32話 俺の決めた道
続きです! どうぞ!!
どこを見上げても真っ暗な世界。
床までも暗闇に覆われたここは、意識の世界だ。 リサードとヒュドラしか入れず、時間の経過が著しく遅く、外の世界では一瞬で対話できてしまう……
いや、正確に言うとこの説明は的確ではない。脳の思考回路の中での対話、人間が決断を下す時、頭の中での最終決定をくだす場。
そのため、脊髄反射以外の場合のみ使われ、行われる脳の中、意識の中で行われる会議の場所を使っている。
要は、時間の流れが遅いと言うより、外の世界より''速すぎる''と言った方が適切だろう。
そして、その世界にリサードはいた。以外にも涙などはなく、ただただそこに居た。
「おい……リサード……聞いてるか?」
ヒュドラと呼ばれる、伝説の魔獣。 ヒュドラもまた、リサードの精神に住み着き、リサードと瓜二つの見た目でそこに居た。
「もう一度だけ言うぜ、この世界もタイムリミットってのが存在する。ダラダラお話って訳にもいかねぇ。」
「…………………………………。」
心ここに在らずと言った顔で、何も言わないリサードに対しため息をつく。
それを見て「そうかい……。」と言うと、話し始めようとするヒュドラ。
「リサード。 クロエはわかるか?? わかるよな……?」
クロ…………エ…………………………
リサードの体がピクッと反応を見せる。
「安心しろ。 クロエなら心配いらねぇ。 クロエは……」
そういったところで、リサードがヒュドラの前に立ちはだかるように立つ。
「……リサード……? ……………ッッッ!」
すると、突然首に手をかけるリサード。
その顔には怒りが浮かんでいる。
「うるせぇ……その話をやめろ…………」
「………………………………………。」
ヒュドラはそっとリサードの手に触れる。
「……そうだな……。 ……悪かった。 」
「………………………………。」
リサードの手の力がすっと抜け、手がぶら下がる。
俺は……
すると、ヒュドラは「先にいうことがあったな……。」と話し始める。
「俺は、お前に偉そうなことを言ったわりには、このザマだ。 1人じゃ何も出来ない……それは俺自身だった。 挙句、守る対象のクロエの嬢ちゃんに助けられるなんてな。はっきりいって舐めてたんだ、ゼーノスも俺自身の力も…… 本当にすまない。」
そう言って頭を下げるヒュドラ。
その光景に驚きを隠せないリサードだが、怒りは消えなかった。
「………………謝られてもクロエは……」
リサードがそう言うと、ヒュドラは口を開く。
「彼女は無事だ。」
「────?!」
なん……だって……
「本当か……?」
「ああ……。 なんなら、お前の目で見てこい。 目をそらさずな。」
一気に体の力が抜けるリサード。だが、ヘタリ込みはせず踏ん張りながらも立っていた。
そして、リサードは口を開く。
「俺も、悪かった……。」
「……なんでお前が謝る必要がある。 」
リサードは顔を手で抑え、苦しそうな顔を覗かせた。
「お前に頼ってばかりだった。 昔から……。 それに、今回のことに関しては全部丸投げしておいて、お前を責めた。」
それを聞いて、後ろを向くヒュドラ。
「そんな事か……。それはお前をたぶらかして、単に俺が暴れたかっただ……」
すると、リサードが途中で話し出す。
「でも……」
「……………………??」
「……でも、それもあっただろうけど……あの言葉は本当だった……」
「……………………………………。」
それを聞くと、ヒュドラも振り向き、リサードと目が合う。
「俺は結局自己中になってたんだ……。 守れる気になっていた。 例え暴れる目的だったとしても、あの時お前に体を渡さなかったら、みんな死んでいたんだ。 むしろお前に、感謝しなくちゃいけない……。 なのに、俺は……。」
「…………………………………。」
リサードはそう言って俯くが、ヒュドラはそんなリサードを真剣な眼差しで見ていた。
「一番ムカつくのは……何も出来ない俺自身なんだ……。」
「……………………………。」
俺がもっと強かったら……、俺が甘えなければ……、俺がヒュドラより強ければ……、俺が……俺が……
俺が…………
その時、ヒュドラが突然ある話を始める。
「その昔な。あるところにある魔獣がいた……。 その魔獣はただ強くあること、そして自由を求めてこの世界を手に入れようとした……」
「………………………???」
リサードはいきなり何のことだ……?と不思議に思うが、ヒュドラは気にせず続けた。
リサードは疑問を口に出すことはせず、それに耳を傾けた。
「……そして、その魔獣は目に付くものを喰らい、敵を殺しては大陸を移動し、とうとう世界を征服する1歩というところまでいったのさ。 ……だけど、ある時その怪物の前には7人の賢者が現れた。」
7人の……賢者……。
「…………………………。」
リサードは7人の賢者の話を思い出す。
「その魔獣は激闘の末、7人の賢者に敗れた……。 下等だと決めつけていた人間に負けたんだ……。 だが、魔獣は人間に対してある復讐を思いついた。 ……それは、残酷で許されることじゃあなかったがな。」
「…復讐…………………………??」
リサードがそうポツリと呟くとヒュドラは頷く。
「……それは、人間に魔獣を与え、自分の支配下に置き、『魔兵』と名付け、そいつらに自分の復讐をさせようとしたのさ……。 」
魔兵……だと……
リサードは非常に酷似した話を知っている。
今や誰でも知っている話しだ。 魔獣を食べてはいけないという元になったもの。 魔獣の肉は人間を狂わせてしまう。
昔、魔獣の肉を食べていた村と国が戦争になり、多くの被害者が出てしまうという事件が起こった。きっと、その事件の事なのだろう……。
しかし、何故その話を今……? そして、なぜヒュドラはその話を見ていたかのように……?
「……7人の賢者が消えるのを待つと魔獣は、ある村を貧困に陥れ、魔獣の肉を食わざるを得ない状況を作り出した。 計画は上手く行き、国も本格的に動き出さなければいけない状況になった……。 しかし、ここである誤算が生じる。」
「……誤算……?」
リサードは、記憶を探るように話すヒュドラにそう問いかけた。
「ああ……。 それは、『魔兵』の中に、自分の意思を持ち、尚且つ強大な力を持って行動する『魔人』と呼ばれる者達が現れたことだ。 魔人の中には、国の味方をするもの、魔獣側につくもの、第三勢力として行動する3つのグループに分かれた。 そのせいで戦況は大きく分かれ、国についた魔人たちが勝利し魔獣側だった魔人は殺され、魔兵も死んだ……。 そして、等々、自分が生み出した『魔人』達に、その魔獣すらも殺られた……。 下等だと決めつけた人間に2度もやられ、復讐のための『魔人』にトドメを刺されたのさ。 これで、魔獣は何もかも終わったんだがな……。 強力な力を持つ『魔人』の第三勢力グループはある独自の結社を作り、人間も殺し、魔獣も殺す、自然の摂理なんてものは我知らずといった様に好き放題やらかすようになった。 国側の魔人はそれをよしとせず、争ったんだが、生き残りはまだ何かを企んで細々と、生きながらえている……。」
そう言うと、何か意を決したようにリサードを見つめる。
「 ……ところでよぉ、昔俺に目的を聞いてきたことがあったなリサード……。 」
「……………………ッッッ?!」
この話の流れで目的……?
強く嫌な予感に襲われるリサード。 まさか……。
「俺の目的は……''自ら''生み出してしまった『魔人』の殲滅だ……」
「…………お前は……。」
じゃあ、あの話は全てヒュドラが……
そして、あの魔人の事件を起こしたのは……
その時、リサードの目には激しい怒りの炎が灯った。
「……お前は何したかわかってんのかッッッ!!!」
胸ぐらを掴みあげるリサード。 淡々と話すヒュドラに怒りが爆発したのだ。
しかし、ヒュドラはまた淡々と続ける。
「知っているさ……。 俺がしたことも、それが今とんでもない問題を起こすってこともな……。」
「…………知ってるならなんでそんなに淡々としてられる!!言ってみろ!!」
リサードは怒りに身を任せ、声を荒らげる。
「だがな────」
ヒュドラはリサードの腕をはらうと、真剣に語った。
「俺が今になって、いくら昔を嘆いても、過去は変えられねぇ。 だが、せめて自分の犯した罪と向き合おうと、俺は、そのためにお前の中に住み込んだ……。 賭けだったけどな。 俺の血は生命力の塊だ。 年月が過ぎ、俺の血はウォマーと言う鍛冶屋にたどり着いて、そしてお前の首飾りになった。 女王との戦いで割れた首飾りから、お前の傷口に入り込んでな。 俺とお前の相性が悪ければ、とっくにお前の自我はあそこで消えていた。そして、『魔兵』となってその体で、奴らを突き止めるつもりだった。 けどお前は、こうして俺と共存できている。 殆どが壊れてしまうのに……だ。 ましてや、俺の血なんてのは魔力が濃いからな、耐えられるはずなんて無いと思っていた……」
リサードは、それを聞いて自分の中にヒュドラが初めて現れた時を思い出していた。
「……やっぱりあの時だったのか……。」
女王との戦いの時、首飾りが壊れた。 中に入っていた血から体内に入ったとしか俺とヒュドラの関係性は無いからな……。
すると、ヒュドラは続ける。
「だから、今こうして話しているのが奇跡みたいなもんだ。 お前には悪くも、俺には運が良かったってことだ……。 だが……」
そういうと、後ろを向いて肩を軽く鳴らすヒュドラ。
「あの、ゼーノスとやら。 どうやら『魔人』になりかけだ。 魔人はとてつもなく強い、舐めてかかると二の舞だからな。 俺も最大の力で迎え撃つ。 もちろん、お前の体には負担をかけない。 今までありがとな……。こんなクソみたいな魔獣に力を貸してくれて。 今日でお前は解放だ。 剣士だって、クロエを助けたあと引退するなり、何なり好きに生きろ。 お前はお人好しだからな……流されるんじゃねぇぞ……」
「ヒュドラ……死ぬつもりか……? 魔人はどうするんだ……?」
「……死ぬつもりはねぇ……。 また力を蓄えて、再度挑戦するぜ……」
ヒュドラは背を向けたままそう言うと、歩き出す。
だが、リサードにはハッキリとわかった……
……ヒュドラは一つだけ嘘をついている。
奴は今回死ぬつもりだ。 ゼーノスを倒して……
リサードにはそれがわかってしまった。
何せ一心同体だからな……
「ははッッ……」
リサードは軽く笑った。
これで妙な運命から解き放たれる。 剣士を引退して静かに平穏に暮らせるんだろうか……
不気味だったヒュドラが居なくなる上、最後俺たちを助けて消えるなんて最高だ。
願ったり叶ったりじゃねぇか……
だけど、何なんだよ……
この釈然としねぇ気持ちは……
「……最後に一ついいか?」
「あ……?」
そう言って足を止めるヒュドラ。
そして、リサードから衝撃の言葉が言い放たれる。
【「……俺に魔人の素質はあると思うか……?」 】
な……な……
その瞬間ヒュドラに戦慄が走った。
「────?! お前……何言って……ッッッ!!」
そういってヒュドラに近づくリサード。
「まさか……リサード。 お前馬鹿な事考えてんじゃねぇぞ!!! 俺の話聞いてたのか?! 魔人は……」
「全部聞いてたよ……。」
ヒュドラの言葉を遮り、どんどん距離を詰めていくリサード。
「ッッッ………………だったら!!」
「……お前は逃げようてしてんだ。」
「はぁ……?」
「お前は、俺たちを助けて死ぬことによって罪が消えるとでも思ってんのか? いいや? 消えないね。 お前が残した魔人共は今も悪巧みしてる。 1人や2人魔人を倒したくらいじゃお前の罪は消えないんだ。 だから、お前にここで死ぬ権利なんかないんだよ。」
そう言い終わると、リサードはヒュドラの目の前にたどり着いていた。
それを聞き、ヒュドラはかつて見せたことのないほど驚いた表情を見せていた。
「だからって、お前が魔人になるのは理由になってねぇだろうが!! 魔人が増えるだけで、自体はなんにも変わらねぇだろ!!! 」
「本当にそう思ってるのか?」
「何が言いてぇ……。」
「お前は、罪滅ぼしがしたいんじゃない。」
リサードはかつてヒュドラが向けてきた視線と同じような、ゾッとする視線を送る。
リサード……お前……
【「お前は、罪滅ぼしをしている自分が欲しかっただけだ。」】
「ッッッ………………………!!!」
ヒュドラは初めてだった。
かつて7人の賢者と戦った時、魔人と戦った時でさえ恐怖しなかった魔獣は、初めて恐怖を覚えた。
喰われるのか……? 俺が……?
「本来なら俺は一度死んでる。 女王の時だ。 だけど、俺はお前に助けられて生還した。 俺はお前に借りがあるのさ……。」
だがそう言い放つリサードの目は、恐ろしく冷たい。
「俺は流されやすい。 だけど、これだけは俺が自分の意思で決めたことだ……」
「………お前…………。」
立ち尽くすヒュドラ。
リサードの手が肩を掴む。
「この命も一緒に賭けてやる。 俺が……」
背負ってやる……
「お前の罪も一緒に喰ってやる」
そう言って、リサードはヒュドラの首筋に歯を立てる。
トマトが潰れるようなグジュッとした音を立て、血が流れる。
「…………リサード………俺は…………………。」
そう言おうとしたが、体は動かなかった。
ヒュドラは涙を流す。
しかし、走る痛みに嫌悪はなく、むしろそれを受け入れていた。 喰われることに対し、喜びすら感じていた。
これで……
俺とお前は共犯だ……
ヒュドラの心がすっと軽くなり、体が蒸発するように熱を発する。
ありがとな……
リサードから聞こえる咀嚼音の中、ヒュドラの意識は消えていった。
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私は結構後書き書くほうなのですが、いろんな人のを読んでいたら書かない方がいいような気もしまして……
後書きをやめた方がいいかな、と思ったので書いたり書かなかったりしようと思ってます。 もし、書いた方がいいのでは? 書かなくてもいいよ、などありましたら優しい方、感想書いてあげようって思った時それも教えてください。宜しくお願いします。




