53話 幸せな泣き音とひょうきんな笑い声
前回の続きです!どうぞ!
オボロは苦い顔で続ける。
「すまない……。 ゲイ・ボルグに気を取られていた……。 本当に申し訳ない。」
衝撃の事実に呆気を取られる2人。
打開策は無いか考え始めるリサードに対し、オボロは申し訳なさを感じていた。
だが、マリンは────────
「……ッッッ?!」
オボロはその目を疑った。
悲しみが浮かんでいると思ったその顔には、
安堵が浮かんでいた。
「……マリン……?」
「……え?」
リサードもその異変にようやく気づき、声を漏らす。
「……不安にならないのか……?」
そう言ったリサードの発言と同じ疑問をオボロも持っていた。
しかし、────────
「……あ、あのね……。」
「……………………………………。」
2人はマリンの声に耳を傾ける。
「正直……私お姉ちゃんに会うのがすごい怖かったんだ……。 2人は悪い人じゃないと思う……でも、私がしたことは結局お姉ちゃんを裏切る行為……。 もしかしたら……私……」
「……うん。」
ゆっくりと話すマリン。 最初は少し驚いた様子だったが、次第にマリンの目からは雫が垂れていた。
「殺されちゃうかもしれない……。 だから、出られなくてよかったかもなんて……。 リサードの事情もわかるの。 でも……。 本当に勝手な事言ってごめん。 本当にごめん……。」
「…………………………………。」
そう言うと、嗚咽が入り涙が止まらなくなるマリン。
リサードは答えない。
オボロはマリンの本音を聞き、リサードを見つめた。
「リサード……。」
リサードは少しばかり目をつぶると、口を開いた。
「マリン……。俺も本音を言う。 そのままでいいから聞いてくれ。」
リサードは優しい口調でそう語りかけた。
「……お前の本音を聞いた。 でも、俺はここから出ることに変わりはない。 もう一度お前の姉ちゃんと戦うことになるかもしれない……。それでもさ……」
「………………………………。」
マリンとオボロは黙ってその話を聞いていた。
「……それでも、出るまででもいい断ってくれてもいい。 俺に協力して欲しいんだ。 」
「……私なんか……」
「私なんかなんて言うなよ……。 お前だから協力してほしいんだ。」
それでも、マリンは首を降る。
「私ね……。 実は、ギルドでは何の役にもたたないって言われてるんだよ? 」
マリンは続ける。
「魔力を似せて渡せても1度きりしか出来ないの。 それ以外は、ほとんど他の人に及ばない……。 お姉ちゃんに守ってもらってばかりで、お姉ちゃんの妹だから私は、みんなに守ってもらえてるだけ……。 ただの臆病者なの……。」
「そうか。」
リサードは意外にもそう即答すると、オボロに問いかける。
「……ゲイ・ボルグが来た時、お前が固有魔法を発動できたのはどうしてだ?」
オボロは笑うとすぐに答えた。
「……マリンが魔力を俺のに似せて渡してくれたからだな。 アレがなきゃ、防げなかった。」
「でもッッッ!!!」
「……でもじゃねぇよ。」
「……ッッッ!!!」
マリンがそう遮ろうとすると、リサードが静かにそれでいて、力強くそういった。
「……俺はギルドのことは知らねぇし、姉のことを気にしたこともない。 ただの、マリン……お前に聞いてるんだ。」
「…………ッッッ!!!」
マリンの涙はさらに強くなる。 しかし、先ほどとは違い暖かな涙。
オボロは壁に寄りかかり、マリンを見つめる。
そして、リサードはマリンに近寄り頭を撫でる。
「……うぅッ……グスッっ」
「助けてくれてありがとう。 まずは、感謝を伝えさせてくれ。」
「うぅッッわぁぁん。ひぐっ……。」
「……ありがとうマリン。 ありがとう……ありがとう……。」
リサードは感謝を何度も述べる、その度にマリンの涙が床を濡らす。
「……俺も感謝している。 ありがとうマリン。 」
「2人とも……ズルいよ……ッッッ。 ひグッっ。」
マリンは笑みを見せながらも、泣きじゃくる。
「私……2人の助けになりたい……。」
「…………………………。」
「私に……あなた達の手伝いをさせて……。 お願……い……します。」
リサードとオボロは顔を見合わせてニコッと笑う。
「こちらこそ、よろしくなマリン。」
「────────────。」
リサードがそう言うと、ダンジョンの中には、ただの女の子。 肩書きなどから開放された、生きとし生けるただの女の子の幸せな泣き音が響いた。
…………………………………………………………………………………………
時刻は昼をとっくに越え、太陽は半分ほど顔を地平線に沈めていた。
漏れでる夕焼けは、森の木々の間をすり抜け、女の横顔を照らし出していた。
「……来たか。」
その声は冷徹で、聞いたものの身体を震わせるような寒さを感じさせるようだ。
後方から2人が近づいてくるのが見える。
「ミラ様! コンタクトが取れました! 」
そう言うのは、長髪の女騎士ネロだ。 その後ろを金髪のロングの男が付いてきている。
「……奴はどこだ?」
「もう少しかかりそうですが、夜にはこちらへ……」
ミラに対し、金髪の男レキがそう答えようとしたときだった。
「ホホッ!!!」
森の方から不愉快な男の声が聞こえた。 声は相当年老いているが、軽快で、怪しい声。
「……お前、もう来てたのかッッッ!!!」
「お前とは失礼な。 時送屋とお呼びくださいな……。 ホホッ!」
上を見ると、フクロウのように丸々と太った老人が森の枝の上に浮くように立っていた。
丸メガネにハットを被り、持ち手がくるりと曲がった杖を枝に乗せ、服装は帽子と合わせたスーツのようなものを着ている。
「……貴様の顔をまた見ることになるとはな……。 吐き気がする……。」
「ホホッ!! いいですぞ! ミラ殿の言葉は私の心を冷やかせる!! もっと!!もっと!!」
「……き、気持ち悪……。」
ミラの言葉に対し、時送屋と呼ばれた男は顔を赤らめ体を揺さぶる。
その光景をネロは苦手そうに見つめ、つい感想を口に出す。
「ホホッ!! ネロ殿も私を喜ばせようと……。 私感謝感激で、激しく快感が……」
すると、────────
「早くしろ……。」
「あッッッ……?!」
パリン────────。
一瞬で男が氷漬けになる。
だが、────────。
そこに男の姿は消えていた。
「ホホッ!! いやぁ、怖い怖い……。」
後ろから、先ほどと同じ声が響き、振り返る。
すると、時送屋はそこに瞬間移動したかのように平然と立っていた。
「……そんなに焦らずとも、もう準備はしてありますよ? ホホッ!!」
「……ほう?」
時送屋が指を軽く鳴らす。 すると、人ひとりはありそうな時計のような魔法陣がダンジョンの入口となっていた洞窟の周りに幾つか浮かび上がった。
「セットはさせて頂きました。 ホホッ!! ……ですが、時間はそんなに長く持ちますまい。 せいぜい、半日。 それ以上ですと、保証はできませぬぞ!」
「……構わん。 半日あれば十分だ。」
「……ホホッ!! 何を急いでらっしゃるのかは知りませぬが、報酬が貰えれば私はどんな事でも致します故ッ!」
「……フン。」
ミラがそう鼻で嫌悪感を見せていると、遠くから走ってくる人影が近づいてくる。
「ミラ様!! 10日ほどの食事、全隊員分集まりました!!」
「……よし。 では、それをこの男に渡せ……。」
「へ……?」
ミラの言葉に隊員は頭を傾げるが、「わ、わかりました……!」と後から来た馬車達にそう伝える。
「すみませんねぇ……。 この魔法は如何せん、体力を使います故ッ! 途中途中補給をしないとなりませんから!! ホホッ!!」
「それで……か……。」
レキはそう口にする。 ミラとネロはもう知っていた様子だ。
「ホホッ!!」
時送屋と呼ばれた男は笑うと、杖でコツコツと地面を叩く。
「…………ッッッ!!!」
すると、チクタクと針の音と魔法特有の低い音が重なり、魔法陣が大きく動き始めた。
「ダンジョンの穴は、もうすぐ開きますよ……。 ですが、開けておけるのはせいぜい半日! それ以上すぎれば出ることは愚か、もう一生開けることはできませぬ故ッ! ホホッ!」
「開けろ……。私だけで行く。」
「え……?! ミラ様?!」
ミラがそう言うと、ネロが慌てて前に出る。
「……何だ?」
「お1人で……お行きになるのですか……?」
ネロがそう言うと、ミラは少し止まってみせる。
しかし、それも束の間すぐに歩き出し、入口の前に立つ。
─────時空魔法
「タイム・ホーーーー〜〜〜ル♪」
時送屋がひょうきんな声でそう唱えると、時計式の魔法陣の速度が早くなり、徐々に時空が悲鳴をあげる。
ミラはコツコツとその場所へと近づき、とうとう目の前に到着する。
「ミラ……様……。」
「わかっている……。 ネロよ……。」
ネロがうなだれかけていると、ミラは振り向かないままそう言い放つ。
「私は、お前達が頼りない訳ではない……。 ただ、私は本気を出す……」
「……………………………。」
ネロは何も答えずに後ろ姿を見つめる。
「……お前達を殺したくはないのだ。」
ミラは歪んだ景色の中に、迷わず足を踏み入れる。
「ホホ〜〜ッ!! 行ってらっしゃませぇ〜〜!!」
「……なんてこと。 あの技を……」
ミラの姿が消える頃に時送屋のひょうきんなな笑い声が響き、歪みの安定に取り掛かる。
ネロはその中、ただ浮かばれない顔で地面を見ているだけだった。
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テスト期間ワロタwww




