交渉
「あの、すいません」
「陸軍がここに何の用だ」
今いる場所は海軍本部の門の前である。
ここに来るのが近づくにつれ海軍の水兵や兵隊がこっちを睨んでくるのには嫌だった。
「そのですね。陸軍から重要な話をしに来たのですが」
「そんな話は聞いておらん。帰れ」
「いやー。そこをなんとか。へそを曲げて貰えないでしょうか」
「ダメなものはダメだ」
くそこいつ頑固だな。
「いいから早く上の人を呼んできて」
フラウが大きな声を上げて言った。
「はい。ただいま呼んできます」
大慌てで走り去る姿を見る。
あの人は頑固では無かったようだ。
「良くやったなフラウ。第一関門は突破だな」
「えへへ!そうでしょう。もっと褒めて」
まるで子どもみたいだな。
「お待たせしました。ご案内いたします。どうぞ」
フッフッフ。なんとか海軍本部内には潜入できたようだ。
「大佐。うまく潜入することができた」
「良くやった。さすがだスネ・・・」
一度こういう事をしてみたかったんだ。
「誰と話してるの?」
「いえ、誰とも話していません」
「今、絶対に話していたでしょう。大佐とか言ってたいたじゃん」
この世界の人間には分からないネタだからいいですよ。
「こちらになります」
失礼しますと言い二人は部屋には入る。
部屋の中にはいかにも階級が自分より上で口ひげが立派な老人が座っておられる。
「立っているのもあれだし。掛けたまえ」
言われるがままに座る。
「さて、重要な話とは何かね?」
「そのことですが。これをお読みになって貰えますか」
ここに来る前にキリル大隊長の直筆の手紙を渡す。
「ふんふん。これを読むに我ら海軍は陸軍の移動に船を貸せと言うことじゃな」
「そう言う事です」
「ある程度の船は貸せないことも無いのじゃが」
「借してくれるの!」
「ほっほっほ。それは無理じゃよお嬢さん」
「えぇー。なんでー」
本当だよ。どうしてダメなんだよ。
「我らは他国や海賊から国土と海の安全を守る仕事がある。それにいつも陸の上で威張っている連中に船を貸すなんて絶対に嫌じゃあ」
確かに他国や海賊から国土の防衛や商船が安全に航行できるように制海権の確保は大事だが。
このじじい。日頃の恨みから船は貸せないだと。いい加減にしてもらいたいよ。
「お願いします」
「くおお。なんという輝かしい眼差し。これを見続けては……いかん」
いいぞ。その調子で攻め続けるんだ。そして船の貸しつけの許可をもらうんだ。
「いいぞ、フラウ。その調子だ」
小声で伝えると。フラウはコクリと頷く。
「ダメだ。儂の負けじゃあ。1艦隊だけ陸軍の移動に船を貸そう」
「やった~」
良くやったぞ。これで大隊長や中隊長に怒られずに済む。
その後、お礼を言って大隊長と中隊長に報告したところ。二人に「なんで1艦隊だけなんだよ。もっと借りてこいよ」と言われた。
そして次なる任務が商人ギルドに行って船を借りるてくるか。物資の移動の仕事を引き受けてくれる船を募集して来いと言われ。
商人ギルドの前に居る。
「どうして俺たち。また似たような事をしなくてはいけないんだ」
「さぁ。どうしてだろうね」
商人ギルドの扉を開ける。
「大佐。また潜入することに成功した」
「さすがスネ……」
潜入ミッションパート2だ。
「また誰かと話してる」
「この生地を1枚。6銀貨で」
「いいや、1枚。4銀貨だ」
ギルド内にはたくさんの人が居て。商売の話をしている。
受付に向かう。
「あの~」
「はい。どうしました」
「軍の物資を運搬してくれる船を借してくれませんか」
「船を貸す事はできませんが。でも、船を貸す募集はできますよ」
「はいはーい。皆さんこの人の話を聞いてあげてください」
この建物に居た人の視線が一斉に集中する。
「あのクラリス領にあるコバルトまで軍の物資を運搬してくれる船を軍は募集しています。海賊対策として海軍が無償で護衛いたします」
場がシーンと静かになる。
失敗だったか。
「はいはーい。俺はその仕事を引き受けるぜ」
「俺もだ」
「俺も」
場に居た商人たちが我先にと手を挙げる。
よし船が大量にゲットだぜ。
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