56話 白い閃光、冷酷な女王
前回の続きです!どうぞ!!!
「ねぇ……これって……。」
マリンがそうつぶやく。
「……………………………………。」
だが、返事はない。
「ねぇ、オボロ!!」
「……ッッ!!」
「大丈夫……?」
「あ……ああ……。」
オボロは何とか気を保つ。
大きな深呼吸を1つ、心を落ち着ける。
落ち着け……、まずは現状整理だ。
確かに俺はリサードにユースティティアを突きつけた。 しかし、刺すことはおろか、当ててすらいないはず……
考えられる線は……
オボロは何度も頭を抱える。
答えはもう出ていた。
ただ、その答えを認められなかったのだ……。
「マリン……。」
「どうしたの……?? オボロ……?」
オボロを心配していたマリンがオボロに近づく。
「……奴は何者だ……。」
「え……? ちょっと待ってよ……。」
マリンは何か異変を察知し、オボロをなだめようとする。
しかし、もう止められなかった。
「気づいてるだろ……! 俺のユースティティア……この正義の剣がリサードを敵視している。 奴の罪の数に疼いてるんだ……。 並大抵の罪の量じゃない……。 こんなユースティティアを俺は見たことがない。 俺達は奴に騙され、もしかしたらとんでもない悪事に……」
「ッッッ待ってよオボロ! 少し落ち着こうよ! リサードは仲間でしょ?! あの言葉を嘘で言えるほど彼は器用じゃないよ!」
「……だったらッッッ……」
マリンがそう言うと、オボロが大声をあげた。
「だったら、この罪の数は何だ??!! しかも、触れずともユースティティアを揺るがし、傷をつけるほどの罪はッッッ!!! 俺達は会って間もない! 昔のリサードのことを俺達は何も知らないッッ!! だが、こんな事実を知らされて揺らぐなと言われる方が難しいだろ!!!」
「ッッッ………!!!」
「……ハァ。 ……ハァ。」
「………………………………。」
オボロは息を切らしながらも続けた。
「俺は様々な悪人を見てきた。 盗人や強姦魔、金に溺れた貴族。 数え切れぬほど人を殺した極悪人もだ……。 だけどな……そいつらですら触れずに……しかも、切る意思を持たないまま、ユースティティアが切りつけたことは無いんだよ……ッッッ!!! 本当に……俺は……。」
「……ぁ。」
頭を抑え取り乱すオボロに、何も言えず立ち尽くすことしか出来なかった。
なぜなら、それはマリンも言えることであり昔の彼を知っているわけでもない。
それに、タブーリストのオボロがここまで言うということは相当な事なのだろう……。 短い間だったが、オボロがここまで取り乱しているのを見るのは初めてだった。
リサードはやさしそうにマリンには見えた。 けれど、それは嘘だったのだろうか……?
彼は本当に何者なのだろうかという気持ちは彼女にも強く感じられていた。
「……オボロ……。」
マリンは頭を抑えるオボロの肩に手を置き、覗き込む。
かなり疲弊しているように見え、大きな背中が恐怖や絶望で震えているように見えた。
もう3人で冒険することはないのかな……
マリンは俯く……。
しかし────────
「……だが、何故だ……ッッッ!!!」
「……………………………?」
マリンはそれが誤ちだったと気づいた────────
オボロが顔をあげる。
そこでマリンは驚くものを見ることとなる。
────────?!
笑ってる……?!
オボロは顔を抑えていた。 その奥の表情がマリンの目に映る。その表情はまるで、ワクワクしているような顔つきだった。
「奴を更生させる……。」
「……更……生……?」
「ああ……そうだ!」
オボロはフンスと鼻息を鳴らし、堂々とした態度でそう答えた。
「アイツの過去など知らない……。 過去に戻ることは出来ない。 だが、罪を償い生きることならできる。」
「罪を……償わせる……?」
「ああ! そうだ!!!」
オボロは肩をグリグリと動かし、可動域を確かめると背中を向けて歩き出した。
「俺は正義の為に生きてきた男だ。 それはこれからも変わらない……。 しかし、だからこそこれ程の罪人をほおっておく訳には行かないだろう……? これは俺に与えられた試練だ……。 」
そう言って、マリンを置いてスタスタと歩いていく。
しかし、少し歩き出したかと思うと、足を止めポリポリと頭を掻き始めた。
「まあ……なんだ。 それに……、どこかのバカは仲間とやらを信じたいらしいしな……。 丁度いいってもんだ……。」
「……それって……。」
マリンは思わずほころびそうになる。
オボロは後ろを見ずにまた歩き出す。
表情はわからない。 しかし、マリンはその背中を見つめた。
「さっきは取り乱して悪かった……。 まずは、あの人型とモンスターが争ってる部屋を確かめる。 その後、リサードにはきつい説教だな……。」
「オボロ……ッ!!」
オボロは腕をクイッとたくし上げ、剣を抜く。
マリンは嬉しそうにオボロの後ろ姿を見つめる。
「おいあと、勘違いするなよ……」
オボロは頭を搔く。
「……これはリサードの為ではない。 リサードを仲間と……彼を信じようとするバカに賭けて見たくなっただけだ……。だから、これは俺のちょっとした遊び心だ……。」
「……フフッッッ。」
マリンはせかせかと歩くオボロの後を走って縮め、背中を思い切り叩く。
「痛いッッッ!!!」
「誰が馬鹿ですって……???」
「……ッッッいい! わ、わかった、! わかったから待ってくれ!」
そうなだめるオボロをマリンは喜びのままに叩いた。 マリンの顔は真っ赤になっており、オボロにはまだ怒り以外の感情を読み取ることは出来なかった。
ユースティティアは嘘をつかない……。
だが、何か理由があるはずだ……。
いつの間にかオボロもそう思えてきていた。
左の通路の前に立つ。 そして、オボロとマリンは音のする方へ歩き出した。
……………………………………………………………………………………………………………
3つの通路のうち右側。
遠くから大きな地響きがなっているのがわかった。
離れていると言っても通路を1つ間に挟んでいるだけで、2つ横の通路ではモンスターと人型の気配が争いを行っている。
「………………………つぅ。」
リサードは首を抑えながら歩いていた。
オボロと仲違いした後、右側の通路に入って少したった時に首から血が出ているのに気がついた。
剣は触れていないように感じたし、オボロから闘志も感じなかった。 それなのに、切れていることにリサードは驚きを隠せていなかった。
オボロの白剣がどういうものなのかわかっていないリサードはこう結論づけていた。
「……圧倒的な力量差か……。」
リサードは当たっていないと判断していたが、いつの間にか切られていたという状況。 判断を誤り、尚且つ切られたことに気づくことが遅れるというのは剣士の恥だった。
タブーリスト……。
確か、オボロはこう呼ばれていた。
固有魔法を持つ者の1つの名称。
こんなにも強いものなのか……。
自分も強くなっていると思っていたばかりにこの傷は酷く身にしみた。
それに……
「仲間だと思っていたのは……俺だけだったのか……?」
リサードはそう呟く。
本当はこんなこと考えたくないのに……
固有魔法を持つ者の恐ろしさと、疑心暗鬼がリサードを襲っていた。
あの攻撃は固有魔法の物によるものでも、オボロの意図して起こったものでもないのだが、神に嫌われし者、伝説保持者の恐ろしさが身に染みてわかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
───────やけに静か。
後で気づいたことが1つある。
真ん中の道にも人型の気配があったということ。
しかし、右側だけ何も気配が無い……。
これは……
若しかすると……
リサードは「チッ……。」と舌打ちをする。
左側は罠だとオボロに言ったが、もしそれ自体が囮で、本当の狙いは……
「……あれは俺達がそこを通らないようにする囮……。 そして、安全な右側を通るように仕向けそこで狙い撃ちをする……」
そう呟いた時だった。
「……ふ、ふ、ふ。」
洞窟の温度がガクンと下がるような感覚。
冷気を纏った声。
────────────リサードは最悪の予感が的中したとわかった。
「……ご名答だ。 しかし、お前しか釣れなかったようだ。」
コツコツと足音が前から響く。
逃げ道を考え、リサードは咄嗟に後ろを振り返る。
だが、「やはりな……。」と声が漏れる。
大きな氷壁。
まだ、洞窟自体を壊して横の通路に逃げた方が現実的と思わせるような、魔力の漲った氷壁。
完全に逃げ道を失った……
「……こんな簡単なことに気づけないほど頭が回っていなかったのか……?」
「いいや……? お前の判断は正しいさ? ただ、正しい判断は読まれやすいよの……。」
リサードの視界にもう見えるほど、彼女は近くに来ていた。
完全に気配が現れ、ニタリと笑う。
俺の大六感にも反応しないほど、気配を消せるなんて……
リサードは腹をくくり剣を抜く。
「敵に褒められるなんて皮肉なもんだな……。 名の知れる名将に褒められるなんて光栄だ。」
「……フン。 口だけは一丁前だ。 ……そちらでも私を楽しませてくれるのだろうな?」
氷の女王ミラの周りの大気が凍っていく。
そして、右手に引き寄せられるよう凝縮し、氷の長槍が出来上がる。
悪魔に睨まれるような光景。
だが、リサードはむしろ……。
……こっちの方が性に合っていると感じていた。
いつかは戦ってみたかったんだよ……。
むしろ話が早ぇ……ッッッ!!!
「……アンタに出し惜しみする気は無い。 最初から全力で行かせてもらうぜ……!!!」
クイッと顎を引くミラ。
リサードは一気に助走をつけ走り出す。
白い閃光と冷酷な女王がぶつかりあい、遂に幕は切って落とされた 。
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CQCQのスラップかっこいいのでコピーしたけど、引く機会がありませんでした(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)




