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47話 ジャストタイミング


前回の続きです。どうぞ!




「ふむ……。 」



「俺が知ってるのはこれくらいです……。 」



「そうか……。 」



まあ、ジュードと師弟関係があるって言うのは短い間、戦闘の技術を教えて貰っていただけと言ったらだけだし、そこまで深いもんじゃない。

それに、大陸から出ていたなんて知る由もなかったのだから俺の持っている情報なんてたかが知れてるんだよな……。



案の定ミラは大きな情報を得られたという顔をしていない。

リサードに有益な情報は無いと察したようだ。



「ふむ。 それでは、……」



そう言ってミラが立ち上がった時だった────────



「ミラ様……失礼します。」



どこからともなく膝をついた女が現れる。



「王国付近にダンジョンが現れました。 早急に対応をお願いします。」



「……お前達で行けばよかろう?」



ギルドマスターである、ミラは面倒くささを隠さず顔に出しそう答えた。



「王国の貴族からの要請ですので……」



「チッ……」



だが、その言葉を聞くなりミラは舌打ちをする。

そして、彼女は少し頭を抑えるが、ため息を1つするとすぐに切り替えてみせた。



「早急に準備しろ。 スリーファイブに、ヒーラーツーで行く。 」



スリーファイブ……? ヒーラーツー……?



リサードには慣れない言葉がポンポン出てくるため、頭にハテナが浮かんでいる。



何だか、急に忙しそうだ……



「了解しました。 えと、それと……口添え失礼致します。 マリン様は……いかが致しましょう……?」



女は少しギクシャクとし、そう問いかける。

が、その瞬間不穏な空気をリサードは感じ取った。



「……ダメだ。」



「しかし……」



「しかし……?」



女がそう言うと、ミラの目つきが変わり空気が一気に張り詰める。



「次だ……」



ミラは女に近づき、耳元に囁きかける。



「二度も言わせるな……。 次は無いぞ?」



その瞬間女の肩が見るからにすくみあがるのがわかった。



「申し訳ございませんでした……。」



「貴族か……めんどうだ、早急に伝達しろ。」



「……ッ。 かしこまりました。」



そう言って女は消え、ミラも立ち去ろうとする。



え……? ちょっとまてよ。



俺は……?



「ちょ……待ってくれ! 俺を出してくれよ!」



ヒヤリとリサードの手に霜が付く。

こ、コレは……



「頭が高い。 黙って待っていろ……。 」



「おいそれは……ッッッ!!!」



────────バタン。



「えぇーー……」



俺を牢屋から出してくれないのかよ……



結局、こんな感じになるのな俺。



街探索なんかしなければ良かった……



シーンとなる牢屋にリサード1人が取り残され、鬱憤がたまる。



「偉いんだか何だか知らないが約束は守れよ……。 バーカバーカ。」



誰もいないことを確認しそう文句を垂れると牢屋の中にへたり込むリサード。

外はバタバタと忙しくなく動いているが伝わる。

すると、ドアが急に開かれる。



「ミラ様っ! くっ……ここではないか。」



ドアからネロと呼ばれていた女が入ってくる。

道端でレキと一緒に戦闘を歩いていた人だ。



「あ……! ネロさん……?」



「あら……。 ここで何を?」



相手もリサードを覚えていたのか立ち止まるネロ。

リサードはそれにあやかり、外の事情について聞いてみることにした。



「ミラさんに待ってろって言われたんですけど、何かあったんですか?」



「ええ、ダンジョンが出現したの。 私もそろそろ行かないと、ごめんなさい。」



ダンジョン……?



リサードはダンジョンという言葉に聞き覚えはなく、一体それはなんなのだろうという疑問が残る。 しかし、やはり忙しいのか彼女はそう話を切って、出ていこうとする。

だが、まだ大事なことが聞けていないリサードはそれを阻止した。



聞いておかなければならないことがある……



「そのダンジョンって、いつぐらいに帰ってくるんだ?」



リサードがそう言うと、動きを止め少し考えるネロ。



「そうね……。 早ければ5日ぐらいかしら。」



「5日────────?!」



リサードは声を荒らげる。



俺2日後にオボロと予定があるんだが?!



リサードは必死に考え始める。



ミラさんがこのまま行ってしまったら、俺に出ることは出来ない。

それに、脱獄を試みるなんてあの人を敵に回すのも同然だ……それだけは何としても避けておくべきだ!



「頼む! 今すぐここを開けてくれ! 約束があるんだ……!」



そう言うと、困ったような顔をするネロ。



「……すまない。 おまえをそこに入れたのはミラ様だ。 私の勝手でどうこうはできない。」



「そんなぁ! 頼むよ! 大事な約束なんだ、これを逃したら……」



「むぅ……。 私にはどうも……」



「クソ……。 あの女ァ……」



「………………………?」



リサードは強く鉄格子を握りしめ、ネロは「誰の事だ……?」と頭をかしげる。



リサードの焦りとネロの疑問からか少しの沈黙と、忙しなく響く足音だけが響く。

その時だった────────



「……ネロさん。 ここは私が説得しますから、準備してきて大丈夫ですよ。」



そう言って現れたのは……



「マリンッッッ?!」



リサードがそう言うと、ニコッと笑いかける。



「すまないマリン。 では、私はこの辺でそろそろ行かねば……」



そう言ってネロが退出する。



「…………マリン……。」



リサードがそう呼びかける。



「あの女って、お姉ちゃんのことだよね……?」



「え……?」



聞いてたのかよお前……



「お姉ちゃんに言っちゃおうかなー?」



そう言って、無邪気な笑顔を見せるマリン。



「んぐッ……。」



マリンは鉄格子の前に立ちリサードを見つめる。



勘弁してくれよマリン……



リサードは焦り始めるが、マリンはその様子を見ると満足げに笑みを浮かべた。



「なんてね? リサード君にお姉ちゃんはオーバーキルだから言わないよ。 足下にも及ばないし……」



「……うーん、この……。」



ありがたい……けども……。



足下にも及ばない……ですかぁ。



まあ、わかる。 俺がそのセリフを言うならわかる。



だが、悪意の無い顔で心をオーバーキルしてくるこの感じ……。



はぁ、間違いなくマリンなんだよなぁ……と思ってしまう。

そして、「ふふふ。」と笑うと今頃のように聞いてくるマリン。



「そう言えば、何でここにいるの……?」



「あっ! そうだよ!」



だが、その言葉でリサードは思い出しすぐさま話を戻す。



コイツなら……!!!



「ここから出してくれるように、お前の姉ちゃんに言ってくれないか?! 俺大事な用事があるんだよ! 頼む……!」



「えっ? お姉ちゃんに……? それは無理だよ。」



「えッッッ!」



そうキッパリと言い切るマリン。



「そんなこと言ってる場合じゃねぇんだよ、俺にはやらなきゃ……」



「無理なものは無理!!!」



「そんな……」



俺はここから出れないのかよ……



「……………………………。」



大事な約束……



オボロが手伝ってくれてるのに……



やっと……クロエの手がかりが……



こんなところで……



「この街じゃお姉ちゃんがルールだから。 それぐらいうちのギルドマスターって言うのは……」



3日より後に遅らせたら……



リサードの耳にマリンの話は入っていなかった。

リサードは感嘆の声を漏らす。



「くそ…………。」



その時だった。



「大事な約束って言っても日程を遅らせれば何の問題も無いでしょ?……」



「────────ッ!」



そう……か。 その手が……



当たり前っちゃ当たり前だが、そうしとくほかこの状況は……。



リサードもそう納得し、どう状況を伝えようかと考え始めた時だった。



────────ドクンッ。



リサードの頭にある光景が出てくる。



それは、ある女の子が暴行されている様子。 ぜーノスがクロエを暴行している様子だった。



なんで今そんなことを……。



────────ドクンドクンッッ。



俺はもうこんな目にクロエを合わせたくない。 そのためにも俺が……



あ、……



リサードはハッとする。



そう……だ……よ……



俺は何言ってやがる……



脳を恐ろしい勢いで回転させ、情報を思い出す。



クロエの目撃情報は1ヶ月前。 しかも、闇市に出てる。 時間的に考えてもう売りに出されていてもおかしくはない……はず……。



そうだよ……。 なんで焦らなかったんだ俺は……



考えることを先延ばしにしていた……そうだよ、もしかしたらクロエは、今も……



頭の奥がボーッととろけるような感覚。



「ダメだ……。 俺は待てない。」



「ふーん。 でも、その鉄格子は魔法も効かないし、硬度だって……」



3日。 これ以上伸ばすわけには……



リサードはマリンを遮り呟く。



「例え、どんな手を使っても……」



「え?! ちょっとッッッ!!!」



───────────ガァン!



鉄格子に拳を入れるリサード。



「リサード君、話聞いてた?! その鉄格子は……」



「……うるせぇ……。」



リサードの頭の奥から何かがとろけ、流れ出る感覚。 その液体は脳を少しずつ湿らせる。



「俺はァ!!! 」



「────────?!」



リサードは渾身の声を上げる。



「ここから出なきゃなんねぇんだ……!! ……例え傷だらけになろうが、凍らされようが、命を狙われようが関係ねぇ! ……俺はそのためなら何だってしてやる!!!」



「え……────」



一体何がそこまでさせるの……?



「お前らが出さねぇ気なら、俺はぶっ壊してでもここを出るぞ。 例え、お前らを敵に回しても果たさなきゃならねぇ……。 約束は……絶対そういうもんだろうが……!!!」



────────ガァン!ガァン!



天井が揺れる程の拳を、鉄格子にいれる。

だが、鉄格子はビクともしない。



「あなた剣士でしょ?! 剣も魔法も使えないのに無理だよ! それに、そんなに手を痛めたら剣が握れなくなっちゃう……」



慌て止めるマリン。 しかし、リサードはニヤッと笑う。



「剣……か……。」



「え……?」



リサードは鉄格子をギュッと握り、不敵に笑う。



「こんな状況が前にもあったのさ。 アビスが無くて、俺は牢獄……」



「……………………ッッッ!!」



「俺は俺だけじゃない。」



バタバタと外から聞こえる足音がさらに多くなる。



「え……?!」



いつも急で悪いな……



だけど、来るぜ……



だってな……



入口の扉に太刀筋が浮かび、レンガのように崩れる。







【「アビス……。 ここで来なかったらお前じゃねぇだろ?」】







「フシュウウゥゥゥゥゥ……。」



「なッッッ────────!!!」



「ジャストタイミングだ!!!」



武者が剣を構える。



「マリン! かがめ!!!」



「ひゃ、ひゃい!!!」



リサードに言われるがまま、思い切り頭をかがめるマリン。 その上を、風圧がよぎる。



マリンが恐る恐る目を開けると、鉄格子が地面に転がる鈍い音と先日みた時、今までと雰囲気の変わった青年。



「うそ…………」



そして、後ろを振り返ると侍は消えており、リサードの愛刀・アビスが地面に刺さっている。



これは……夢……?



すると、間をかいくぐりアビスを引き抜くと落ちている鞘に収め反対側の扉へと歩き出す青年。

不思議と彼の横顔はこれまでに無い笑顔と、強さを感じさせた。



「すまねぇ、マリン。 そういう訳だからよろしく。」



「え……? ええッ?!」



青年の後ろ姿が、扉の奥に消える。



「な……なにそれ……。」



マリンはそのまま地面にへたりこんだ。



────────────────────────────────────────




一週間更新で、日曜日です。 申し訳ございません。


土曜日でしたのに遅れました。 今後内容にします涙

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