6月18日のこと
深夜、零時。
丁度時計の短針が十二時を差した頃。
夕食の時にはまだ緑だったが、16日の夜に見た「パセリ」を彷彿とする「セリ」の姿を確認に向かう。
すると、そこには17日早朝に見た「パセリ」と似たような……
「セリ」の蛹の下が、透けて見えた。
黒い輪郭。
点線のように規則的に並んだ黄色。
そして蛹の皮が浮いてきているのか……鈍く下の色を透かしながら、半透明の「皮」が認識できる。
これは…………もう、いつ羽化してもおかしくないのでは。
脳裏によみがえるのは、17日の朝の事。
「パセリ」の羽化を見逃して残念に思った気持。
それどころか姿を見失い、そのまま仕事に向かわねばならない焦りと不安。
色々と複雑です。
あの失敗は、繰り返したくないな……。
幸い、と言っていいのか何なのか。
しっかりと虫かごに体を固定することに「セリ」は成功している。
蛹ポケットは必要ないかと思ったので、今でも「セリ」は虫かごの中。
羽化するのに虫かごは狭いかも?と心配もしていたが、「パセリ(完全体)」の姿を思い出すに……なんとなく、いけそうな気がする!
という訳で、「セリ」には虫かごの中でオトナになってもらおうと思う。
空に解き放つときには、虫かごを開けるだけ。
ああ、なんてお手軽……!
ただ、「パセリ」とは違う状況下、ということになる。
これはこれでちゃんと羽化できるのかが心配だ。
虫かごは相変わらず食卓の上に安置していた。
だけど私と同じく蛹の行方を見守っていた両親は、いない。
私は遠慮なく虫かごを自室に連れ込んだ。
元々一晩、蛹を観察しようとは思っていた。
だけど食卓に座して、一晩待つのは辛すぎる。
寒いし、いつまでかかるとも知れない待ち時間を過ごすには……ということで。
いつ羽化するのかわからないけれど。
いつ寝落ちしても大丈夫なように、ベッド側の窓枠に虫かごを設置した。
元々はクローバーの小さな植木鉢を置いていた場所だ。
朝が来たら少し眩しいかもしれないが……
やっぱり、羽化という昆虫にとっての一大イベントを見逃したくないという気持ちが勝った。
自室に運ぶ途中、揺れが気になったのか「セリ」が動いた。
結構大きな身じろぎは、抗議なのかもしれない。
だけど君も数時間後には大空に解き放たれる予定だ。
今の不自由、少し我慢してもらおう。
深夜十二時半頃。
時々「セリ」がびくりと動く。
こうなるとますます目が離せない。
深夜十二時五十分頃。
「セリ」の動きがますます派手になり、動く間隔も短くなってきた。
動く度、これは……と目を寄せてしまう。
大きく動いた時には、何かにぶつかった訳でもないのに音がするほど。
生物の気配と、動くと聞こえる不思議な音。
こういう音を「カサッ」と表現するのだろうか?
だけど自分の耳になんと聞こえたのか、文字では上手く表現できない。
なんとも言えない、不思議な音。
17日の朝、「パセリ」が動くところは見なかった。
だけど「セリ」がこうも頻繁に動くと、否応なく臨場感が増していった。
深夜一時半頃。
時々大きく動くが、沈黙の時間もやってくる。
少しの間派手に動いていたかと思うと、全然動かなくなったりもする。
これは本当に徹夜かもしれない。
うとうとしそうな眠気眼で、しかし私は顔を洗う為に離れることも出来ない。
離れている間に羽化してしまったら、とても悔しいから。
眠気覚まし代わりに、濃い味の飴を齧った。
朝の五時頃。
夜が明け、明るくなってくる頃合い。
東からの光で、「セリ」の様子が良く見える。
東側の窓に置いて正解だった。
「セリ」の姿は全体的に下の黒い色が透けつつも、白っぽい。
蛹の皮と、中身との間に隙間が出来て内部の剥離が進んでいるらしい。
蛹のお尻の先は、虫かごの上部と接着している。
つまり、皮は天井に引っ張られ……だけど中身のお腹は重力に従い、少し離れて。
離れた皮の向こうが透ける。
イメージ的には、脱げかけたストッキングの先を引っ張った感じを連想した。
みっちりと、中身が膨らんでいる気がする。
蛹の皮は引き延ばされ、だけど腹の横に入った節は大きさが変わらないらしく……
くびれが発生して、まるでボンレスハムのようにメリハリが生まれていた。
長い時間このままでは苦しいのではないか。
ちゃんと蛹の皮を破れるのか。
心配なまま、見守り続ける。
そして、ついにとうとうその時が来た。
朝、八時五分頃。
折しも、昨日「パセリ」が羽化したものと推測される時間帯が近づいてきた頃合い。
「セリ」の蛹はパンパンに膨らんでいる。
そして「セリ」は蠢き、何度も何度も身をよじって大きな動きを見せていた。
それは無視できないほどで、やがてバリバリ……と、硬い音が聞こえてきた。
窓枠に置いた虫かごを、私はベッドに身を伏せて見上げている。
丁度、斜め下から全部が観察できるアングル。
上から見たのでは、虫かごの上部に「セリ」の体が半分隠れてしまうから。
この位置は「セリ」の全てを余さず見ることが出来る位置取りだった。
思えば私は、羽化を絶対に見たいと意固地になっていたのだろう。
もう自然の摂理に任せてしまえば良かったのに。
蛹を破り、小さな蝶が出てきた。
「セリ」だ。
まだ蝶というには頼りない姿で、出てきたばかりの姿は昨日捕獲した蝙蝠の、翼を畳んで小さくなった姿にどことなく似ている。
お尻が蛹から出ると、茶色い液体が虫かごの中に零れ落ちる。
「セリ」は虫かごの上部……網目状の格子部分に掴まり、ゆっくりと翅を広げようとして。
時は、まさにクライマックス。
そして事件を、私が起こしてしまった。
こういう肝心な時に、どうして人間はドジを踏むのだろう。
よく見ようと、前のめりに身を乗り出した私。
――の、額が。
虫かごにぶつかった。
尚、悪いことに。
虫かごの上部はこの時、被せていただけで。
バケツ部分にきちんとはめ込んでいなかった。
悔やんでも、時遅し。
慌てる私に自分の罪を見せつけるように。
咄嗟に虫かごを抑えた私の手の中から、零れ落ちたもの。
虫かごの上部は、バケツ部分から十㎝以上離れた場所にかっ飛ばされた。
内側に「セリ」をひっつかせたまま。
虫かごからは斜め前方。
私の、丁度真横に。
過激な動作で滑り落ちてくる虫かご(上部)。
不幸中の幸は、かっ飛ばされた上部がひっくり返ったこと。
決して良いことではないが、お椀のように「セリ」を受け止めてくれた。
お陰で、ベッドと本棚の隙間に「セリ」が落下する事態は免れた。
それで私の行いが、慰められるわけじゃないけれど。
私は「セリ」の無事を確認しようと手を伸ばす。
ほとんど黒い面を見せて、小さくしおしおの翅。
「セリ」のお尻から、茶色い液体が零れる。
私はもう悲鳴も上げられない。
「セリ」は伸ばした私の指にしがみ付いてきた。
この小さな体で、こんな大事な時に。
ああ、どんなに驚いたことだろう。
それでも生物の本能が、何を置いても動けと命ずるのだろうか。
何を置いても、翅を広げようとさせるのだろう。
虫かごをひっくり返した現状、その場で一番「高いところ」が私の指だった。
「セリ」の茶色い体液が私の指を濡らす。
だけど構うことなく、私は這い上がってくる「セリ」を手の上に迎えた。
私は動転していて、指を掲げるという単純な動作も思いつかず。
掌に「セリ」を囲おうとしてしまったが、「セリ」はより高いところを目指して這い上がる。
生物って、なんて逞しいんだろうか。
私も「セリ」の動きで、意図に気付いた。
慌てていたけれど、何よりも「何を」優先すべきかはわかっていた。
翅を広げさせてあげないといけない。
一刻も早く。
でないと、飛べなくなってしまう。
私は指を掲げて、「セリ」は背中をぶら下げた。
この時点で、時計は八時十分をさしていた。
濃い不安がある。
時間が経ちすぎてしまったのではないか。
「セリ」さんがお尻から零した、体液。
……翅を広げるための体液が、足りなくなったのではないか。
こんなことなら羽化の兆候を見た時点ではしゃいだりなどせず、もっと配慮してやればよかった。
後悔しても、もうどうにもならないのだけど。
ゆっくりと動かしながら、「セリ」が翅を伸ばす。
人間の指は震えて、掴まり辛いだろう。
それでも口を動かしながら、背を懸命に震わせた。
だけど。
三十分が経った。
「セリ」の翅は伸び、ぱっと広げられた姿は確かに蝶の形をしていた。
歪なところはない。
だけど、ちいさい。
「パセリ」の姿と比べると、一回りは確実に。
大きく広げた時、下側になる翅は十分に大きく見える。
でも、上側になる翅は……
十分に大きくなれなかったのだと、思った。
だって、下側の翅と同じくらいの大きさに見える。
広げた姿のバランスがおかしいという訳ではない。
ゆっくりと翅を動かす「セリ」は、だけど飛び立とうとはしなかった。
飛べなかったのだ、と。
そう思った。
私はまだ混乱していて。
そして最悪な状況を招いてしまったのだと。
それでも一縷の望みをかけて、外へ連れ出した。
時間はもう九時。
晴れた空の下は空気が温まり、蜜を求めて蜂が飛び回る。
咲き誇る花々が、季節の恵みを謳歌している。
そんな外の空気に触発されて、飛ばないか。
私は都合の良い希望を抱いて、「セリ」を連れ出す。
飛べさえすれば、蝶だもの。なんとかなる、はず。
外は小憎たらしいほどの快晴で。
「セリ」は飛ばなかった。
飛ぼうとも、しなかった。
私の余計なちょっかいが、「セリ」から自由とか青春とか、最たるもので空を奪ったのだと。
悔やんでも、悔やんでも。
時はもう戻せないのだけれど。
庭に咲き誇るカサブランカやパンジー、色とりどりの花に「セリ」を触れさせた。
だけど飛べない「セリ」を庭には放てない。
そんなことをすれば、すぐに捕食されてしまう。
「セリ」の蝶としての生き方を奪ってしまったのは私だから。
責任を取って、天寿を全うするまで養おうと思った。
まずはネットで蝶の飼育方法を調べよう。
きっとお腹も空いているから、急いでご飯を用意しよう。
外はきっといつだって恋しくなるだろうから。
可能な限り、毎日外に連れ出して散歩させてあげよう。
捕食者がいても、私が側についていれば命の心配はないだろうから。
……と、悲壮ぶってなんだかんだと書いていたのですが。
奇跡ってあるんですね、神様有難う。
我が家に神棚はないけど父の実家に行けば神棚どころか小さいながらも社殿がある(神社)ので、お盆の折にはお賽銭を投げてよくよく拝んでおこう。
18日分の日記を投稿する時、前書きに「残念な結果となりました。「セリ」さんの哀しい結果に抵抗のある方は読まない方が良いかもしれません」と書くべきか思案していたというのに。
それも全部、無駄になりました。
ああ、なんて嬉しいことでしょう。
なんだか悲壮感丸出しの文章を書いていたのが、「セリ」さんが食卓のミニ植木鉢の上に止まり木に留まったインコよろしく落ち着いて、ひと段落した九時半から十時頃の事。
「セリ」さんを眺めながら、ノートにシャーペンで律儀に書き込んでいましたとも。
そして、いま。
十一時過ぎの私はその時とはまるきり違う、喜びにあふれた心地でいます。
その理由も、此処に書きましょう。
ネットで飼育方法を調べた、のち。
おとなしくずっと植木鉢の止まり木(元蛹ポケットの割箸)に留まったままの「セリ」さんを、再度外に連れ出してあげようと思いまして。
全然動こうとしないセリさんの前に指を差し出せば、より高いところを目指して足をかけてくる。
ちょっと警戒して、翅を大きく広げていたけれど。
そんなセリさんを連れて、庭の花々を見た。
外の空気が気持ち良いのか、警戒に広げられていた翅も閉じられる。
庭をぶんぶん飛び回る蜂にぶつかりそうな時もあったが、日光浴をさせて。
それでも「セリ」はおとなしく私の指に掴まったまま。
この人、羽化してから全然動こうとしない。
だけど、家に入ろうとしたとき。
まさに玄関をくぐって、靴を脱いだ頃合いで。
急に「セリ」がバタついた。
家に入りたくないのだろうか、外が良いよね勿論。
……と、思ったら此方が何か反応する前に飛んだ。
飛んだ!?
え、「セリ」さん飛べた!?
驚く私。
セリさんは私の指から一直線に背後……明るい方向を目指したのだろう。
見事なUターンを決めて、玄関横の明り取りの磨りガラスに激突した。
「セリさぁぁぁああん!?」
悲鳴上げましたよ、もちろん。
バタつきながら、ばったばったと墜落した床の上で暴れる「セリ」。
まて、ちょっと待て。落ち着け!
私は大慌てだ。
だって、「セリ」さんが飛んだ!
飛べるなら、野に放てる!
飼い殺しにする必要はない。
「セリ」さんを大空に!
明るい光の下、ばったばったとバタつく「セリ」。
私は駆け寄り、「セリ」さんを捕まえようとする。
それまでの癖で、ついうっかり指に乗せて持ち上げたのだけど。
うっかりしていました。
「セリ」が飛べるなら、その持ち方は致命的だ!
案の定、「セリ」は再び飛ぼうとして磨りガラスに激突した。
私は更に慌てながら、「セリ」さんに掴みかかる。
これ以上暴れて、ガラスにぶつかって。
翅がボロボロになってしまったら元も子もない!
蝶の正しい持ち方は、翅を二枚そろえてつまむこと。
もう破きそうで怖いとか、そんな甘えを抜かす段じゃない。
というか、この時の私には殺しちゃいそうという忌避感が吹っ飛んでいた。
まさにそれどころではなかったので。
久々に触った蝶の翅は、昔と変わらずベルベットの触り心地だった。
手にキラキラした鱗粉がついても構わない。
私は足をバタバタさせる「セリ」さんを連れて、再び玄関をくぐった。
もう一度外に出る為に。
外に出した「セリ」を、ここなら全方位どこに飛んでも問題なかろうと指の上に乗せる。
翅はもう解放した。
「セリ」は私の手の上で、大きく翅を広げる。
まるで風を読み、風を掴もうとする渡り鳥みたいに。
今まで飛んだことがないから、機を読んでいるのか。
折よく風が吹いて、「セリ」の背中や翅の付け根に生えたふさふさの毛がなびく。
家の敷地から出て、家の前。
さえぎるものが少しでも少ない道路に連れ出す。
風に翅を揺らされていた、「セリ」。
飛べるのか、さっきのはまぐれじゃないよね、と。
思わず応援してしまう私。
そう長い時間はかからなかった。
また、風が吹いて。
「セリ」さんが飛んだ。
おお、と。
私は思わず拍手を飛ばしていた。
声は出なかった。
なんて言っていいのかわからなかったので。
飛んだといっても、飛距離は精々二~三m。
我が家の駐車スペース脇に植えられた、海棠の枝に「セリ」さんは留まった。
まだ長い距離は飛べないのかもしれない。
それでも嬉しかった。
私は一度家にとって帰す。
家に入る前に、昨日見つけたキアゲハの幼虫(数mmサイズ)に凄いぞ!君の先輩は飛んだぞ!と喜びの声をかけて。
飛んだ、確かに飛んだ。
だけど飛んだとはいえ、羽化の時のアレは無視できない。
もしかしたら長い距離は飛べなかったり、何か具合の悪いことがあるかもしれない。
いざとなったら回収するつもりで、サンバイザーと虫取り網を手に取った。
ついでに両親への報告用資料の為に、カメラも持った。
「セリ」さんが飛んだことは、すごく嬉しい。
だから両親や兄に、誇らかに報告してやるのだ。
あまり写真は得意じゃない。
得意じゃないけど、ばんばん撮りまくった。
にやにやと笑み崩れ、心の中で「セリ」に嬉しさに塗れた悪態をつく。
なんだよお前、落として持ち上げるなよー。
焦らしてどんでん返しとか、エンターテインメント意識しすぎだろ。
そう思いながらも、やっぱり嬉しくてうれしくて。
黄色い揚羽蝶が可愛くて仕方がなかった。
「セリ」の動きは鈍いように思えたから、やっぱり心配で。
あのひと基本、据わりの良い場所を見つけたら中々動かないから。
手の届かない高さなので、見上げるしかなかったけれど。
鳥の声が聞こえて、「セリ」の翼が開く。
空をみると、カラスっぽいのが三羽と、上空の方にトンビが見えた。
一度、捕獲するか。
反応の鈍い「セリ」が、鳥に対応できるのか不安で虫取り網を伸ばす。
反応が鈍い?
そんなことはなかった。
まだ、長い距離は飛べそうになかったけど。
「セリ」はちゃんと近寄って来た虫取り網に(三回目で)反応し、再び飛び上がる。
ただ飛んだ、それだけで感動した。
やっぱり長い距離は飛ばず、すぐそばに生えていた我が家の一番背丈の高い木の周囲を二周して、上の方の枝葉に留まる。
そこは私の部屋の、丁度真正面。
写真でも撮れないかと自室に向かうと、既に「セリ」の姿は何処にもなかった。
でも、それで良い。
姿が見えないということは、飛んで行ったということ。
無事に飛べたということだから。
毎日、「セリ」を庭に連れ出して散歩しようと決めて。
毎朝毎夕、飛べない揚羽蝶が翅ではなく足を使って庭の花々を伝い歩くのかと思うと、どうしようもない切なさを感じていたけれど。
その切なさも全部、空に飛んで行った。
「セリ」さんと一緒に。
いま、我が家の庭には一匹の蝶もいない。
アゲハの姿はどこにも見えない。
でも、それで良い。
それで良いと思えたのです。
――さて、考えてみれば私は昨夜からずっと「セリ」につきっきりで。
目を離した間に羽化するんじゃないかと、ずっと側にいて。
考えてみれば朝ごはんも食べていないし、顔も洗っていない。
それどころか髪すら梳いていなくて、こんな格好で外に出たのかと自分で自分に苦笑してしまう。
まあ、それどころではなかったというのが正直な感想だけど。
もう時間は昼近く。
気付けば十一時も半ば。
今頃になってお腹が空いてきました。
食事の時間は毎日結構規則正しいので、朝ごはん抜きは実は辛い。
ああ、だけど。
ご飯を食べるより先にすることがあります。
今日は快晴。
さっきまであんなに小憎たらしかったのに、今はとても気持ちよく思える青空が広がっています。
ええ、今日は良い日です。間違いなく。
なので今から洗濯をしましょう。
……ベッドのシーツが、「セリ」の体液塗れなので。
今から洗って、乾くでしょうか?
季節は初夏になろうとしています。
日差しも熱いし、今日は空気もカラッとしています。
きっと乾いてくれるでしょう。
乾かなかったら、その時はその時で。
洗濯をして、シーツを干して。
それから私はぐっすり惰眠を貪ろうと思います。
正直なところ…………かなり、寝不足気味でしたから。
特に昨夜から今朝にかけては、小刻みに三十分足らずの仮眠を何度か取っただけ。
朝のアレコレで眠気なんぞ吹っ飛んでいましたが……
睡魔さんが今頃になって、寝ろと言ってきます。
だから私はぐっすり眠れることでしょう。
もしも、都合の良い願いが叶うのならば、ですけれど。
その夢の中では、是非とも。
ええ、是非とも……三匹のキアゲハが空を舞う夢を見たいものです。
今頃になって、そういや蝶って翅乾かす時間必要じゃん?とか思い出しました。
……その割に、昨日の朝は短時間目を離した隙に行方不明になった前例もあったけど。
一人で慌てて、狼狽えて。
恥ずかしいばかりの一日でした。
早とちり、結構よくあります。
しかし何はともあれ、ですが。
これで私がとっ捕まえて観察していた芋虫すべての末路が定まりました。
一匹は残念なことに儚くなってしまったのですが……
二匹はこうして、無事……かどうかは怪しいですが、なんとか巣立つことが出来ました。
感想欄にて彼らへの温かいお言葉をいただけたこと、うれしく思っています。
皆様にもこうして文章という形で見守っていただけましたこと、有り難く思います。
芋虫の観察日記とか、需要あるのかとかなんとか思いつつも、投稿して良かったです。
彼らが旅立った以上、観察日記はこれにておしまいです。
最後までお付き合い、有難うございました。
追記
何人か気になっている方がいらっしゃるようなので……蝙蝠のことでも。
蝙蝠は、昨日職場の窓を開けたら乱入してきたやんちゃっ子です。
餌になるものが何もない職場の中で飢え死にされるのは……と偲びなく思って捕獲しました。
私の周囲を円を描くように飛び回られたり、棚の本の裏に隠れられたりと中々難儀しました。
小さい段ボールに詰めて、歩き合計20分。バス20分の道行きを家まで共に。
……歩いていると、中から謎の振動がびりびり伝わって来たんですけど、車の振動でも響いてたんでしょうかね?
それで、もとより日が落ちて暗くなってから放つつもりでした。
ただ、昨日の夕方は「パセリ」さんを放流してしまったので。
捕食されてはかないませんから。
時間を置くつもりで暫く玄関に置いていたら、19時半ごろにがっさごそ物音を立てながらぎぃぎぃ鳴き出したので家の外に解き放ちました。
まだ外は大分明るかったんですけど、蝙蝠的に良かったんでしょうかね?




