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11話 覚醒

1日に2個連続投稿です。

休みだったので沢山かけました。



あっという間に霧がこくなっていく。そんな中不気味な女の様な声が聞こえた。正確に言えば、マダムの様なねっとりした喋り方でありながら、女にしては野太い声。


「誰だ!!」


そう言うと、シロが答える。


『この森のボスだよ。』


リサードは耳を疑った。


「なんだと?阿修羅エイプは倒したぞ。」


『僕昔、クワトロエイプの友達がいたんだ…』


シロは静かに語りかける。


『彼も小さくて仲間はずれだったんだけど、気があって仲良くなったんだ。その子から聞いたことがあるんだ。』


ポツリポツリと視線を動かさず話しかけるシロ。その声を逃すまいと必死に感覚を研ぎ澄ますリサード。


『この森を仕切ってるのは阿修羅エイプだけど。阿修羅エイプ立ちを率いているのは…エイプクイーンという魔獣。』


『通称、魅惑の女王。』


そこまで言った時、霧の中に大きな影が現れる。体調8mはあるだろうか。ざっと見ても阿修羅エイプの2倍はある。横幅も倍近くあるその影から奴は現れた。


『犬ころがよく知ってるわねぇ♡』


ドシンドシンと地響きを立てながら歩く。


『バブルスがやられちゃったナンてぇ。可愛そう♡あなたはダメねぇ。』


そう言って死んでいる阿修羅エイプを撫でる。


紫色の体毛をもち、大きな唇。顔はシワが多く垂れ下がっており、見ていてとても不快だ。腕は2本だが、クワトロエイプや阿修羅エイプ達の誰よりも強いことがわかる。

不意に女王はニィっと唇をあげると驚くべき行動に出る。


グチャ…クチャクチャ…


「な、何してやがる。。」


そう言うとグラァっと阿修羅エイプに向いていた体をあげ、こちらを向く。


『何って、食べてるのぉ。この子は馬鹿だけどアタシのためなら何でもしてくれたの…』


そして、女王は不気味な笑みを浮かべる。


『でも、弱いオスは要らないわ♡せいぜい私の食事にしてあげてるの♡』


リサードは恐怖していた。彼自身魔獣の捕食現場など腐るほど見てきた。

彼らは魔獣を食べることによってさらに戦闘力を増す。

今更魔獣が魔獣を食べていようと何ら驚かない。

しかし、彼はこんなにも残酷と感じる捕食を見たことは無い。阿修羅エイプの生首をズルっと引き抜き死顔を見てニヤケ、ペロペロと舐めては食い散らかす。

そして何より、女王の知能の高さだ。

リサードは人間の言葉で話している。しかし、本来この言語は魔獣には伝わらず、リサード自身の魔獣化によって感覚として伝えられている。そのため、リサードも魔獣の意思がわかるのだが…


まるで、コイツは人間。言葉を理解しているような口ぶり…

今までの魔獣とは違う確かな自意識と思考…

魔獣では考えられない、仲間を弄ぶような行為。

人の言葉を理解するモンスターをハースハイトではこう呼ばれている。


「危険度S…」


リサードはそう口にしていた。すると、女王は瞬間移動の勢いでリサードの前まで来ていた。

恐怖で動けない。

巨大な体躯を屈め、リサードの顔を凝視する。口が目の前にあり、血なまぐさい口臭がかかる。


『アナタぁ…人間でしょ?』


そう言いながら、舌で阿修羅エイプの頭部だったものをコロコロ転がす。


『魔獣の匂いがプンプンするのはあ、その装備のせいかしら?でも、それだけじゃなさそうネ♡それにそこの犬ころも何だか不思議な匂いがするわ♡』


そう言うとクンクンと匂いを嗅ぎ、『んフゥ』と笑う女王。


「何だか不思議な首飾りねぇ♡アタシこういう綺麗なものに目がないのよぅ♡」


怖い…怖い…怖い怖い怖い怖い…


「あ…あ…ああ…」


体が動かない。

阿修羅エイプに締め付けられた時の方が動けていた。足はガタガタと悲鳴をあげ、口を開くことが出来ない。


『何でそんなに怖がってるのかしらァ?♡私の美貌にやられてしまったのかしらァ?♡』


吐息が顔にかかる。殺される。殺されてしまう。まとわりつく殺気から逃げられない。


『両方とも気に入ったわぁ♡私のコレクションにして上げる♡噛み砕いて生首だけ飾ったら面白そうネ』


大きな口を開き、リサードに迫る。


その光景をリサードは見ていた。

大方予想はついていた。恐らくこれがこの防具のバッドステータス、恐怖。ここに来て、発動してしまった。

もしかしたらずっと発動していたのかもしれない。ただ、クイーンエイプを見て、強い恐怖を感じた瞬間その恐怖がどんどん膨らんでいくのがわかった。


わかってしまったのだ。今の状態では勝てない、と。


指先まで震え、まるで自分の体ではないような感覚の中、さらに恐怖に飲み込まれていく。

阿修羅エイプに握られた凄まじい激痛がまだ体を走るがもはやどうでもいい。

恐怖のバッドステータスは知っていたのに、対策すらねらず阿修羅エイプに立ち向かいクイーンを呼んだのは俺だ。


いや、それもいいわけに過ぎないだろう。バッドステータスが無くても動けなかったかもしれないのだから…


シロ…俺を置いて逃げてくれ。


シルビア…こんな別れ方でゴメンな。


ウォマーさん。リズ。七星剣のみんな。


そして、クロ…なんだか不思議なやつだった。また会えるかなんて聞いておいて俺が先にいなくなるなんて…

最後にもう1回話したかったよ…


ふと首に痛みを感じる。ああ、首飾りの破片か。阿修羅エイプに握りしめられた時に割れて刺さっていたのだろう。伝説の魔獣の血が全部こぼれている。

ああ、もったいねぇな。

傷口がズキズキ痛む。

これで終わろう。目をつぶった時リサードの内側から声が聞こえた。


『お前。素質あるぜ?』


体に熱が走る。


『リサードから離れろ!!』


女王の顔面に空気法が炸裂する。

だが、全く効いていない。しかし、シロの攻撃は絶大な効果があった。


『犬コロぉ…』


女王の顔がどんどん歪んでいく。


『アタシの顔によくもぉぉぉぉ…』


女王はわなわなと怒りに震える。


『リサード!今のうちだよ!』


しかし、リサードは動かない。


シロは考えていた。あからさまにリサードの様子がおかしい。声が届いていない。

まるで抜け殻のようになってしまっている。

なぜ、動かない。しかし、今考えている時間はない。


いずれにせよ、ここは僕が何とかするしかない!

そして、シロは更に行動に出る。


ギュルギュル…


口にあらん限りの感覚を研ぎ澄ませ、風を集める。


まだ…まだだ……


(僕がリサードを助けなくっちゃ…)


ギュルルルルルルルッ…


口周りがカマイタチのような風に切れていくが風を止めない。むしろもっと加速させる。


『このクソ犬ぅ!!!!』


今だッ!


女王が走り出してからでは、当たらない。しかし、女王が怒りに震え、走り出そうとしたその瞬間ならば当てられる。


ギュゴゴゴゴゴゴゴゴ


放つ!


『ぎゃあァァァァァァァァァァァァァ』


恐ろしく回転したカマイタチは女王の顔に命中した。

それも先程とは比べ物にならない威力。シロも自分自身この威力を出せたことに驚く。

威力配分を間違えてしまったのだろうか。近距離にいたリサードにも多少の傷が出来てしまうが、死ぬよりマシなはずだと自分に言い聞かせるシロ。


『アタシの顔から…血が…あァアァアァアァ????』


『全員殺してやるぅ!!』


狂気に揺れる女王、クイーンエイプ。


すると、どこからか音も無く現れたクワトロエイプ達が集まってくる。


『クイーん、落ちつぃテクダサい』


それに続くように、数体の阿修羅エイプまでも集まってくる。


(やっぱり。阿修羅エイプは1匹じゃなかった。)


『うるさいわよ!役立たず共!』


そう言うと、腕をひと振りしクワトロエイプを八つ裂きにする。


他のクワトロエイプ達はギャアギャアと騒ぎ、中には逃げ出そうとする奴もいたが、狂った女王に殺されていく。

そして、それは阿修羅エイプも例外ではない。女王に抉られ、死に絶えていく。


『アタシの顔までこんなにされて、なんでこう上手くいかない!!』


女王はさらに叫ぶ。


『昨日も私の大事なコレクションを盗んだ人間を殺し損ねたしィィィ!!』


シロは考えていた。もっと怒れ。と…

冷静になってしまえば恐らく、勝ち目は万に一つもない。

クワトロエイプや阿修羅エイプの統率が取れていない今。

キレて暴れるだけの方がリサードから注意を逸らし、逃げ切れる可能性がある。


しかし、女王は狂ったように暴れていたかと思えば、突然フゥッとため息をつく。


『まぁ、あのローブ女。重傷は負わせたし、今頃私のかわい子ちゃん達に殺されてるはず。クッヒッヒッ、犬ころも臆病人間も、あのクソ女も私の栄養にすれば問題ないわぁ♡』


リサードがピクッと動いた気がした。


『怒り過ぎてもお肌に悪いしネ♡』


これはまずい。冷静さを取り戻させてしまった。


(とにかくもう一度顔に…)


シロが口を開いた瞬間。


視界が真っ暗になる。

コレは…巨大な影?


『2度目はないわァ…』


殺意のこもった目をした女王がもう腕を振りかぶっていた。


ああ、ダメだったのか…


シロは覚悟を決めた。


『ゴメン…リサード…』


そう言って目を瞑る。


バッコォォォォンと腕が振り下ろされ、地面が盛り上がる。


だが、シロの目にはリサードが映っていた。


(これは夢だろうか。リサードの手の中にゆられ…………………………ん?)


途中で気づく。これは夢ではない。


現実だと。


『リサード大丈…』


女王よりが振り下ろすよりも早くシロを抱き走り抜けたリサード。

動けるようになったんだね。と声をかけようとした


その刹那────


強烈な怒り。


シロは口を閉じる。いつものリサードではない。初めて見た顔をしていた。


「シロ。ゴメンよ。もう大丈夫だ。」


『リサード…でも、…』


「静かにしてろ。」


そう言うと、そっとシロを地面におろす。


『アラアラアラァ。臆病者にまで邪魔されちゃうのねぇアタシわぁぁああ!』


「お前…」


『あ?』


女王は首を傾げる。


『アンタホントにさっきの人間かしら?随分雰囲気が違うわネ。』


「ローブの女がどうとか言ってたな?」


そう言われ、得意げな顔をする女王。


『アァ、何かアタシのコレクションを返せとか言ってきたクソやろうネ。もちろん殺してやろうと思ったわ♡』


おェッ…


そう言うと口に手を突っ込み何かを吐き出した。


『…でも、このペンダントを奪ったから生きてたらまた私の所に来るわねぇ…何せこれを取られた時の表情と言ったら…』


下を向いて口を抑える女王。


『クックック。馬鹿らしい思わない?叔父様から貰った者だとか、大事な人に拾って貰った、だとかギャアギャア騒いで、終いには泣いて…』


『知るわけないんだよバーカ!あんな小娘には勿体ないもの♡アタシの方が似合うでしょ?アンタもここで降りとけばそこまでしないわよ♡私、男には優しいの♡ネェ…』


「わかった。」


ずっと下を向いて話を聞いていたリサードから声がした。


『話がわかる男ってステキよォ。下等生物である人間でも貴方なら愛してあげても…「もういい…」』


『ん…?♡』


首を傾げる女王。


「お前は……」


リサードが顔を上げ、女王は目が合う。



その瞬間、場にいるすべての魔獣は硬直した。そして、それは女王も例外ではなかった。



女王は驚愕した。


この男…何かヤバイわ…


シロも感じていた。この気配、リサードじゃない。



白髪の男はフッと笑い不気味な笑みでこう言った。



「俺が殺してやるよ。」



そう言うと白髪の男は、紅い目を女王に向けた。



───────────────────────













チョコチョコ前の話を編集しています。細かいところまで見ていないとわかりずらいですが、リサードは普段は、青よりの黒目ですし、首飾りはウォマーさんにお守りとして、渡されていたものです。忘れていたら戻ってみてください。

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