魔力反応は、ほとんど残っていない。争いが起きたのは、少なくとも十時間以上前だろう」
サンは隈の浮いた顔で、資料の束を抱えていた。
その手元から一枚を抜き、リルに手渡す。
「昨日の夜、同様の事件がないか調べてたんです。そしたら……この記録が出てきました」
リルが受け取った書類には、過去の襲撃事件の概要が記されていた。
サンは、兵士の死体の一つに近づき、首筋を指差す。
「この入れ墨……髑髏の印。ボーン・クロウっていう賊のものと一致してます」
サンは手元の資料に目を通すリルへ更に説明する。
「彼らの手口は、まず、魔物を使って村を襲わせます。そして、兵士に扮した数人が住民に避難を促す役と魔物に立ち向かう役に分かれて、村が危険だと思わせて住人を混乱させます。そしてその混乱に乗じて家屋から金品を盗む実行犯が逃走まで煽り続けます」
リルは死体の周囲に散らばった布袋を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「それで……金品を持ち出せたはずの彼らが、どうして……」
リーンは、倒れた木々を見渡しながら言葉を継いだ。
「仲間割れにしては、荒れ方が激しすぎる。……これは、大型の魔物と争った痕跡だ」
彼は一歩踏み出し、ある一点を指差す。
「それに、あの大きな布袋を中心に、死体が円形に散らばってる。まるで……何かを守りながら戦ったようだ」
リルはその光景を見つめながら、言葉を失っていた。
全容が、少しずつ見えかけていた。
──その時だった。
「隊長ーっ!」
森の方から、ミュリルが駆けてきた。
息を切らしながら、リルの前で足を止める。
「少女が……目を覚ましました!」
リルは驚いたようにミュリルを見つめ、すぐに表情を引き締める。
「……ありがとう」
すれ違うように、リルはミュリルへ礼を言うと、すぐに村の方へと走り出す。
その背中を、リーンとサンとケルヴィとミュリルは静かに見送るのだった。




