49話 駆けつける戦友
前回の続きです! どうぞ!
「ミラ様……」
ネロは頭を抱えうずくまる。
彼女は40パーセントと言った。
しかし、彼女の力が底知れないのは、よく知っている。
なぜなら、今までの任務で彼女が半分以上力を発揮しているところを彼女は見たところがないからだ。
その、例に……
彼女はミラのゲイ・ボルグを見たことがある。
大陸中のありとあらゆる、戦力を国があげて行う任務。
通称【グランド・ミッション】
その最終目標であった、大型モンスターを約半分の力……つまり50パーセントのゲイ・ボルグで討伐している。
ネロから言わせれば、たかだか逃した脱獄犯1人にゲイ・ボルグなど手段が釣り合っていないとしか言いようがない。
アリを殺すのに、ライオンを解き放つのと何ら変わらないのだ……
「ありゃ……死ぬぜ……。」
レキもまた呆然と立ち尽くしていた。
ゲイ・ボルグはうちのギルド。
リオンズハートの伝家の宝刀と言える代物。
レキも長くいるが、目にするのは初めてであった。
ゲイ・ボルグの特徴は2つ。
時間が経つにつれ、大気の魔力を吸収し、威力が上がること。
そして、最後は単純明快。
「……ターゲットが死ぬまで止まらない、正真正銘''必殺''の一撃。」
ネロがそう口にする。
レキは正直、リサードを見くびっていた。
だが、彼は今まさにあのゲイ・ボルグと真っ向対決している。
それだけで、強さは十分に伝わっている。
だが……
レキは頭を垂れる。
ネロもまた頭を落とす。
ゲイ・ボルグは止められない。
止められるわけがない……
彼女はリサードと仲良くなってみたかった……という希望を振り払うよう静かに目を閉じた。
…………………………………………………………………………………………
「うおおおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!」
リサードが飛び出す。
「フルバースト・ルミナス・ぺネトレイトォォォォ!!!」
ゲイ・ボルグに対し真っ向勝負を仕掛けるリサード。
それはまさに衝撃。
星の衝突を思わせる程の火花が散り、剣先は炎属性顔負けの最高温度をたたき出している。
衝突は拮抗。
だが、僅かにリサードが押されている。
「ぐおおおおおおッッッッッッ!!!」
硬ぇ……
リサードはついつい力が抜けそうになるのをこらえる。
それに、場所は上空。 足で踏み出す力がない。
同じ状況とはいえど、やはりゲイ・ボルグの名はダテじゃない。
押され始めるとグングンと力を増すように、リサードの手に重みが伝わる。
「まだッッ……! まだやってやるっつってんだろうがッッッ!!!」
そう自分に言い聞かせるように、手に力を込める。
だが、いつまで続くかはわからない。
リサードの頭に最悪の現状が浮かび上がる。
ダメだ……
このままじゃ……!!
力を込めながらも必死に頭を回す。
だが、追い打ちをかけるようにリサードの体は重力にも沈められ、足が沈み始める。 突撃の状態を保っていたいが、さらに腕に力が入りづらくなる。
考えろ……俺……
リサードの手に痺れが入ってくる。
全ての状況を読み、生かすんだ……
どうきたら、ゲイ・ボルグを粉砕できる!!!
アビスは頑張ってくれている。
問題はリサードの腰が曲がりはじめたことと、威力も消えかけていること。
更には腕は痺れと圧力から震えが来ていると来たものだ。
これじゃ、ゲイ・ボルグを壊すことなんて……
リサードが諦めかけたその時だった。
壊す……?
自分の頭の中に浮かんだ言葉に疑問を抱く。
剣って何の為にあるものだ……?
リサードはめまぐるしく巡っていた思考を止める。
そうだ……
単純に考えれば……
そうだよなぁ……!!!
リサードは剣の持ち方を少しずつずらし、持ち方を変える。
壊すんじゃない……。
剣の意義ってのはよぉ……
「……ぶった斬るためにあるんだろ!!!」
勢いがなくなり、ぶらりと垂れかけた足。 だが、体制的にいえば切ることなら可能。
「諦めんのは、まだ早いだろ俺……!!!」
ギリギリと剣の衝突面を持ち手の近くに下げていく。
包丁と同じ原理だ。 職人がものを切る時、彼らは垂直に刃を下ろすのではない。
手前に引きながら、押して切る。
力はいらない……
「フゥゥゥ……。」
力をギリギリで保ちながら、機会をうかがう。
だが……正直キツ……
すると、その時剣に違和感が走る。
「な……?!」
アビスはグラディウスと言う、肉厚、幅広の両刃の形がみるみる形を変える。
お……おお……
「……何が起こってるんだ……?」
すると、デジャヴ。
不可解な声が頭の中に響き渡る。
(……これは、お前のイメージだ。)
リサードには聞き覚えのある声。
「……アビス?! これは一体?!」
リサードがそう問いかけると、頭の中にもう一度声がかかる。
(……我はお前の意思に答えたまでだ。)
そして、
(思うがまま……振り下ろすがいい……)
「待てよ、アビス!」
グンッとゲイ・ボルグの重みが強まる。 これは考えている暇はねぇ!
だけど!!!
「ありがとなぁ……アビスゥゥ。」
信じろ……
アビスを……!!!
リサードは手の力を一気に抜く。 アビスの形状が変化していく。 リサードの動きに合わせるように。
ただ、手前に引きながら切るだけじゃダメだ。
一瞬に力を込めて、切る……
そう……まるで居合切りのような勢いを……
グッ………………………。
頭の中に言葉が浮かび上がる。
「変型三式……」
リサードは浮かび上がった言葉を口にし、目を閉じる。
刀身が伸び刀のような形状を見せるアビス。
難しいことは考えねぇ……
ただ、切る……!!!
ゲイ・ボルグに触れたまま、あたかも居合切りのような勢いを一瞬に込める。
リサードは最後の言葉を口にした。
「……〈虚刹那〉!!!」
振り下ろす。
────────────。
一瞬、大きな衝撃風を起こして静まり返る。
────────ピキッ
その衝撃は街を超え、そしてネロ、レキ、ミラのもとへと届く。
「ッッッ……!!!」
ネロは驚きをあらわにする。
「お……おお……」
レキは思わず震える。
その力への恐怖、憧れ、喜びなどが混ざり合いレキを釘付けにしていた。
コレは……
だが、それ以上声が上がることは無かった────────────
「無駄じゃ……。」
ミラがそう口にしたからだ。
「え……?」
ネロがレキに近寄る。
「レキはゲイ・ボルグ見たことがないものね……」
驚きを隠しきれていないレキの肩に手を置き、そう答えるネロ。
「でも、今の衝撃は……ゲイ・ボルグが切られ……」
「言ったはずだよ……」
ネロは言いきる。
「ゲイ・ボルグは殺すまで止まらないって……」
………………………………………………………………………………………………
「ううッッッ……」
リサードは地面に叩きつけられる。
好感触だ。 だが────────
何だよ……この嫌な気持ちは……
リサードは空を見上げる。
この場合、彼は見上げなかった方が良かったかもしれない。
知らないまま寝たほうが、幸せだっただろう。
「な……。 おい……。」
リサードは口から零れるように言葉を紡ぐ。
ゲイ・ボルグは切られていた。
それも、真っ二つに……
ただ……
ゲイ・ボルグは切られ、リサードと交差するように割れていたのは事実。
だが、ゲイ・ボルグからすればなんてことは無い。
ただ、切られて2本になった。
ただ、それだけの事だった……
──────そうか……
2本の槍が恐ろしい勢いでリサードに牙を向く。
──────俺の体は……
体はボロボロで身動きができない。
ただ、迫り来るそれをまるで人事のように眺めた。
──────ここが、限界なのか……
空を切る槍の音。
だが、それは冒険の始まりを……
まだ終わらない、この物語の始まりを意味していたに違いない。
リサードの前に立ちはだかる男。
それは、2度目の光景。
「諦めるな……なんて酷なことは言わん……」
黒い服に、白い剣……
お前は……?!
リサードは、その後ろ姿に目が釘付けになる。
飛んできていたゲイ・ボルグの片割れが突如姿を消す。
ああ……。
また、かっこいいところを見せられたな……。
その男は、白い剣を無造作に降ると振り返った。
「……だがなリサード。 大志を抱いた男が、そんな目をして死にゆくなんて……。
そんなこと俺は許さない。」
そう言って、彼は不敵に笑って見せた。
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クリスマスぐらいケーキ食べたいよ。




