31話 ヒュドラとゼーノス
続きです!! どうぞ!!
バジリスク……?
クロエは必死にその名前について知るうる情報を引き出していた。
バジリスクとは、7人の賢者に出てくる魔獣のこと……
大魔獣ヒュドラのライバルとして記されている伝説のもう一体の魔獣。
なぜ、その名前がここで……?
だが、バジリスクと問いかけたリサードが求めていた答えは帰ってこなかった。
『バジリスク……? なんだそりゃあ?』
「……ふーん。 やっぱりそうかい。」
あの、目。 さっき見た時の能力といい、バジリスクの野郎のものだが……
もし、完璧にやつの力を使えているのならとっくに全員死んでるはずだ。
あとは、どうやってこの力をゼーノスが手に入れたか……それが謎だ。
ヒュドラがそう考えていると、ゼーノスが笑い出す。
『クックック。 お芝居ごっこで、気をひこうってかァ?』
「あぁ、もういいや。 聞きたいことあったんだけど、痛めつけてから聞くことにするぜ……」
ヒュドラがそう言うと、ゼーノスの眉間に筋が浮く。
『……俺を怒らせても、お前の死が早くなるだけだってことがわからねぇみたいだなァ……』
ゼーノスが臨戦態勢に入る。
「リサード君……!! 」
クロエが心配そうに見つめる。
その声に反応するかのように振り返るヒュドラ。
「嬢ちゃん。 死にたくなかったらそこ動くなよ? 後なぁ……」
俺は……
「え……?」
『余裕そうだなぁッッ!!!!』
ゼーノスはもう距離を詰めてきていた。
呪系拳唱────
『〈王〉破拳!!!』
ゼーノスの右腕に黒いモヤがかかり、収束する。
「リサード君ッッ!!!」
クロエが叫ぶ!
『死ねぇッッ!!リサード!!』
ゼーノスの右腕が恐ろしい威力で振り抜かれる。
────が
「────?!」
『………………………………あ?』
その拳は、あと数センチ届かなかった。
「一回しか言わねぇからよく聞けよ……?」
……俺様の名前を間違えんな。
「俺の名はリサードじゃねぇ。
…… ヒュドラだ。 ここテストに出るぜ……?」
「……………ヒュ…………ドラ………?」
そう言ってニヤリと笑うヒュドラに驚き、声が出なくなるクロエ。
それと同様、驚くゼーノス。
だが、ゼーノスにはもう一つ気になることがあった。
『貴様何をした……』
自分の放った拳が当たっていなかった。 威力も速度も完璧、なにかされた訳でもなく、ただ平然と拳を伸ばした先にいる。
「何もしてないさ。 ただ、1歩後ろに下がっただけだ。」
『嘘をつくんじゃねぇ、そんなんで避けられるほど俺の攻撃は甘くねぇんだよ。』
そう言って拳を戻し、もう1度攻撃の態勢に入るゼーノス。
すると、────
「だったら、試してみろよ……」
そう言って、右腕で挑発するヒュドラ。
「先生が直々にテスト対策してやるよ。」
そう言って、自分で吹き出すヒュドラ。
だが、その時には既にゼーノスの姿はない。
『……………………殺す。』
絶対に殺す。
「おいおい、まだ始めていいって言ってねーぜ?」
どっち向いて喋ってんだコイツはァ……?
俺様はもう既にテメーの後ろだよ!!!
────〈王〉破蹴
『後ろ向いても遅せぇッッ!!!』
ヒュドラの後ろ姿。後頭部に蹴りを撃つ。
その距離あと数センチ。
決まった…。 ここから覆せるわけが……
────グルンっ
『なっッッ…………………!!』
一体何が……?
空……?
「俺が後ろを向くんじゃねぇよ。」
脚を掴まれ地面に叩きつけられるゼーノス。
背中に強い衝撃が走り、地面が揺れる。
『グッッハッッ…………』
そんな……バカな……
「お前が前に来い、馬鹿野郎が。」
そう言って足を振り上げるヒュドラ。
くそッッッ……………
『破身ァ(インドラ)……ゴフッッッ………!!!』
体を硬化するも、衝撃は止まらない。腹部に強い衝撃を受け、吹き飛ぶゼーノス。
木にぶち当たるとメキメキっとくい込み、粉砕していく。
1本、2本、3本となぎ倒し、8本目で止まる。
「おー。 優秀だなぁ。 10本目指してたのになぁ……。」
まるで、飛んでいったボールを見るように目の上に手を当て、影をつくる。
ムクっと立ち上がるゼーノス。
殺す……。 力が足りない……。
『お前にも、俺様がひとつ教えてやる。 』
「ん? なんだい?」
おどけたように聞き返すヒュドラ。
ゼーノスは拳を握り何かを確かめる。
力が湧いてくるようだ……。
『身のこなしはいいが、余裕をこいていると、寝首をかかれるぞ。』
「へぇーー……。」
ヒュドラがそう言うと、地面を蹴りあげ、恐ろしいスピードで突っ込むゼーノス。
蹴りだろうが、拳だろうが避けて反撃を入れてやるか……。
どっちだ……?
すると、────
『破身ァ!!!』
コレは……どっちでもない!!!
「マジかよッ────?!」
……タックル!?!!!
『オアアアアアアッッッ!!!』
「チッ………ク…ソ…………ッッッ!!」
蹴りで、反撃するもゼーノスのタックルの威力を殺しきれず、吹き飛ぶ。
木にぶち当たりメキメキっと体がくい込み、粉砕する。
1本、2本、3………。
「グッ…………オラァ!!!!」
地面に無理やり足を突き刺し、威力を殺す。
この野郎……。いい攻撃するじゃねぇか……。
『2本か……。 あと、6本……』
なんだ……?
急に力が湧いてくる……
ニヤリと笑うゼーノス。 目の周りのウロコがピキピキと動き、広がりを見せる。
ニヤリと笑うゼーノスを見て、ヒュドラも怒りを見せる。
あと、6だァ……????
「調子のンなよ……?」
そう言うと、瞬間移動のような速さでゼーノスの横に移動するヒュドラ。赤い目の光が残像のように走る。
『…ッッッ!! 破身!!!』
「……喰らっとけ!!!」
咄嗟に発動するも、防御の構えは取れず、胸に蹴りをぶち込まれるぜーノス。
先ほどとは違う方向に飛ばされ、新しい気をなぎ倒していく。
1本、2本、3本……
また、8本目で止まる。
「ケッ……。 硬ぇ体しやがって……」
今のは本気で蹴ったんだぞ……。
『フーッ……フーッ……フーッ……』
ゼーノスの目の周りの鱗がペキペキと音をたてて、共鳴するようにジャリジャリとした擦り合わせたような音を立てる。
『楽しいなぁ……? おいぃ?』
「あらら?」
あまり宜しくない状況だな……。
体の侵食が早い。 それ以上やると勝手に死ぬが……
ヒュドラは初めて汗を流す。
コイツが、侵食で死ぬ……。
それまで、この体で耐えられるか……?
すると────
後ろから首を掴まれるヒュドラ。
さっきまで、そこに居たゼーノスが居ないっ!
メキメキと首に指がくい込む。
「てめ…………ッッッ!!!」
いつの間に……!?!
『フゴォォォォォォ!!!!』
力任せにヒュドラを投げるゼーノス。
無理やり過ぎんぞ!!!!
「うおおおおおおっ……ッッッ!」
またもや、木に衝突しメキメキっと粉砕していくヒュドラ。
1本、2本と粉を巻き上げ、貫いていく。
ここで、踏ん張ってやら……
そう考えたところで、悪寒が走る。
スッと現れる大きな影……。
「ああ? この野郎……」
『ガガギギゴゴ……』
飛ばされながら見た光景は、目の視点がずれ、侵食がさらに進んだゼーノス。
力に溺れたな……コイツ……。
「ゴハッッッッ!!!!!!」
全身に強烈な衝撃。 瞬間的に4発を食らうヒュドラ。
まずいッッ!! リサードの体が壊れるッッ!!
────ズキッ
3本、4本、5本と記録を伸ばし、遂に……
『ハちホん……ダァ……』
だが、まだ終わらない。
9本、10本……。 終わりが迎えたのは15本の所だった。
「ガハッッッッッッ……」
目を開けると、真っ赤な水たまりが出来ている。
全部リサードの血だとわかるのに時間はそうかからなかった。
────ズキズキッ
頭がいてぇ……
なんだ……? 血が足りてねぇのか……?
────ズキズキズキッ
コレはッッッ……
(ヒュドラ……早く俺を使え……)
「リサード……!!!」
『ググゲゲブブ……?!?!』
「チッ…………!!!」
突っ込んでくるゼーノスを飛んでかわすヒュドラ。
しかし、────
────グリンッッ
目だけが真上を追い、ヒュドラを視界から逃がさない。
そして、────
「ゴフッッッ…………!!!」
腕が曲がらない方向に曲がり、めちゃくちゃなパンチを放つゼーノス。
体の支配が効いてねぇなコイツ……
(お前が言ったんだろ……? 早く力を使えよ……俺を同化してしまえばもっと楽になるだろ?)
「ああッッ???!」
確かに、リサードの自我を俺と同化すれば倒せるかもしれねぇ。
だが、もしどうかに失敗すればコイツと同じく破滅の方向へ向かうだけだ……!
「もし、失敗したら俺とお前は死ぬぜ?! 発動する側の俺は血液だけでも生きてまた違う宿主を探すことだって出来るが、お前……」
そういった所で頭の中に不可解な映像が流れる。
9本の首を持つ龍と、白い鎧を着た戦士……
コレは……俺の記憶……
そこでハッと気づく、────
奴の能力の術中にハマりかけていることを……!!!
急いで、太ももにアビスを刺すヒュドラ。
「クッっおおおおおおおおおお!!!!」
激しい痛みと共に、空が映る。
上に飛ばされたのか……俺は……
すると、────
『グギュグギュギュ……』
目の前に、めちゃくちゃになったゼーノスが現れる。
目は、カメレオンのように動き、体は黄色とシマシマの鱗で覆われ、尻尾が生えてきている。
「お前もこうなんだぞ……リサード……」
『オバッッッ!!!』
両腕をガッチリと組み、その拳を振り下ろすゼーノス。
激しい衝撃。 もはや視界は役に立たないほど朦朧としている。
(構わない……。 クロエを守れるのなら……)
地面まで叩きつけられ、大きなクレーターが出来る。
降りてきたゼーノスがヒュドラを見下ろす。
「……そう……かい。」
ヒュドラはそれだけ呟いた。
じゃあ、いくぜ…………………………。
(ああ。)
その時だった────
「やめなさいッッッ!!!!!」
「────?!」
『ジグガガゴ……?』
その声は全てを止めた。
(……………クロ……………エ……………)
「これ以上、リサード君の体を傷つけるなら……。私が相手になります!!!!!!!」
「やめろ……嬢ちゃん。 お前じゃ……無理……だ……。」
ヒュドラがそう呟く。
(早くしろ!!! 同化してくれ!!! そうすれば、本気の力で戦えるんだろ!!!早くしろ!!!)
「今……やってる……が……」
そんな早くできねぇ……急げば失敗するのは目に見えてる……!!
ヒュドラの頭痛がさらに酷くなる。
────ズキズキズキズキズキズキズキズキッ!!!!!!!
『ググギギアアアッッッ!!!』
「ヒュドラさん。 リサード君の体で早く逃げてください。 ここは私が……」
そこで口を開くヒュドラ。
「お前……死ぬ気か……?」
(やめろ……やめてくれ……!クロエ!! お願いだ!! 死ぬな!死ぬんじゃねぇぞッッッ!!!)
「私はリサード君に何度も救ってもらいました。 本当はもっと前に死んでいたんです。 むしろ、長生きできました。 リサード君を庇って死ねるなら本望です……。」
「そう……か……よ。」
(何納得してやがる!!!ヒュドラァァァ!!!!どけ!!動け!!! ふざけんじゃねぇ!!!殺すぞ!!!どけどけどけどけどけ!!!!)
────ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキッ!!!!!!!
「カハッッッ……!!!」
暴れんじゃねぇよ、リサード……。
俺だって動けたら動いてんぜ……
『コブブ………………?』
そう言って、手を振りあげるゼーノス。
手まで侵食が進み、鋭い爪がキラリと光る。
「リサード君……」
(やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ)
「本音を言うなら死にたくない……。 あなたのそばにいたい……」
(やめてくれ、頼む!!! やめてくれやめ……………)
【「リサード君が……スキです……。」】
(クロエーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
────ブシュッ……
血飛沫の音……
(あ…………ああ……………)
ヒュドラとリサードの視界はしぶきをあげる血に、染められ、もう何も見えず、リサードの中でなにかが弾けた……
────────────────────────────────
?!?!?!?!?!?!




