表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/91

54話 安全地帯


前回の続きです! どうぞ!




暗くジメジメとした洞窟の中を3人は歩いていた。

天井からはポタポタと水が垂れており、進む度に幅が狭くなっていくように感じる。



「本当にこのまま向かって言っていいのか……?」



「……あくまで俺の感なんだけどな」



そう言って、リサードは入ったこともないダンジョンの中を歩いていく。



「……本当に君の感を信じてもいいの?」



「……さっきも説明したろ? 」



そう言って、リサードは胸を叩いてみせ、歩いていく。



「……新・魔獣化か。」



オボロがそう呟く。


マリンが落ち着いた後、3人はこれからどうするかを話し合っていた。

出来たばかりのダンジョンの中、右も左も分からない。 そんな中、リサードが提案したのは''感''だった。

リサードの防具のスキルである«新・魔獣化»という能力の1つである、第六感で進んでいくというまさに、無謀とも思えるものだった。

その効果はマリンもオボロも初耳だったようだが……



「……まあ、でも確かにこの迷路みたいな洞窟の中を魔獣に合わずに、進めてるんだから凄いよね……。」



マリンはパッとしないものの、魔獣を避け歩いていくため、そのスキルを認めざるを得なかった。



「ああ……。 それに、ここはリサードを信じてみるしかほかの選択がないわけだしな。」



オボロはマリンにそう相槌を打ち、後ろを歩く。


しばらく歩いていると、少し空気がひんやりしてくるのがわかった。

立ち止まるリサード。

必然的に、オボロとマリンも止まる。



「……。 この先に、少し開けた空間があるな。 そこまで大きくないけど、何か変な感じがする。」



リサードは必死に何かを感じ取ろうと目を瞑り集中する。


目からの刺激を遮断し、匂いや音にも目を向けてなるべく全体で捉える。



「……どうだ?」



「分からない。 ……だけど、行き止まりじゃないな……。 広い空間を挟んで、道が別れている……」



「……そうか。 魔獣は?」



「………………いるな。」



リサードはそれだけ呟く。

そして、目を開けると愛剣アビスに手を置く。

それを見て、オボロ白い剣に手を差し伸べる。



「……マリンは下がってろ。」



「リサード! あんまり、オボロの足引っ張っちゃダメだよ!?」



「……は?」



本気で心配そうに見てくるマリン。


いや……。 まあ……心配してもらえるのは嬉しいんだけどよ……。



「俺だって少しは……」



「行くぞ! リサード!」



「っえ?! ちょっと待てオボロ!」



オボロは白く輝く剣を抜き、一気に広間へと駆け抜ける。

言いかけていたリサードも「ああ、もう!」と言いながら、その後を追って広間に入る。


すると、───────────


宝石のような優しい光が2人を包む。


妙にぼんやりと光っていて、神秘的な場所に出る。

中心からは水が湧き出ており泉のようになっている。所々に花が咲いており、神秘さが増す。


さっきまでジメジメしたただの洞窟だったのに……


だが、驚くのは早かった。


そこにはもっと驚く光景があった。


リサードは突撃していたのも忘れ、目を奪われる。



「あれは……。」



リサードが目を向けたのは、湧き出ている泉の周りだった。



「……魔獣が。」



「わぁ……。」



魔獣たちがその泉に顔を近づけ水を飲んでいた。


まるで、人に慣れてるかのようにリサード達をものともしない魔獣たち。


気づくとマリンももう後ろに着いており、感嘆の声をあげる。



「何だ……安全地帯(セーフティエリア)か……。」



安全地帯(セーフティエリア)……?」



リサードがそう聞き返すと、オボロは愛刀をしまう。



「ダンジョンには沢山の種類があり、それぞれの特色がある。 しかし、全てに共通しているのはここ……セーフティエリアと呼ばれる場所だ。」



そう言うと、オボロは魔獣たちが

水を飲んでいる場所に近づいていく。



「おい! オボロ!」



「大丈夫だ。 お前らもこっちに来い。」



そう叫ぶリサードを気にせず、オボロは魔獣たちの近くに行くと、一緒に泉の水を飲み始めた。

手ですくい、水を口に運び喉を潤している。

魔獣たちはそれを全く気にしていないかのように、水を飲み続けたり、ゴロゴロとしている。



「何だこれ……。 本当に……。」



何か、気合入れて入ったのが馬鹿らしいなぁ……



「リサード! 見てみて!あれ!」



リサードが驚いていると、マリンに呼ばれ、指さす方に目を向ける。

何やら岩のようなものが転がっているな……。


「あれがどうかした……」と言いかけたところで、リサードも気づく。



「フゴゴゴ……。 フゴゴゴ……。」



「大きい魔獣も、お昼寝してるよ!」



「本当だ……!!!」



第六感で魔獣がいるのは察知できたが、まさかこんな無防備で居るとは夢にも思わなかった。



「もうどうなってんだか、わかんねぇ……。」



リサードがそう呟くと、オボロが近づいてきた。

手に何かを持っている。



「……これを見てみろ。」



「花……?」



リサードはオボロからそれを受け取り、興味深く見つめる。

ピンク色のフワフワとした花びらが付いており、とても柔らかい印象を受ける花。

そして、何より興味深いのはその花の(くだ)だ。 茎から葉にかけての管がぼんやりと光っており、キラキラとしたものが循環しているように見える。



「……コレは平和草(へいわそう)と呼ばれているものでな。 まだ、どんな物なのかは詳しくわかっていないんだが、このセーフティエリアと呼ばれる場所には必ず生えているんだ。」



「……へぇ……。すごいな……。」



リサードは手に乗せ、葉に触れてみる。

すると、キラキラと鱗粉(りんぷん)のようなものが手のひらに落ちる。



「それは種だ。」



「これ? このキラキラした粉みたいなやつか?」



「ああ、平和草の種は葉についているのさ。とても細かくてな。 撒くと次の日には生えてくるほど、成長が早い。」



オボロがそう言うと、リサードはあることを思いつく。



「そうだ。 この花持ち帰れば何かに使えるんじゃないか?」



リサードがそう言うと、オボロは「フッ……。」と鼻で笑う。


何がおかしいんだ……?


リサードがそう表情で訴えかけると、オボロは首を振った。



「いや、笑ったわけじゃないさ……。 この花が何かしら関係してるのは見て取れる。 争いをなくすために、ダンジョン内の全てに埋めるだとか、粉を持ち帰って栽培だとかな……」



だが、オボロはそう言うとリサードの手のひらから花を取り、地面にそっと置く。



「ただ、それはみんな最初思うよなって話だ……。 この花は、持ち出すと腐って激臭を放つのさ。 それも、挑発効果を持った臭いをな……。 うまく持ち出せても臭いが体にまとわりつくし、外に出た瞬間腐って灰になるで何もいいところがない……。 それを持っているだけで、周りを敵に変化させる……」



「……そうだったのか。」



オボロは懐かしげな表情で、咲いている花を眺める。



「平和をもたらすコイツらが、うって変わって争いの種を作る……。 皮肉なもんだ。」



「……………………………………。」



そう言うと彼は、溜息を1つ付くと気分を変える。



「リサードも飲んできたらどうだ? セーフティエリアに湧き出る水は別格だぞ。」



「……そうだな。 ありがとう、俺も飲んでくるとする……。 ところで、お前はもういいのか……?」



リサードがそう言うと、オボロは困った表情を見せた。



「充分飲んだ。 それに、うちのお嬢さんを見張りに行かなきゃならないからな。」



そう言って、ジェスチャーをするオボロ。



「おっきい〜〜〜〜〜!!!」



リサードとオボロが、見合わせたように声の先に目を向けると、寝ている魔獣に近づき触りたそうにしているマリンが視界に入った。



「……セーフティエリアでも、一応魔獣だからな。 怒らせたりしたくはない。」



「……そうだな。 頼むオボロ。」



「ああ……。」



オボロはそう言って、マリンの元に歩いていく。


大変だな……。 お前も……。



「さて……。」



マリンの方はオボロに任せるとして、こっちはこっちで休むか……。


リサードは、少し蹴伸(けの)びをして水の湧き出ているもとへと歩き出す。


水もこころなしか光っているように見える。


少しずつ近づいていくと、勢いが結構よく出てきていたのがわかった。


水を飲んでいた魔獣達は、満足したように少し離れると寝転び気持ちよさそうにしている。



「こうして見ると、可愛く見えるな……。」



そして、ふとあることを思い出す。


シロ。


森で出会った白い毛の子犬のような魔獣。

リサードに懐いており、クイーンエイプとの戦いで何度も助けてくれた相棒だ。

突然、行方をくらませてしまいその後も何度か仕事で森に言った時に少し探してみたりするが、やはり現れることは無かった。



「シロ……。元気にしてるかな……。」



懐かしみながら、膝をつき水に手を伸ばす。

湿った地面に膝をつき、膝に水分が染み込むが気にせず、水をひとすくいして流し込む。



「うまッッッ!!!」



何だこれ!!!


リサードはおどろいた。 何気なく飲んだが、うま過ぎないか?!



「……なぁ、オボロ! これっ……」



────────────ゾクッ



「────────?!」



その時だった────────────


悪寒。


リサードはオボロを呼ぼうとしたところで、とてつもない悪寒に襲われた。

大六感……。


水を飲む手をやめ、アビスに手を置くリサード。


今、何が起こった……ッッッ?!


周りを見渡すが、魔獣達にも以上はない。 マリンもオボロも気づいていない様子だ。


セーフティエリアに入る道は、リサードたちがきた道だけだ。

しかし、抜け道は3つほどある。

今の悪寒は、強敵の匂い。 それも、恐ろしく敵意を抱いた……



「マジかよ……。」



どの道からだ……今のは……


リサードは奥が見えないほど、暗く続く穴の向こうをただひたすら見つめていた。


そして、オボロ、マリンはもちろん、リサードも気づいていなかった。


ポロっ……


平和草の花弁が静かに、あたかも凍るようにその葉に霜がついていることに……。



────────────────────────────────────────Next➥



すきま風が酷すぎるので、引っ越そうと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ