57話 正義の宣言
前回の続きですどうぞ!!!
「フンッッッ!!!」
「グギャギャッッッ!!!」
ジメジメとした洞窟のような通路。 天井からは水が滴り、常に地面は湿り気を持っている。
ここは、Sクラスギルドの1つ〈獅子王の心臓〉の常駐する王国、クルセイド王国の中に現れたダンジョンの更に中だ。
リサード、オボロ、マリンはそのダンジョンから抜け出すために出口を目指していた。
途中、ダンジョンの中でオボロとマリンはリサードと別れ、左の通路を抜けていっていた。
「もう少しだ……!」
「うん!」
セーフティエリアを抜けると一気に敵となる魔獣。 その中を2人は駆け抜けていく。
オボロとマリンは通路を駆け抜け、脇から突進してくる猪のような魔獣を、切り伏せ光を目指し走り出す。
「フンッッッ……。」
「えい!!!」
高い攻撃力を誇るオボロが敵を切りつけ、離脱……と魔獣の体力を8割型消耗させて前へと移動していた。 残り2割をマリンが攻撃し、魔獣を倒しながら進むという連携を見せ、高いコンビネーションを見せる。
その時だった────────
「グゴゴォガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
────────ビリビリッ
大気が震え、体に大きな衝撃が走る。
大きな魔獣の咆哮。
もう近い……。
「マリン。 ここからが本番だ……気合入れるぞ……。」
「わかった!!! 行くよ、オボロ!!!」
「ああ……!!」
「うりゃーーっ!」
一気にスピードを上げて、魔獣を無視し走り抜ける。
2人は一気に距離を詰め、大きな咆哮の起きたまさに震源地とも言える部屋に走り込んだ。
リサードの大六感によると、大きな魔獣と人型の気配がぶつかっていると言っていた。
人型……と言う言葉が引っかかるが2人は救助、手助けの為にこの道を選んでいた。
「大丈夫ですかーー??!!」
マリンは魔獣に襲われているであろうその人に声をかけようと声を上げた。
しかし、2人の目に移ったのは予想だにしない光景だった。
「え……ッッッ!!!」
「なッッッ……。」
部屋には血の雨でも降ったかと思わせるほどの血溜まりがそこら中に出来ていた。
そして、その血はすべて……
「……グルゴゴォォォ。 」
「……うわ……。」
先程、大きな咆哮をあげた魔獣のもの……
そして、まるでミンチのようになっている魔獣の死体の山。 辛うじて姿や形はわかるが相当、グロい絵面になっていた。 中には魔獣の赤ん坊だろうか。 小さな個体も見受けられる。
先ほどの咆哮は襲っていたのではなく、襲われていた魔獣の激闘の末の咆哮だったとそこで気づく。
そして、────────
ギチギチ。
「ゴォアアアアアアアアアアアアッッッ……」
魔獣は絞りきるように声をあげ倒れる。 だが、その声はまるで嘆くかのように2人には聞こえた。
「……………………………………。」
「……………………ッッッ。」
2人は目をやる。
魔獣の死体ではなく、その人らしき''もの''
────────キシキシ
見た目はただの女の子。 だが、明らかに人間からはするはずの無いキシキシとした音。 そして、不自然な動き。
目は瞬きを行わず、常に見開かれ2人を無機質な目で捉える。
そして、不気味に笑みを浮かべ首だけを傾げこちらを見つめていた。
「アガガガッ……ギギ……」
女の子は首を不自然に動かしながら、体の向きを2人に向ける。
オボロ、マリンはそれぞれ武器に手を伸ばす。
2人は言葉を交わさず……しかし、2人は合わせずとも感じ取っていた。
この少女の異常さに。
「ダメだだだよ……?」
彼女の第一声は壊れた玩具を彷彿させた。
「「………………………………。」」
2人は緊張状態を保ちながらも目は離さない。 そして、返事も返さない。
すると────────
ガックンガックンと頭を振り始める少女。
「……ここから逃げちゃだめだだァよォォ?」
「……来るぞ!!!」
少女はロケットのようなスピードで2人に突進を行う。
それを左右に回避する2人。
「……ッッッ!!」
「……ハァハァ!!」
パラパラとダンジョン内を揺らす程の突撃。 壁から砂煙が舞い、その中心が視界から消える。
2人は次、いつ来てもいいように武器を抜き中心を見据える。
だが、第2波は来ず砂煙が晴れていく。
「……うえぇ。」
最初にマリンが捉え、そして気持ちを悪くする。
顔が壁にめり込んでおり、手はダランと垂れ下がっている。 しかし、猫背状態で顔だけが壁にめり込み、顔だけを埋めているような体勢になっている。
また、横顔からまだ笑みを浮かべていることが伺え、マリンは思考が追いついていなかった。
すると、────────
「……アリさん、アリアリアリアアアアアアアア……」
静止していたかと思うと急激に、頭を取り出し、走り出す。
次は突撃では無く、狙いを定めて走り出す。
狙いはオボロ。
「オボロッッッ!!!」
「…………………………。」
返事はない。 だが、オボロは走ってくる少女に微塵も油断などしていなかった。
「……クロクロアリアリりリリりりり!!」
少女の振りかぶる手を剣で切りつける。
だが、────────
キンッッッ────────
「むッッッ!!!」
「いがァ……!!!」
少女の手から金属音のような音が響き、弾かれるオボロ。
「……ロボット?!」
マリンはそう叫ぶ。
だが、オボロは感ずいていた。
この感じ、この感触……
「……これは、」
違いない……この感触は金属などではない……。
そもそも、この剣は金属に遅れをとるようなものでは無い。
オボロは内心焦っていた。
そして、────────
「……ぐああああっ!!!」
オボロは手を抑え、苦痛を顕にする。 遂に剣を手放してしまうほどの激痛。
「……なるほど……。」
「えへ、えへへへ。 おげへえ?」
少女は何事も無かったかのように、オボロに向かってくる。
それを、間一髪で避ける。
「……オボロ!!! 今助けに……」
「……来るな!!! 」
オボロは腕を抑えながらも、後ろに引きながら攻撃を避けていく。
この腕の痛み。 確信した……。
オボロは右手を抑えるのをやめ、少女に向ける。
────────闇系暗法
「ロスト・ホワイトォォ!!」
闇系魔法を唱える。
────────────────。
光が消える。
「見げない見げないまくらまくらァァァ」
「キャアアっ!!」
オボロは少女の攻撃をすり抜けたのだろうか。 だが、マリンに確認する術はない。 光がすべて消え、何も見えないのだから。
フロアの中には少女のブンブンと腕を振り回す音とマリンの悲鳴。
オボロはどこへ……?
すると、身体が宙に浮く感覚を覚えるマリン。
「キャッ!!!」
「……俺だマリン。」
「……?! オボロ?!」
「ああ。 少し作戦を立てなければなるまい……。 暴れるなよ!!」
マリンは急にオボロの片手に抱えられると、オボロにそのままフロアの外へと連れ出される。
「……逃げちゃダメっていっだどにぃぃぃ!!!」
少女の泣き声が聞こえる。 追っては来ていないようだ……。
オボロは闇の中を手に取るように把握し、ダンジョンの通路の中までも真っ暗。 急に光を奪われ訳の分からなくなっている魔獣達の横、上をすり抜けていく。
そして、安全な物陰を見つけると走りを止める。
「……オボロ。 ……ねぇ。」
「待ってろ……。」
すると、ゆっくりと視界明るくなりオボロの顔がじんわりと見えてくる。
「……よかったぁッッッ。 オボロだぁぁ……」
「……安心するのはまだ早いぞ。」
事態が急変したためか、マリンも堪えていたようでオボロにもたれかかった。
オボロは少し肩で息をしながらもそれを受け入れる。だがもちろんのこと、周りの注意にも気を向けていた。
「ねぇ……、オボロ。 何が起こってるのか説明して? あのロボット女の子は何……?」
「……そうか。 まずは、そこを説明しなければな……。」
オボロはとりあえず今のところは安全だろうと図ると答えた。
「……あの少女はロボットではない。 列記とした人間だ……。 しかも、ちゃんとした良い子だ。」
「……え……?」
オボロは続ける。
「……お前が金属音だと思っているあの弾かれた音は、俺の剣が起こしたものだ。 俺の剣は罪の無い者を切ることは出来ない……。 だから、罪の無いものから弾かれ俺の手に拒否反応が出た。 」
「……待って! 罪の無い? どういうこと?! だってあの子明らかに……」
「ああ……。 お前も気づいているだろうな。 あの大きな魔獣との戦闘は、赤子を守ろうとして起きたことだ。 あれはただの虐殺。 身を危険に置かれたわけでもなく、やむ無い理由があったわけでもない。 無益な命の殺生は立派な罪だ。」
「だったら、何で拒否反応が起こるの……?! 訳が分からないよ……。」
〈インベントリ〉から包帯を取り出し、拒否反応が起きた右手に巻いていく。
「……考えられるものとして2つある。 1つは罪という概念を打ち消す何かを持っている可能性。 だが、これは余りにも無理な理屈だ。 概念を打ち破る魔法など聞いたこともない上、仮にあったとしても俺以外には何の意味も持たない……。 俺だけを狙ってならば別だが、それは考えにくい……。」
「……もう1つ……は?」
オボロは苦い顔をしながら、答えた。
「……あの少女は操られているという可能性だ。 無垢な少女の体を兵器のように改造し、少女の自我を壊して遠距離から操っているというものだ。 これなら、少女に罪がのらない可能性がある……。それに、先程の暗闇の中、気配である程度俺の居場所は掴めるはずなのに、棒立ちでどこもわからなくなっていた……。 」
「でも、どこから操るっていうの?! だって、このダンジョンには私たちしか……。」
「いや、このダンジョンの中に居るという可能性は無いだろうな……。」
オボロは立ち上がるとグイっとマリンは引き上げる。
「ちょっと…… どこ行くの?!!」
すると、────────
「煮詰めた煮詰めたァァァ見つめたァァァァァァ!!!」
「────────?!」
少女の声が奥から響く。 そして、恐ろしい勢いでこちらに近づいてくるのがわかった。
「操縦者がこのダンジョンの中にいたとしたら、俺を見失ったあと、こんなに早く見つけられる訳がない。
ダンジョン自体に干渉して、このダンジョンをすべて見ているとすれば暗闇に飲まれた部屋の何処かに居ると察しがつく。 それに、気配や感覚の及ばない遠くに行っても、どこにいるか手を取るようにわかる……。」
「え……?! じゃあ、ッッッ!!!」
────────ガゴン。
壁から少女の頭が飛び出る。
頭から血が垂れ、目は飛び出しそうな程向き出ている。
「見〜つけた、おにいじゃんんんんおでぇじゃんんんん」
もう既に、追いつかれていた……。
マリンはへたり込む。
だが、オボロは違った。
オボロは怒りに打ち震えていた。
よくも、罪の無い少女をこんな風に……
オボロは手に闇の剣を作り出し、そして天へと掲げる。
「鑑賞しているクズ野郎……。お前だけは許さない……。ダンジョンから出た時、お前の罪を清算してやる……」
オボロは覚悟を決め、宣言した。
【「……俺の正義は必ずお前を殺す……」】
そう、オボロはどこかへ向けて言うと少女と向かい合い、オボロと少女の戦いは始まった。
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「ホホッッ……クヒヒヒヒヒッッッ!!!」
「おい、何がおかしい……? 中で何かあったのか?」
金髪の男、レキがそう呼びかける。
すると、────────
「イヤァ……」
丸々と太った男はひょうきんな声で、答えた。
「……ウジ虫にしてはなかなか面白いことを言うものです故……」
「……はぁ? ウジ虫……?」
「そうですぅ! ウジ! 糞に群がらる汚わらしいウジ虫のジョークです……ホホッッッ、クヒヒヒヒヒッッッ……」
「……たまりませんなぁ……?」
「気持ち悪い野郎だぜ……。」
「……ホホッッッ! 今は男に言われても興奮できそうです故!!! ホホッッッ、クヒヒヒヒヒッッッ!!!」
愉悦の混じった残酷な笑い声が響き渡り、この時レキ、ネロは何が中で起こっているかなど知る由もなかった……
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部屋綺麗にしたので気持ちよく寝れそうです……。。。




