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48話 氷槍ゲイ・ボルグ

前回の続きです! どうぞ!



片手にアビスを持ち、白髪の青年はドアを開ける。

すると、また牢獄が沢山ある部屋にたどり着く。



「まだこんなにあったのか……」



人がいるか、いないか確認している暇はない。

牢獄のある部屋を勢いよく駆け抜けていくと、牢獄が並ぶ部屋に異常なほど鎖の付けられた扉部屋を発見する。


背筋にゾクッと冷たいものが走る。


この感じ……


見られてる……?



「気味が悪いな……さっさと出るか……。」



リサードはそう残し、「変な考えはよそう……」とまた駆け抜ける。


もう一つ扉を開けると長い螺旋階段が現れそこを駆け抜ける。

すると、やっと地上に出たようだ。

リサードが駆け抜けた方のドアは、ギルドの裏側らしく人に会うことは無かった。



「中を探索してる暇はないな……。」



仕方ない……


リサードは小さく「ごめんなさい……。」と呟く。

そして、剣を構えた。



────────光系剣技



「ホーリー……」


すると、曲がり角から男が現れる。

あれは……



「ああ?! テメェ、何でそこに?!」



レキはそう言って走り出す。


めんどくさい奴に見つかっちまった!


だが、リサードはそのまま剣をギルドの壁に向け、目をつぶった。


壁の向こうには傷をつけないよう……壁だけを切る!!!


イメージを固めるとアビスを振り下ろした。



「……スライス。」



アビスに集約された光の粒子は剣先を尖らせ、壁を豆腐のように切る。



「ああ! ギルドの壁をぉぉぉぉ!!!」



レキがそう言って魔法を放とうとするがそれより先に、



「ごめんなさい!!!」



リサードはそう言うと、既に姿は壁を抜き外に飛び出していた。

それを必死に追いかけるレキ。


だが、あることを思い出しニヤリとレキはほくそ笑んだ。



おいおい、忘れてたぜ……



お前のその行為は、袋の鼠なっただけだぜ……?



レキはリサードに向かって叫ぶ。



「残念だったなぁ! 外には隊長がいる……逃げられる訳が……」



え……?!



「……なんだと?!」


レキにリサードがそう返す。


だが、その時予想だにしない現象が2人に起こっていた。



空中……?



地面は……?



「え……?」


「え……?」



「……………………………………。」



「え……?」


飛び出したリサードは愕然とした。



「……んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???!!!」



地面がないのだ。


有り得ない高さに目がくらむ。


嘘だろ……、さっきまで地上に居たんだぞ……なんで急に……?


まさか、こういうトラップ……?!


してやられたとレキを睨むリサード。


しかし、────────



「うおぉぉぉぉぉお!!!」



レキも落ちていた。



「……お前も落ちんのかいぃぃぃ!!!」



「何がどうなってる?! 俺はさっき1階に居たんだぞぉぉぉ!!!」



「何じゃそりゃあーーー!!!」



じゃあ、一体俺たちに何が起きたんだ!?


空中をじたばたしながらそう考えていると、地面が見えてくる。

着地……そう考えていた時だった。



────────ヒュン!!!



下から何かが飛び出し、頬をかする。 かすった所が熱い。

たまらず、手で頬を触る───────────


「血……?」



下から何が……ッッ!!!

すると、────────



「外したか……。次は当てる……」



そう言って、悔しそうに歯を食いしばるミラがいた。



「姐さんッッッ!!!」



レキがそう叫ぶ。


ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……


外に出たのは良いものの、出たところは上空だし、下にあの化け物が待ち構えている。



「何の魔法を使ったか知らねぇがアウトだなァ!! 空中じゃ次はよけられねぇぜ?」



そう落ちながら叫ぶレキ。

レキもレキ自身でこの現象はリサードのものだと思い込んでいる。


しかし、リサードはまだ考えていた。



「何故、俺達は空中に居るのか……」と言う疑問をだ。



レキはこのギルドで前を歩くぐらいだから、このギルドに結構な時間いたはずだ。

しかし、この状況を俺のせいだと考えている。

つまり、このギルドに1階にいた者達を空中に移すような能力を持つものを知らない。

それに、さっきの掠った攻撃だ。 あの人が攻撃を外すなんて思えない。


だが、それも大事な判断材料だ。


あのミラが一発目を外すほど、気が集中出来なかったのは、恐らく1階に居たレキと地下にいた俺が空中から落ちてきたからだと考えると……


リサードは手に光を集める。


────────光系魔法



「お前何するつもりだ……!」



リサードは手をレキに向ける。


俺の読みが当たっているなら……



「オーバーフラッシュ!!!」



「ぐあぁぁぁ!!!」



……この状況はお前らにとっても想定外なんだろ?!


恐ろしい閃光を放ち、レキの目をくらます。

しかし、ミラはそれを読んでいたのか視力を失った様子はない。



「そこだっっ!!!」



下からミラが氷の槍を放つ。


────────────。


だが、氷の槍をは空を切った。



「何……奴は……?」



先程いた場所を見るミラ。

すると、────────



「……壁を壊してすいませんでしたァァァ!!!」



思い切り弾丸のように飛んでいくリサード。



「なに……。」



落ちている状況から、横に飛び出せる訳が無い。 ギルドの壁からも遠かったはずだ……。


すると、────────



「レキッッッ!!!」



ミラの隣にいたネロが叫ぶ。


ミラもレキを見ると、────────



「何しやがる……ゲホッ!!!」



リサードに思い切り飛び台にされ、防御はしたものの反動でギルドの壁の方に寄っているレキ。


あの男……空中でレキを踏み台にして横へ飛んだのか……。

だが、────────



「逃がさぬッッッ!!!」



リサードに氷の槍を放とうとする

ミラ。

運良く近くの屋根に着地したリサードの後ろ姿を捉える。

しかし、────────



「うおおおおおおおおッッッ!!!」



防御したものの、恐ろしい勢いで落ちてくるレキをそのままにすれば、無傷では済まない。

リサードへの追撃の魔法をストップし、レキの防御魔法に変えるミラ。


クッ……仕方がない……


────────氷系魔法



「アイス・バルーン。」



大きな氷の塊がレキの下に現れ、レキを優しく受け止める。



「……私の顔にドロを塗りおったな。」



「ミラ様……」



リサードはもう見えない。 屋根に着地したかと思えば、もう走り去り人混みに紛れたか……?


だが、────────



「私を甘く見るなよ……。小僧が……。」



氷の槍をその手に出現させる。 だが、ただの槍ではない。 生命を狩るための槍。

その形は伝説の槍を模倣して作られ、氷の槍として蘇った伝説の槍。


かつてないエネルギーが手に込められ、槍の造形が作られていく。

コレは……


ゲイ・ボルグ……



「……ミ、ミラ様! 街には人がいます! それでは……!」



「奴をここで逃す方が痛手だ。」


「しかし……!」


「しつこいぞ……? ネロ……。」


ミラはそれでも手を止めず、むしろ威圧を放っている。



「……ミラ……様……。」



自分では止められないと悟り、地にヘタるネロ。


その間もグングンと魔力をあげ、大気がカラカラにになる。



「フフッ……。」



そして、ゲイ・ボルグが完成する。



【「40パーセント……と言ったところか……」】



ミラはゲイ・ボルグを触り、強度を確かめる。

そして、────────



「十分だ……刈り取れゲイ・ボルグッッッ!!!」



轟音。


空気が爆発したのかと思えるほどの、轟音と鋭いカナキリ音が合い交じり、空を切る。

ゲイ・ボルグ。

かつて、その槍は伝説と恐れられた。

その槍に過程は無く、 発射と結果しか存在しない。


投げたという事象と、貫いたという結果しか、必要としないのだ。


心臓を貫くまで止まらないその槍はどこへ投げても必ずそのものの心臓を突き抜く。

よってその槍に、どこへ投げたか、何を通ったかは関係ない。

ただひたすらに命を追う狩り人。

例え、その通過点に人がいようとも……


その轟音はリサードにも届いていた。



「何だ……今の音……?!」



そして、同時に感じ取っていた。 恐ろしい魔力の塊が、恐ろしい勢いで、向かってきている。

それも自分以外には見向きもせず……。


悲鳴があがる。



「街の人まで……ッッッ!!!」



リサードは考えるより先に、屋根に飛び移る。


あの女ァ……!!!


咄嗟にミラの仕業だと探るリサード。


街の人の命をなんだと思っていやがる!!!



「うおおおおおおおおッッッ!!!」



人がいない屋根の上を最高速度で走る。

そして、────────


案の定だ。


ミラのゲイ・ボルグが姿を現す。


丁度リサードの対角線上に現れ、純粋なスピード勝負。


屋根を巻き込み、リサードへの距離をジリジリ詰めていく。



「……キッつい……が!!!」



リサードの最高速度を持ってしても、追い詰めてくるスピードに嫌気がさす。

そして、もうそろそろ住宅街を抜け、山に入る。


永遠に追いかけてくるなら……


リサードは最後の屋根を思い切り蹴りあげ、山に突撃するスピードで着地。

そして、そのまま────────


……そのものを破壊するしかねぇじゃねぇか!!!



「出し惜しみはしない……!!!」



リサードの体から輝きが発される。



────────光系〈流〉唱



「セイントフォース・フルバースト……」



リサードの体から光が流れるように溢れ、身体的能力を底上げする。


そして、────────


────────光系絶技



「フルバースト・ルミナス・ぺネトレイトォォォォォォォォォォォォッッッッッッ!!!」



その姿はまるで流星。


リサードとゲイ・ボルグは、星の衝突のような衝撃を与え、2つは衝突したのであった。



…………………………………………………………………………………………………














静かな部屋。 足音も何もなく、ただ、自分の呼吸の音だけが響く。



「彼はうまく逃げられたかなぁ……。」



その声は部屋に反響し消える。


だが、その声は誰にも届かないし、誰かに向けたものでもない。


薄暗く、ヒンヤリとした部屋。 食事はほとんど運ばれてきた記憶など無い。

恐らく、自分は餓死を狙われているのだろう。



「可愛いなぁ……ミラちゃん。」



体を少し動かすとジャラジャラと音が鳴る。

しかし、それだけで身動きは取れない。 鎖も、壁も、床も魔法適性値最悪の特殊な鉄。 魔殺鉱を使われている。


さっきの彼にまた会いたいなぁ……


そんなことを考え、天井を見上げる。



「ふぁあ…………………………。」



男は大きなあくびを一つすると、何かを思いつく。

そして、ニヤリと口角を上げた。



「そうか……」



男は唇を舐めずる。



「……僕が会いに行けばいいんだ。」



男はそう呟くと、目をつぶる。

そして、次に目を開いた時。


男の目は青く光っていた。



────────────────────────────────────



一日寝たい……

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