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星刻の約定 ——Fragments of Laurant―  作者: にしみん
番外編・追補録 I
37/42

フォグワースの哀歌は響かない 前編

この作品を手に取っていただき、ありがとうございます✨


時間軸的には『沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり』『その祈りが届く限り』より前のお話です。季節は春

拙い表現や描写が多く含まれますが、ご容赦ください。

ミステリー…だと言い張ります()

 春風が優しく頬を撫で、ブーツが石畳を鳴らす音が規則正しいリズムを刻んでいる。

 ラングレン地方における湿地地帯の偵察任務を無事終えた聖ラウラント王国騎士団 偵察部隊の面々は、王都ブルローネに向けて帰路の歩を進めていた。——約二名を除いて。


「えぇ……魔獣の討伐ならまだしも、税金報告書類を受け取るだけって……ただのお使いじゃん」


「……その件については今朝伝えましたが」


「あれ? そうだっけ?」


「ミカ、言っても無駄だぜ。朝からコイツが真面目に話を聞くことなんか殆どないんだからな」


「うっわ、失礼!」


「失礼なのはお前な、シルフィ」


 僕の前方を歩くのはシルフィーネ・エレネスト。

 偵察部隊副隊長にして王国が誇る《十二勇士》の一人だが、その実態は見ての通り、天然呆けと面倒臭がりが同居する残念騎士だったりする。

 彼女の能天気さをクリスハイト・オルティが咎めるものの、彼とて相当なサボり魔なのだから、堂々と他人の説教などできた試しがないのだが。


「ともかく、君は僕と共にフォグワース村のハルトマン伯爵邸に行きますよ。クリス、君は先に戻って下さい。今回の任務の報告書の提出を忘れないように」


「分かってるよ。……でも少しくらい遅れてもいいよな?」


「只でさえ報告書の出来が壊滅的なのに、提出期限を引き延ばすのか……」


「シルフィ、お前ストレートに言い過ぎ」


「君の報告書を見れば、どこの隊長だって同じ感想を抱くんじゃないの?」


 移動中でさえ始まる軽口の応酬に、僕はずしりと重く深い溜め息を吐いた。

 しかし当人たちはまったく気にした様子もなく会話を続けている。

 少しは後ろに続く真面目な部下たちの背中を見習って欲しいものだ。彼らの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいである。


「俺、帰城したら遠距離小隊の射撃訓練に付き合うって約束しちゃったんだけど」


「報告書の提出期限は一日たりとも延ばしませんので、そのつもりで」


「約束したなら仕方ない。頑張れクリス、徹夜確定おめでとう」


「いやいや! そこは温情の一つや二つ」


「ないです」


 未だに温情とやらにすがろうとするクリスの甘い言葉を否定すると、彼は諦めたのか——いや、彼の性格のことだ、どうせ何か下らない言い訳でも考えているに違いない——渋々といった様子で口を噤んだ。

 ラン

グレン地方は深い霧の発生が非常に多く、天候の変化も激しい。

 故に魔獣や魔物の気配察知が多少困難になる為、他の地域と比べても偵察任務の難易度は跳ね上がっている。

 シルフィにとっては、このラングレン地方の危険な湿地地帯さえ散歩コースとでも言うように、時たま泥の中から姿を現す魚型や蟹型の魔物を、一撃のもとに葬り去っていたが。


「そう言えば、さっきの蟹って食べられるのかな? どんな味がするんだろ?」


「まぁ身はそれなりにあるけど、苦くて喰えたもんじゃねぇぞ。あれなら《ハミトン・クラブ》の方がまだ喰える味してる」


「ふーん……それ甘いの? 辛いの?」


「めっちゃ酸っぱい」


 常人が聞けば、その会話の内容に呆れざるを得ないと思う。

 だが、この偵察部隊にはある意味でまともな常人が存在しないため、誰も気にとめようとしない。

 我が部隊ながら、よくぞここまで非正常な人間が集まったものだと落胆する。


 やがて道は、王都へ続く街道とフォグワース村への分かれ道となり、僕たちはここで他の偵察部隊の面々と別れることになった。

 必要な情報伝達と今後の指示もまとめて手短に終える。


「んじゃ、報告は任せな」


「頼みましたよ。くれぐれもサボらないように」


「…………分かってるって」


「これはサボるね。賭けてもいいよ、金貨三枚」


「ならその金貨は俺の物ってことで」


「下らない賭け事は止めてください」


 僕の声によって、サボる・サボらないという子供のような言い合いをしていた二人を制止する。

 騎士歴が五年を越えてもこの体たらくなのは勘弁してほしい。

 なぜ他の騎士の見本となるべき彼らが、ここまで幼稚な思考をしているのか——優れた戦闘技術と豊富な実戦経験を持ち合わせていながら、こういう騎士が存在するのは頭の痛い話だった。


 偵察部隊と別れた僕たちは、フォグワース村——春の季節であっても寒々とした風が吹き抜ける北の辺境を目指した。

 そこには、人目を避けるようにして建てられた、成金貴族のド派手な館——ハルトマン伯爵邸が存在する。

 重い足取りで歩みを進める僕の隣では、早くも行き先に飽きた様子のシルフィが、小さな欠伸をかみ殺している最中だった。


 霧が怪しく立ち込めるフォグワース村。その村の中央に位置する場所には、伯爵邸が聳え立っている。

 伯爵という高い爵位ゆえに威厳を示すという意味合いから豪華絢爛な屋敷が建てられているようだが……少々——いや、かなり目に痛い塗装である。

 趣味が悪いとしか言いようがない。


「……ここ?」


「はい。見た目についての追及は無用です」


「元から興味ない。それより私、明らかに『貴族のボンボンです!』って感じの人苦手だからよろしく」


 心底興味がなさそうな低い声色でそう告げると、シルフィは偵察部隊の黒いケープのフードを頭まですっぽりと覆った。

 彼女は人前、ひいては王城の外の人間に素性を知られるのを酷く嫌う。

 《十二勇士》の影響力は思いの外強いもので、『勇士として個人的な問題には一切関わらない』と公に明言していても、欲深い人間や邪な思考を持つ人間はどこにでも居るものだ。


 彼女の場合、そういう人間の醜さに嫌というほど直面してきたのだろう。

 そのための対処法の一つが、こうして素顔を見せないというシンプルな自衛策だった。

 式典や凱旋行進によってどうしても顔が割れている彼女は、こうした北の辺境であっても警戒心を怠っていないようで、僕は内心ほっと安堵していた。


 見た目からして成金趣味が全開の屋敷の門前にいる、守衛と思わしき二人組に声をかける。

 僕たちの存在に気付いた瞬間、彼らがあからさまに怪訝な表情を浮かべたのは、どう考えても子どもだと思われているからだ。


 実際、事実なのでそれに関しては何も言わないことにする。


「——止まれ、……怪しいな……子どもが一体何の用だ!」

「……見ない顔だな……この辺の者か?」


 ここでシルフィがケープを脱いでくれれば、守衛の二人が血相を変えて平謝りし、一発顔パスで入れるのだろうが、当人は視線さえ合わせようとしない。

 その横顔には『任せた』という意思が含まれている。

 信頼されていると考えれば楽観的思考だが、実際は面倒事の丸投げである。


「僕は聖ラウラント王国 騎士団偵察部隊 隊長、ミカ・ファーレンガルドと申します。事前の連絡の通り、税金報告書類の受け取りに来ました」


 僕が用件を伝えると、思い当たる節があったのだろう。

 守衛たちの怪訝な表情こそ失せたが、まさか偵察部隊の隊長が幼い子供だとは思わなかったのか、ジロジロと探るような不躾な視線を投げてくる。


 王都周辺なら我が家の名を聞けば素直に通してくれるのだが、このような辺境であれば名は知られていても顔までは知られていないらしい。

 平常時なら顔が割れていないのは大変喜ばしいが、この瞬間においては単なる無駄時間である。

 只でさえこの後、面倒な事案が待ち構えているというのに。


「——こちらを」


 短い言葉と共に、身分を示すファーレンガルド家の家紋が精緻に彫られた黄金の懐中時計を見せる。

 それを確認した守衛たちは今度こそ顔面蒼白になり、大慌てで道を開けた。

 一人の守衛に至っては、短い一礼の後、情けない声を漏らしながら屋敷の中へ脱兎のごとく駆けていく。

 どうやら屋敷の者に僕たちの到来をいち早く報せに行ったのだろう。


「失礼しました!! ファーレンガルド伯爵様とは露知らず……! ご無礼をお許し下さい!!」


「いえ、顔を上げてください。それで、ハルトマン伯爵当主はご在宅ですか?」


「そ、それが……」


 言い淀む様子からして、当主は不在なのだろう。となれば、やはり未だ『新しい当主』は決まっていないようだ。——無理もないが。


「ならば、当主代理の方でも構いません。……ロベルト様に関しては本当に残念でしたね」


「えぇ……死ぬ直前までお元気だったのに……一代で富を築いても、死ぬ時は呆気ないものですね……」


 守衛にしては些か問題発言と捉えられてもおかしくない気がするが、どうでもいいので無視する。

 そのまま成金屋敷の門をくぐり、屋敷の大扉の前まで歩を進めていく。


 僕の後ろを沈黙のまま付いてきているシルフィが、周囲の情景に注意深く視線を走らせる気配を感じた。

 今朝の話を聞いていなかった彼女だが、直感能力は実に凄まじい。

 この屋敷全体を包む独特の不穏な気配に気付いたのだろう。


 ——魔力の濃度が不自然に濃い。霧の影響を差し引いて考えても、これは……


 ハルトマン伯爵邸への訪問理由は税金報告書類の受け取りだ。——表向きは。


 今回の主目的は、魔術師監理局から密かに依頼された危険な魔道具——あるいは魔術礼装の調査と回収。

 本来なら偵察部隊の仕事ではないが、ラングレン地方へ赴くにあたり、ついで感覚で押し付けられたのだ。

 こういう調査は本来、魔術師監理局かアルト様率いる調査小隊の仕事だろうに。


『近くまで行くならよろしく』と軽い気持ちで頼まれた際は、内心毒を吐いたものだ。——『自分の仕事もろくに出来ない癖に、人に仕事だけを投げるな』と。


 感情は常にコントロールしなければならない。


 剣技の冴えにも強く影響が出る。僕の修める流派は、感情の起伏を激しく動かしてはいけないのだから。

 今回の面倒事の発端を心の中で振り返りながら歩いているうちに、屋敷の大扉の前に辿り着く。

 そこには当主候補の兄弟たちと、使用人と思わしき人物たちが集まっていた。


「よくぞお越しくださりました、ファーレンガルド伯閣下……! いや、ミカ様とお呼びしてもよろしいですかな? 王都の第一線でご活躍の偵察部隊長殿にわざわざお越しいただけるとは、我がハルトマン家の至上の誉れでございます!」


 僕たちを出迎えた一人——見た目三十代程の、如何にもプライドの塊といった印象を受ける男が必死に揉み手をしながら顔を向けてくる。

 過度の緊張からか、その額には嫌な汗が流れていて、他の当主候補であるきょうだいたちの眼差しも、同様に卑しい光を帯びている。


 身につけた豪奢すぎる装飾品の類いから考えても、『成金至上主義』という言葉がこれほど似合う男もいないだろう。


「さぁどうぞこちらへ! 最高級のお茶をご用意いたします!!」


 急かされるようにして屋敷の中へと招かれる。


 ——これが、後に続く惨劇と面倒事の始まりであった。


 ◇ ◇ ◇


 通された応接室は、やはりどれも高価な家具や贅沢な調度品で埋め尽くされていた。

 だが、その中に見た目こそ有名ブランドに酷似した精巧な『偽物』が混じっていて、僕はなんとも言えない妙な感情を覚える。

 ここで『この家具は偽物ですよ』と指摘してよいものなのか。彼らの無駄に高いであろうプライドを傷つけた場合、この後の書類受け取りや調査に悪影響を及ぼさないだろうか。


「こちらは王室御用達とも謳われる最高級茶葉——『月銀紅茶』を使用しております! ささ! 冷めないうちにどうぞ!」


「…………ありがとうございます」


 急かされるようにお茶を勧められ、僕は静かにカップに口をつける。

 隣では同様にお茶を勧められたシルフィが、ケープの下でもはっきりと分かるほど深々と悩んでいた。

『角砂糖や濃縮シロップの類いを大量投下したい』と、その空色の瞳が雄弁に物語っている。

 僕の視線に気づいた彼女は諦めたように小さな息を吐くと、おとなしくそのままお茶を口へと運んだ。


「如何でしょうか! お口に合いましたかな!?」


「(ミカ、これ味がしない)」


「……えぇ、はい。とても芳醇で素晴らしいお味ですよ」


 僕にしか聞こえない極小の声量で「味がしない」と彼女にとっての事実を伝えてくるシルフィをそっと視線で制すると、彼女は苦々しげに——あるいは無感情に——カップを丁寧にソーサーへと戻した。


 その直後、我慢の限界と言わんばかりに兄弟の中の一人が前に躍り出てきた。

 濃い化粧を施した、三十代と思わしき女性だ。


「ちょっと、ミカ様がお困りでしょう!! ——コホン、初めましてミカ様。以後お見知り置きを——」


「姉さんこそ忙しないね。これだから頭の足りない人間は……」


「誰が頭の足りない人間ですって!? ジュリアン!!」


「そうやって、すぐに品もなく声を張り上げるところじゃないのかい?」


「おい、姉さんも兄さんも客人の前だぞ、もう少し——」


 長女と思わしき女性が飛び出したことで、堰を切ったように次から次へと声を張り上げ始めるきょうだいたち。

 どう考えても遺産相続や当主決定の件で、王都の伯爵家であり偵察部隊長である僕を味方に付けたいという私欲が見え隠れしている。


 尚も見苦しい争いを続けるきょうだいたちに対し、突如として、怯えながらもそれを制止しようとする控えめな声が届いた。

 声の主は、兄弟たちの後方で息を潜めていた一人の女性から発せられたものだった。


「兄様も姉様も落ち着いて……お客様の前よ……」


「……ソフィア、随分と偉そうな口が利けるようになったじゃない」


「まったくだね。血の繋がっていない養子の分際で」


「王都の伯爵様だからって媚を売りたいのかい? この乞食が」


「わ、私はそんなつもりじゃ……」


 ——貴族の家柄において、養子の存在や腹違いの子どもが忌避や迫害の対象になりがちとはいえ、後味が悪いにも程がある。

 客人の前で浴びせていい暴言ではないだろうに。


 日頃から家庭内で虐げられているのか、ソフィアと呼ばれた女性の服装は他の当主候補たちとは違い、高価な装飾もなく質素そのものだった。

 自信なさげに震える長い睫毛には涙が溜まっており、勇気を出して発した小さな声は、悪意に満ちた怒号によって容赦なく掻き消されていく。


 僕は彼らのあまりに品のない対応に心底呆れつつも、それを表情には一切出さず、あくまで淡々とした声を発した。


「——失礼。お取り込み中のところ申し訳ありませんが、お一人ずつお名前を教えていただけますか?」


「これは大変失礼いたしました! 私は長男、ヘンゼル・フォン・ハルトマンと申します! 次期当主として——」


 自らを『次期当主』と自称した瞬間、それを否定するように先程の長女がまたもや割り込んで前に躍り出た。

 誰かの前に立ちたがるのが好きなのだろうか?変わった趣味だ。


「次は私よ! 先程は失礼いたしましたわ、クララ・フォン・ハルトマンです。次の当主はこの私が……」


「間違った情報を客人に伝えるのは止めてくれないか。……ミカ様、僕はジュリアン・フォン・ハルトマンと申します。このような頭の悪い兄や姉たちにハルトマン家を任せる訳にはいきません。よって僕が——」


「おいおい……まだ当主は決まってないぜ? 遺産の分配もな。オレはレイモンド・フォン・ハルトマン、どうぞよろしくお願いいたします」


「次は私でしょうか。エレナ・フォン・ハルトマンですわ。ヘンゼルの妻ですの。当主は我が夫が正統に継承するべきですわ」


 次期当主を一方的に自称し、傲慢でプライドだけが高い長男ヘンゼル。


 きょうだい——特に次男と犬猿の仲である長女クララ。


 インテリを気取って兄弟を見下す次男ジュリアン。


 ヘラヘラとした態度で見るからに放蕩息子代表といった風情の三男レイモンド。


 おとなしそうに見えて内心では夫を担ぎ上げ権力を握ろうとする妻エレナ。


 内訳としては、概ねそのようなところだろう。

 そしてあと一人、ソフィアと呼ばれた女性が恐る恐るといった様子で口を開こうとするが、長男のヘンゼルがそれを一蹴するように厳しく制した。


「わ、私は——」


「ソフィア!! お前はハルトマン家の面汚しだ!! 当主候補でもなければ、相続の金など一ゴルドたりとも渡すつもりはないからな!!」


「私はお金なんて……それに、ただ自己紹介をしようと……」


「フン! アンタの名前なんてどうでもいいでしょ? そもそもハルトマン家の血も引いていない余所者なんだから!」


「今回ばかりは姉さんに同意だね」


「言うねぇ!! ま、事実だけどな!」


 下品で甲高い笑い声が、豪華な応接室に虚しく響き渡る。

 こういった醜い権力争いや人間関係はこれまでも嫌というほど目にしてきたが、中々に根性が腐りきっているとしか思えない。

 僕があまりに不条理なソフィアという女性への仕打ちに見かね、助け舟を出そうと声をかけかけたその刹那——


 思いも寄らない場所から、静かな声が上がった。


「名前」


「え……?」


 ソフィアが呆然とした様子で声の主の方を凝視する。

 今まで深く沈黙を貫いており、素顔さえ見せていないことから、彼女を僕の従者か平騎士の一人に過ぎないと思っていたのだろう。

 当主候補たちは貴族ですらない者からの発言だと高をくくり、目に見えて不快そうな表情を浮かべた。

 当の彼女は、周囲の刺さるような視線など一切意に介した様子もなく、言葉を続ける。

 そして驚いたことに、自らケープのフードをすっと後ろへ取り払ったのだ。


 ——珍しいこともあるものだ、と僕はつくづく思った。


 どうやら気まぐれな風は、この不幸せな女性に救いの手をもたらすことに決めたらしい。


 フードの下から現れたのは、輝く金の髪と、射抜くような鋭さを秘めた空色の瞳。


「私は、シルフィーネ・エレネスト。君の名前、教えて」


「————シル……フィーネ……様……!? わ、私、私は……」


「——なっ!? あ、あの《十二勇士》の……!? お、お畏れ多い……!! おいソフィア、黙っ——」


「黙るのは貴方。彼女の声が聞こえない」


 その一言が落ちた瞬間、部屋全体の気温がぐっと数度下がったかのような錯覚に襲われた。

 彼女は決して怒号を飛ばしたわけではない。

 しかし、日頃の彼女の能天気な態度を知らない初対面の人間からすれば、その声音は恐ろしいほど冷徹で、機嫌を損ねれば命すらないと思わせるに十分すぎる威圧感を放っていた。


 静まり返った一瞬の静寂を破ったのは、怯えながらも凛と姿勢を正したあの女性だった。


「——初めまして、騎士様。私はソフィア、——ソフィア・フォン・ハルトマンです」


 周囲の冷眼を跳ね返すように、その声は小さな、けれど確かな響きを伴って発せられた声。

 ソフィアが堂々とハルトマンの名を名乗ったことで、当主候補たちの顔色が目に見えて蒼白になった。

 その理由は明白で、ソフィアが直々に《十二勇士》であるシルフィから名を尋ねられた——つまり、《十二勇士》という強大な権力がソフィアの後ろ楯に就いたと勝手に思い込んだからだろう。 


 実際のところ、シルフィにそんな意図は欠片も存在しない。

 彼女からすれば『全員が名を名乗っているのに、一人だけ名乗らないのはおかしい』という、極めて単純な思考に基づいた行動に過ぎないのだ。


 そもそも《十二勇士》には『勇士として個人的な事情や政争には一切関わらない』という絶対の制約が存在している。

 よって彼女が誰かの肩を持つことなどあり得ない。どれだけ金貨やお菓子を山積みにされようと、絶対に、だ。


「お、恐れながらシルフィーネ様! この者はハルトマン家の血筋を引いていないただの余所者でして……!」


「そ、そうですわ! だから当主の継承権も当然、あるはずもなく……!」


「………………? ……ミカ、状況が分からない」


 傍らのシルフィが、僕のケープの端をちょんと軽く引っ張りながら、不思議そうに空色の瞳を向けてくる。

 僕は一つ小さな息を吐くと、騒がしく捲し立てる当主候補たちを制するべく、ゆっくりと声を張った。


「——皆様、落ち着いて下さい」


 ヘンゼルとクララがシルフィに向かって慌てた様子で当主の継承権について説明するが、当の彼女はただただ困惑している。

 数秒のタイムラグは、彼らの行動について彼女なりに必死に思考したものの、結局理解できなかったため、僕に状況説明を求めているのだ。


「し、しかし……!」


「今この場にいる彼女は《朔風騎士》ではなく、偵察部隊の副隊長です。——家督継承の件は僕たちが介入する問題ではありません。あくまでハルトマン家内部の問題でしょう」


「そ、そんな!? ——はっ! ……ミカ様、現在我がハルトマン家は当主が不在……ゆえに納税義務者が誰なのか曖昧なのですよ!! つま——」


「現当主が空席だからといって、ハルトマン家に課せられた国への納税義務が消えるわけではありませんし、納税義務者のためだけに当主を決めるのもお勧めしません」


「本来なら、相続が確定するまでは『当主代行』を立てて正当な申告を行わねばならないっていう法がある。……それより、今月の税金報告書類はまだ? 財務省に届いてないみたいだけど」


 納税義務者が不在であることを理由に当主を強引に決める、あるいは責任者の不在を理由に国に納める税金の激減や免除を画策しているのが手に取るように分かる。

 先程まで状況を理解していなかったシルフィも、ヘンゼルやクララの必死な形相を見ているうちに、彼らの企みを察したのだろう。


 もっとも——彼らが最も恐れていたのは税金徴収の件などではなく、ソフィアがシルフィの後ろ楯を得て、新たな当主の座に就く可能性を懸念してのことだろうが。


「あ……えっと……私は税金報告書類に関しては……く、クララ! お前の仕事では!?」


「はぁ!? 私は知らないわよ!? ジュリアンでしょ!?」


「だってさ、兄さん」


 まさか税金報告書類の管理がここまでずさんだとは考えもしなかった僕は、ほんの数秒呆気に取られてしまった。

 当主が亡くなって一ヶ月……多少の混乱はあると予測はしていたが、それを遥かに超える醜態だ。普通に笑えない。


「——まったく!! これだから知能の低い人間は困る……税金報告書類なら用意していますよ。騎士団の……それも偵察部隊の隊長殿が自らお越しになられると聞き及んでいましたからね」


「なら早く出して。遅い」


「じ、ジュリアン!! 早くしなさい!!」


「わ、分かったって!! ——ヴェルター!!」


 上機嫌に語り出したインテリ気取りのジュリアンだったが、シルフィの一言で一蹴され、焦ったように何者かを呼びつけた。

 すると部屋の外で待機していた、執事と思わしき六十代の男が静かに姿を現した。

 その佇まいや洗練された立ち振る舞いからして、長年この屋敷で使用人を務めてきたのだということがよく分かる。


 部屋の外にはあと三人の気配があるが、それ以外にはこれといって気配を感じられない。

 身を隠す意味があるのか——まさか伯爵という高い爵位を持ちながら、使用人が数人しか雇われていないということはないだろうが。


 ヴェルターと呼ばれた熟練の執事は、僕とシルフィに対して丁寧な一礼を捧げると、事前に用意していたと思われる税金報告書類一式を捧げるように差し出してきた。

 あるなら最初から出してもらいたいものである。

 おかげで見たくもない醜い身内争いを視界に焼き付けることになった。


 今しがた抱いた感情を一切表情には出さず、差し出された書類に手を伸ばし、目線を落とす。

 フォグワース村には、希少な魔石が採掘できる鉱山が存在し、ハルトマン伯爵家はその鉱山業で莫大な生計を立てている。

 軽く目を通したが、収入源である魔石出荷益と、領地からの徴収税の数字には特に問題がないように思える。

 続いて、支出の項目へと確認を進める。鉱山採掘用の資材費や人件費にも不正の類いは見受けられない——が。


「鉱山の崩落対策費がかなり嵩んでいますね。加えて、使途不明金が多すぎます。この費用はどういった意図で計上されたものですか? 書類では空白のようですが」


「——……あ、えっと……僕は知りません! 兄さんが知ってるんじゃないか!?」


「なっ——!? 私は知らん!! クララではないか!?」


「はぁ!? なんで私なのよ!!? レイモンドでしょ!?」


「いやいや……エレナさんでしょ!!」 


「違いますわ! 言いがかりです!!」


「………………チッ」


 思わず小さく舌打ちをしてしまった僕のケープを、再びちょんと軽く引っ張られる感覚があった。 


「ミカ、気持ちは分かる」


 彼女の声はいつも以上に優しかった気がする。 


「……ともかく、これは正当な税金報告書類とは形容できません。きちんと調べて正しく書き直して下さい、今すぐに」


「え……い、今すぐ……ですか?」


「私たち、暇じゃないんだけど。……そもそも受け取りにきた書類が不完全とか……」


 シルフィの身も蓋もない言葉に、僕は同意を示すように静かに頷いた。

 ヘンゼルをはじめとした当主候補たちが慌てて互いに不穏な視線を交わし合う中、僕はすっかり冷め切ってしまった紅茶に一口だけ口をつけることで、胸の奥に湧き立つ苛立ちを宥めることにした。 


実際問題、彼らの手で正規の税金報告書類が完成するのは一体いつのことになるやら。 


 その後も、こちらに聞かれまいとこそこそ密談を交わし続ける当主候補たち。

 その見苦しい輪に入らない——正しくは弾き出されて入れないソフィアが、申し訳なさそうに深く頭を下げながらこちらへ歩み寄ってきた。 


「……申し訳ございません、騎士様方。お見苦しいところをお見せするばかりか、必要な書類さえお渡しできずに……」


「——いえ、このような事態は……まぁ、残念ながら許容範囲内と言いますか。——それより、書類の整備に時間がかかるようでしたら、屋敷の中を少し見て回ってもよろしいですか?」


「……あ、はい! それはもちろん、構いませんが——」


「ソフィア! お前は一体何をしている!! ミカ様に失礼だろう! さっさと部屋に戻れ!」


 こちらに気付いたヘンゼルが、鬱憤を晴らすかのようにソフィアへ怒号を浴びせる。

 彼女は日頃から罵倒され慣れているのか、悲しげに瞳を伏せつつも素直に応じる構えを見せた。


「……ソフィア様、お客様のご案内はわたくしめが」


「……えぇ、お願いね。ヴェルター……では騎士様方、失礼いたします……」


 ソフィアは僕たちに向かって静かな一礼を捧げると、逃げるように応接室を後を出て行った。


 当主候補たちといえば、ずさんな税金報告書類——どう考えても数々の不正や使途不明金で溢れかえっている代物——をどうやって誤魔化すかの策謀に夢中で、僕たちの動向を気にする余裕すらなさそうだ。


 本来なら、国家の使者であり一応は客人である僕たちを放置するなど貴族の礼節として論外なのだが、僕にとっては本来の目的である魔道具(魔術礼装)の調査に取りかかれるため、かえって好都合である。

 どうせ彼らには、一時間や二時間程度で辻褄の合う書類を用意できるとは思えないし。


「改めまして、わたくしはヴェルターと申します。先代当主、ロベルト様が幼少期の頃よりハルトマン家に仕えております」


「どうぞよろしくお願いします」


 言葉こそ発しないものの、隣のシルフィが小さく頭を下げて挨拶をする気配を感じた。 

 それを再び丁寧な深々とした一礼で返したヴェルターは、未だに互いに責任を押し付け合っている愚かな当主候補たちを綺麗に無視し、僕たちを廊下へと案内した。


 熟練の使用人らしい無駄のない美しい所作で指し示された先には、広大な中庭が広がっていた。

 何より驚いたのは、あの建物外観にあった悪趣味な成金趣味が、この庭園において完全に鳴りを潜めていることだった。


「こちらは……」


「ロベルト様の……亡くなられた奥様が、生前とても大切に手入れされていたお庭です」


 ヴェルターは感慨深げに「ロベルト様の奥様」と語ったが、僕の記憶が正しければ、先代伯爵夫人であるベラリーチェ様は随分と昔に若くして亡くなっているはずだ。

 目の前に広がる庭園は、我がファーレンガルド伯爵邸や王宮の広大な庭園ほど豪華絢爛ではないにせよ、草木の一本一本に至るまで実に見事に手入れされており、今なお深い愛情を持って人の手が入っていることが一目で伺えた。


 僕が抱いたその小さな疑問は、隣で静かに花々を見つめていたシルフィも同じように抱いたようだった。

 彼女にしては珍しく、自らヴェルターへと問いを投げかける。


「——今は、誰が手入れを?」


「ソフィア様です。お嬢様は、花を愛でるのがとてもお好きなようで……」


「貴方は、随分ソフィアを気にかけているように見える」


「……それは」


 彼女の問いかけは、彼女の深意を知らない人物からすれば少し不躾に聞こえるかもしれない。

 だが彼女が真に言いたいのは、つまるところ——血縁関係もなく、他の親族から疎まれ虐げられているソフィアを、この老執事が何の躊躇いもなく『お嬢様』と呼び、心からの主として敬っているように見える、ということだった。


 貴族社会において養子という存在は毛嫌いされる傾向にあり、それは使用人の態度にも露骨に現れるのが常だ。

 それでも、ソフィアを語るヴェルターの表情はどこまでも柔らかく、まるで実の娘や妹を慈しむかのような温かな眼差しと声音だった。


「答えなくていいよ。詮索するつもりもない。——ただ」


「……? ただ?」


「その気持ちは、真っ直ぐに伝えていいと思う。言葉にしなきゃ、伝わらないことだってあるから」


「…………えぇ。左様ですね」


 普段他人にうまく言葉を紡げない彼女が、それでも一生懸命に選んで伝えたその優しさに触れ、老執事は深く感動したようにようやく温かな笑みを浮かべた。

 次の瞬間、ふわりと柔らかい春の風が吹き抜け、庭園に咲き誇る可憐な花々がヴェルターの笑顔に応えるように一斉に優しく揺れた。


——まるで、風を従える少女の静かな祝福が、そこに添えられたかのように。


 ◇ ◇ ◇


 その後も食堂や広間、成金趣味が全開の骨董品が多く飾られた『他人に自慢するためだけの部屋』を案内されたが、これといって怪しいと思える箇所はなかった。

 一通り案内し終えたヴェルターは「夕食の準備がございますので」とのことで、丁寧なお辞儀とお詫びの言葉と共に去っていった。

 僕たちだけになった広大な庭の大きな木陰で、現時点での状況を整理することにした。 


「成金趣味はともかくとして、魔道具や魔術礼装の類いは確認できませんでしたね……流石にこれ見よがしに飾ってはいないか」


 やはり金庫や隠し部屋といった場所へ隠匿している可能性が高い。

 どう考えても今夜はこの屋敷に滞在することになりそうなので、夜も更けた頃にもう一度念入りに探すのがいいだろう。 


「——ミカ、下」


 不意に、静かだが確信に満ちたシルフィの声が響いた。一切の迷いなく発せられた声に、僕は少しだけ驚きを隠せなくなってしまう。


「……下?」


「うん、下。もっと明確に表すなら——地下室ってところかな」 


 彼女を疑うつもりは毛頭ないのだが、ヴェルターは地下室があるとは一言も言っていなかったし、地下室に続くような不自然な扉や隠し部屋もなければ、隙間風の音も壁の薄さも気にならなかった。

 どうやら見落としたらしい。やはり今夜しっかり調査すべきである——と僕が夜の行動方針を決定したところで、シルフィは再び口を開いた。 


「……想定してた以上にまずいかも。君も気付いてるでしょ?」


「魔力の濃度ですか? それは、えぇ。屋敷に足を踏み入れた頃から不自然には思ってましたが……」


 いつもどこか余裕を崩さない彼女が、明確な言葉をもって『まずい』と言い切ったあたりから、嫌な汗が背中を滑り落ちた気がした。

 シルフィは滅多なことではこのような発言をしない。つまり冗談などではなく、予想以上に危険な魔道具か魔術礼装が眠っているということだ。

 この一言を聞いてから、僕の警戒心は数段階引き上げられていた。


「下手したら死人が出る」


「——それは」


「大丈夫、ミカは死なない。魔力回路の質が高いし、何より『耐性』があるから」


 ——耐性。それは逆に言えば、耐性がない人間は容易く死に瀕する可能性があるということだった。

 魔術師監理局もとんでもない爆弾を押しつけてくれたものだ。

 やはりアルト様たちの調査小隊に任せるべきだったか、などと今さら遅い感想を抱いた。


「その耐性とは?」


「『呪い』の耐性だよ。呪いは魔術の基礎。でも魔術師じゃない人間は、その怨嗟の声に耐えられない」


 正直なところ、僕も呪いに対してはあまりいい思い出がない。

 いや、いい思い出がある魔術師などそうそういるとは思えないし、思いたくもないのだが。


「魔道具、もしくは魔術礼装が呪いを主軸にしたものだと?」


「直感だけど魔術礼装。村全体に影響を及ぼす礼装じゃない……と思う。この屋敷に限定した処刑儀式って感じ。……幸い、即発動はしないから安心して」


 この短時間での推察といい、『即発動はしない』という確信めいた言葉といい、やはり規格外としか言い様がない。

 この屋敷は全体的に魔力の濃度が不自然に濃く、どこが魔力の発生源なのか判別がつかなかった。 

 しかし彼女はそれを見抜き、既に何かしらの策まで講じていると思われる。


「一体何をしたんですか?シルフィ」


「ちょっとした結界を張っておいた。でもあくまで抑える程度。この類いは礼装自体を何とかしないと止められない系」


「……待ってください、そんな大規模な魔術行使をこの件が片付くまで常に展開し続けるつもりですか? ……無茶ですよ、いくら君でも」


 屋敷全体に限定したとしても、人間を死に至らしめるほどの呪いならかなり強力だ。

 自衛ならまだしも、耐性も低く魔力回路も大して成長していない一般人を多人数、呪いから守り続ける行為は多大な危険を伴う。


 簡単に言えば、屋敷の全員に向けられている呪いを一人で引き受けるようなものだ。

 彼女のことなので動けなくなるほど無茶をするとは思えないが、それでも——


「なら、ちょっと手伝ってほしい。ミカは魔力モンスターだし、補助してくれるだけで大分楽」


「……元よりそのつもりでした」


「そっか、ならよろしく」


 昔の彼女に比べれば随分と物分りが良くなってくれたと、僕は心底思った。

 『よろしく』という言葉と共に差し出された、彼女の小さな手を握る。魔力伝達は人により得意、不得意が明確に分かれる分野でもある。  


 昔、父上から『もう少し加減を覚えなさい』と苦笑交じりに言われた記憶が蘇る。

 そういう意味合いで考えれば、僕は魔力伝達が不得意の部類に入るのではないか——


「……ん。もう充分」


「え、本当に? ほんの数秒ですよ」


「……自覚ないみたいだけど、ミカは魔力伝達のスピードが爆速なの。例えるなら魔道具を充電しようとしたら、一瞬で充電が完了してたレベル」


「……そうですか?」


「そう。とりあえず今は大丈夫。足りなくなったらまたお願い」


——なんだかペットでも餌付けしているような妙な気分になった。

 という言葉がうっかり口に出てしまいそうになり、僕はなんとか堪えることに成功した。


「いつでもどうぞ」

「ありがとう、魔力モンスター」

「それやめてください」


 魔力モンスターなどという不名誉極まりないあだ名を平然とつけてくるのは、きっと彼女かクリスくらいなものだろう。

 僕は脱力しそうになる気持ちをどうにか切り替えるために、再度警戒意識を強く持ち直したのだった。


 魔力伝達を終えると、シルフィはそのまま僕の膝の上にすっと頭を預け、当たり前のように昼寝を始めてしまった。


 あんな危険な会話を交わした直後とは思えない度胸だが、彼女にとってはこれが平常運転であり、身体に異常がないという何よりの証なのだが——よくぞこんな敵陣とも言える不気味な屋敷の庭で、警戒もなしに眠れるものだとつくづく感心してしまう。 


 もっとも、僕が文句を言ったところで彼女なら「だってミカがいるし」と平然と返してくるに違いないのだが。


 結局、日が傾き始め、ヴェルターが「夕食の準備が整いました」と知らせに来てくれるまで、彼女が目を覚ますことはなかった。

 自分の膝の痺れをを押し殺しながら、僕はため息を吐く。やはりこれだけの図太さを持っていなければ、《十二勇士》などという大任は務まらないのかもしれない。 


 招かれたのは、やはり目に痛い成金趣味全開の絢爛な食堂だった。

 壁には高価な調度品が所狭ましと飾られている。当主候補たちは未だに税金報告書類がまとまらないのか、青ざめた顔を揃えていた。


「も、申し訳ありませんミカ様……もう暫しお時間を……」


「……構いません。正式な税金報告書類が完成することを切に願っています」


「ありがとうございます……!! コホン! 気を取り直して、夕食と参りましょう! おい! 早く持ってこい!」


 ——やはり、どう考えても使用人の数が圧倒的に少ない。


 給仕にあたる使用人はほんの二、三人。何より、大きなコック帽を被った四十代くらいの男自らが大皿を配膳している。

 料理を作る本人がこのような給仕仕事までこなさなければならない程、この広大な屋敷は使用人の手が足りていないのだろうか? 伯爵家であるにもかかわらず——?


「ハルトマン伯爵家料理長! オットーでございます! さぁどうぞ! お召し上がりください!!」


 とんでもない勢いで料理を勧められ、流石のシルフィも寝ぼけていた頭が覚醒したようだった。

 この料理人に悪気や害意がないことだけは柔らかな表情から確信できたのだが……。


「さぁどうぞ! シルフィーネ様! さぁ!! 《十二勇士》の御方にワタシの料理を振る舞えるなんて!! あぁ、三女神よ……!! 感謝いたします!!」


「…………わぁ、美味しそう」


 棒読みでそう告げると、シルフィはスモークサーモンとクリームチーズのピンチョスにフォークを差し、迷いなく口へと運んだ。

 その様子を、キラキラとした純粋な瞳で見つめるオットーという料理長。客人からすればどう考えても食べにくい視線だろうに。 


「如何ですかな!? どうですかな!?」


「——……うん、美味しい」


「え」

「え?」

「えぇ……」

「えぇ!??!」

「嘘…………!?」

「あ、あの騎士様……無理はなさらずとも……」


 ヘンゼル、クララ、ジュリアン、レイモンド、エレナ、そしてソフィアまでもが、順に驚愕に満ちた表情に染まっていった。

 老執事のヴェルターに至っては、「信じられないものを見た」と言わんばかりの顔で固まっている。

 僕は胸の奥に嫌な予感をひしひしと感じながらも、目の前の見た目だけは一流の料理人が作ったように見えるスモークサーモンとクリームチーズのピンチョスを上品に口に運んだ。


 —— 一言で言うなら、余計な調味料の過剰投入によって味が完全に喧嘩している。


 この料理は本来、調味料をほとんど使わず素材の持つ適度な塩気とうま味だけで美味しく作れる手軽な前菜——のはずなのだ。

 基本の味付けは不要で、スモークサーモンの塩気とクリームチーズのまろやかなコクだけで十分味が決まる。

 風味付けとして粗挽き黒コショウや良質なオリーブオイルを仕上げに軽く散らすアレンジも存在するが、ともかく目の前の料理のように、オリーブオイルと黒胡椒、更にはディルやペッパー、ケイパーを無差別に大量投下し、何が何だか分からないような——サーモンの『サ』の字もないような無体な味わいには絶対にならないのだ。


「おぉ!! 光栄の至り!! おかわりもありますぞ! さぁ! どうぞ!!」


「ご無理をなさらないで、シルフィーネ様!!」


「そうですわ!! いくら十二勇士でもこの味は!!」


「やはり、十二勇士は化け物揃いか……あの料理を『美味しい』などと……!」


「味覚まで最強なのか……」 


「………………??? オットーの料理を食べて美味しい??」


 どうやら、今回に限って料理が不味いというわけではないらしい。

 分かっているなら最初から不味い料理を客人に出すな、と言いたくなる。

 だが、当のシルフィは文句一つ言わずに次々と口に運び、それを見てオットーが感激の涙を流して喜ぶという、奇妙な光景が繰り広げられていた。


 これは決して、彼女が客人として気を遣って我慢しているわけでも、単なる大雑把な性格によるものでもない。


 彼女は————旨味、苦味、酸味をはじめとする……甘味と辛味以外のあらゆる味覚を感じることができないのだ。


 生まれ持っての感性ではない。数年前の《血嵐戦争》終結後、生還した彼女の身体は既に重度の味覚障害を発症していた。

 つまり、彼女がこの劇物にも似た料理の姿をした物体を当然のように食べられるのは、これが彼女にとって完全な『無味』に感じられるからに他ならない。


 普段から周囲が引くほどの大量の砂糖や濃縮シロップを紅茶や珈琲に投入するのも、過剰なまでに甘味を求めるのも——『それしか味を感じられないから』


 一応、辛味覚も感じられるらしいのだが、以前シルフィは『辛いと舌が痺れて、結局味が分からない。なんでこんな物が好きなんだろ?』と不服そうに呟いていたことがあった。


 後半の『なんでこんな物が好きなんだろ?』という言葉の真意は、僕は今でも分からない。


 まるで————自分以外の誰か、彼女の中にいる『別の誰か』が辛い料理を好んでいるとでも言いたげな、妙な違和感。


「うっ……!! ワタシの料理を美味しいと言ってくれるなんて……!!」


「これ以上は駄目ですっ!! ヴェルター!! お医者様を呼んで!!」


 青ざめたソフィアがヴェルターに医者を呼ぶよう悲鳴を上げたところで、僕はナプキンで静かに口元を拭うと声を上げた。

 もちろん、無用な騒ぎを制止する意味を込めて。


「……ご心配なく、ソフィア様。彼女は少し——体質が特殊でして」


「え、でも……」


「ミカも食べる?」


「…………彼女は少し長旅で疲れているのでしょう。本日は早めにお休みをいただいても?」


「……も、もちろんです! ヴェルター、ミカ様とシルフィーネ様をお部屋へ!」


「かしこまりました……!」


 シルフィは僕の言葉を少し不思議そうに受け止めていたが、しばらく首を傾げた後、食事を終える際の綺麗な一礼と共にナプキンで口元を拭うと、静かに席を立った。


 後ろからは、今なおオットーの涙混じりの歓喜の声が食堂全体に響き渡っていた。


 ◇ ◇ ◇


 窓から差し込む月光の位置が変わる頃、魔導灯の曙光が鈍い光を放った。


 僕は今朝、魔術師監理局から手渡された密書に再度目を通していた。

 ハルトマン伯爵家について緻密に綴られた羊皮紙。歴史が浅い家ではあるが、一代で富を築いた実績は中々根が深く、情報量が意外にも多かった。

 前提として、ハルトマン伯爵家は鉱山業を代々営んでいたが、その成果は特に何の変哲もない——もっと言えば平凡以下であった。

 領民も自分たちも生活に困らない程度の資金はあるが贅沢はできないという、伯爵という高い爵位からは珍しい環境。


 我が国においては、「実績」と「実質的な家格」は別として考えられることも多い。

 例えば、子爵家と伯爵家——爵位では伯爵が勝っているが、実績面で子爵家が大きな成果を上げていれば、立場は簡単に逆転する。


 この事からハルトマン家の立場はそう高くなかった——四年前までは。


 記録によれば、四年前を境に突如として魔術的価値が高い希少な魔石や魔鉱石が大量に発掘されるようになったという。

 それ以前も発掘自体は確認されていたが、量は限りなく少なく、魔術的価値もそこまで高くなかったらしい。

 地脈の流れが変わったとか、周囲の環境の変化だとか、地層が深くなったことで新たに採れる石が増えたとか——ともかく、理由はいくらでも考えられるが……


 財務省、および魔術師監理局が視点を向けたのは違う理由だった。

 ハルトマン家が鉱山業を突如成功させるようになった時期と時を同じくして、フォグワース村に原因不明の魔力を帯びた濃霧が立ち込めるようになったからだ。

 

 フォグワース村周辺では以前より霧の発生が多く報告されており、魔力の濃度も高くはないものの確認自体はされていた。

 そのあまりにも鉱石業の急激な成功と濃度の高い霧の発生時期が重なったことで、以前から注視はされていた、とこの羊皮紙には記されている。

 ただの偶然か、はたまた人為的なものか——と魔術師監理局の中でも意見が割れていた矢先、先代当主ロベルト・フォン・ハルトマンが突如死亡したという報せが届いたのだ。


 死因は急性心停止。生前、病を患っておらず身体も健康そのものだったロベルトの突然すぎる死。

 しかし死があまりに突然だったこともあり、遺言書も遺されず、当主の指名もされていなかった。

 普通に考えれば長男であるヘンゼルが家督相続をするのが習わしであろうが、昼間の様子を見る限り上手く話がまとまっていないと見える。


 シルフィの推察によれば、当主候補、もしくは屋敷の人間の中に魔術礼装を用いて邪悪な術式を発動させようとしている者がいるというが——妬みや身内の家督争いを考慮し出したらキリがないというのが、僕の正直な感想だった。


 長男のヘンゼルは順当に行けば当主になれるはずだが、家督継承が泥沼化している現状、他の当主候補を邪魔だと考えているだろう。


 長女クララの口振りからすると当主になることを諦めてはいないようで、次男のジュリアンも当主の座を他のきょうだいに譲るつもりはないようだ。


 三男のレイモンドは当主の座にはそこまで執着がないように思えたが、遺産の相続金には並々ならぬ興味を示していたし、鉱山業による利益を独占するために都合よく立ち回っていても、なんら不思議はない。


 残るソフィアだが——僕は彼女こそが、一番動機があると考えていた。

 だからといって、彼女が術式を発動しようとしている犯人だと決めつけるつもりはない。

 だがやはり、ソフィアは日頃から他の親族に酷く迫害されているらしかったし、養子とはいえ彼女にも家督継承権自体はあるのだ


————他の当主候補が全員消えてくれれば。


 余計な先入観だ、と一蹴する一方、十分にあり得る話だ、とも思う。

 そもそも、呪いを主軸とした危険な魔術礼装はどこから持ち込まれたのか——フォグワース村周辺に立ち込める不気味な霧は、その魔術礼装と関連性があるのか。

 そして、地下室への隠された道はどこにあるのか。


 解決するべき問題はあまりに多く、呪いの存在も一刻の油断を許さない。

 シルフィは『即発動はしない』と言っていたが、同時に『礼装自体を何とかしないといけない』とも言っていた。

 もう少し月が動いたら、夜陰に乗じて行動を起こそう。


 そう僕が次の行動を決めた、まさにその矢先——それは聞こえた。



「「キャァァァァァァァ!!!!!!!」」


「—————!!」


 その甲高い絶叫が、しんと静まり返った深夜の屋敷中に響いた瞬間、僕は木製の椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、疾風のごとく床を蹴っていた。

 扉を乱暴に開け放ち、壁の魔導灯の僅かな光源しかない暗い廊下を、悲鳴のした方向へと全速力で駆ける。


 視界は暗いが、これまでの幾度の隠密・偵察任務で夜目が利くようになっていたし、魔術で一時的に暗視状態にすることも可能なわけだが、どうやらその必要すらないらしかった。


 ものの数十秒で駆けつけた場所は——執務室。


 確か昼間、ヴェルターにヘンゼルが使っている執務室だと説明を受けた場所だ。

 その執務室の中では、クララとエレナ、そして老執事ヴェルターが目の前の惨劇に目を見開き、息を呑んで驚愕していた。

 エレナに至っては酷い嗚咽を漏らし、思わず崩れ落ちるように床に膝をつき座り込んでしまっている。

 ヴェルターがすぐさま気付き、痛々しそうに肩に手を添えるが、彼本人も動揺を隠しきれていない。


「失礼、通してください。一体何が——」


 僕は騒ぎを聞き付けて集まりだした数人の使用人たちに凛とした声をかけ、道を空けてもらい、その隙間から見える執務室の内側へ視線を向けた。


 —— 一目で、目の前の人物が死んでいるのだ、と理解してしまった。


 当然ながら治療は間に合わない。血があまりに流れ過ぎていた。


 胸の中央——心臓がある位置を、鋭利な短剣で深く貫かれている。

 口からは吐血した血が溢れ、その表情は最期の苦痛に無残に歪んでいた。

 机の上には修正途中と思わしき税金報告書類が虚しく散乱しており、息絶える直前まで何者かと激しく争ったように見える形跡がある。


 加えて、彼の頭部からも赤い血が流れていた。だがその血は、心臓付近から溢れ出している新鮮な滑らかな血とは違い、ドロリと黒く変色していたのだ。


 ————それが、僕の見た、ヘンゼル・フォン・ハルトマンの最期の姿だった。



 「嫌……!! 嘘でしょう!? ヘンゼル! ヘンゼル!!」

「に、兄さんが……!? な、何で……」


 エレナが夫の無惨な惨劇に直面して嘆き悲しみ、クララもまた実の兄の突然の死が信じられない、といった様子を見せる。

 これがもし演技なら相当な役者だが、彼女たちの中にヘンゼルを殺害した真犯人が潜んでいる可能性は十分にある。

 あるいは二人が共犯という筋書きも皆無ではない。


「おい! 一体なんの騒ぎだ! こんな、夜な……か、に——」


 続いて騒ぎを聞きつけたジュリアンが苛立ちを隠さずにやって来たが、その言葉はヘンゼルの無惨な死体を視界に捉えた瞬間、喉の奥で消え去っていった。


「……全員、現場から離れて下さい。現場の保全を最優先にします」


「ヘンゼル!! わ、私……!」


「…………エレナ様、こちらへ……」


「離して!! ヘンゼルと離れたくな——」


「黙りなさい。現場の保全が最優先と言ったはずです」


 未だに血まみれのヘンゼルにしがみつこうとするエレナを、ヴェルターとクララが何とか引き剥がしたところで、三男のレイモンドが廊下を駆けてきた。

 その表情は完全に顔面蒼白で、既にヘンゼル殺害の報せを聞き及んでいると見受けられた。


「……ど、どうなってんだ……兄さんが殺されたのか……?」


「……僕もさっき来たばかりで……い、一体どうなって……」


「…………ソフィアよ」


 その声は酷く恨めしく、けれど静かに告げられた。

 ヴェルターとクララによって介抱されていたエレナが、憎々しげに顔を上げた。

 その顔は涙と鼻水に塗れていたが、それを気にする余裕すらないエレナが怒声混じりに言葉を続ける。


「ソフィアしかあり得ないわ!! 当主候補筆頭だったヘンゼルを殺したのよ!! あの女ならやりかねないわ!!」


「しかし……エレナ様、ソフィアお嬢様は……」


「何よヴェルター!! あの女以外に、誰がヘンゼルを殺す動機があるっていうのよ!!」


 ヴェルターのなだめるような制止も空しく、声を荒げて激しく否定するエレナ。

 だが、第三者である僕の視点から見れば、動機などいくらでも考えられる。


 ヘンゼルが当主候補筆頭だと考えるなら、ヘンゼルを殺して得をするのは他の当主候補たちも同様だ。

 ソフィアが当主になるためにはヘンゼルだけでなく、クララもジュリアンもレイモンドも全員が邪魔な存在なのである。

 彼女への忌避感や嫌悪感が強いからこそ、真っ先に疑いの矛先が彼女に向けられているに過ぎない。


 そもそも、ソフィアのように華奢で細身の女性が、大柄なヘンゼルと正面切って争えるとは到底思えないし、仮に争えたとしても——ヘンゼルが真夜中の執務室にわざわざ彼女を引き入れるだろうか? それに、いつ後ろから刺されてもおかしくないくらい、ヘンゼルは普段から彼女から恨みを買っていただろう。


「……確かにエレナさんの言う通りかもな……これだけ騒いでも、あの養子は来ないし……」


 己も恨みを買っていると自覚している者たちは、自分たちにとって最も動機があり、犯人であってほしいと思わしき人物に嫌疑をかけ始める。


 動機のみから容疑者を決めつけようとする行為は——真犯人を探しているわけではなく、ただ『犯人であってくれれば自分たちにとって都合がいい人物』を探しているだけだというのに。

 

 殺人事件というのは、いつだってパズルのピースのように簡単には嵌まらない。

 僕は彼らの内面を深く知らないし、個人的な深い事情も知り得ない。

 意外な犯行理由や人間関係が隠れている可能性すらある。

 なんなら、身内の当主候補ではなく使用人の中に犯人がいたとしても別段おかしくはないのだ。


 そもそも、胸に短剣が刺さっている=純粋に人為的な刺殺、という先入観すらよくない。

 可能性としては限りなく低いものの——これが『呪い』によるものであり、魔術礼装の効果という可能性も否定はできない——


 ——幸い、即発動はしないから安心して。


 そこまで思考を巡らせて、僕は今日の中庭で聞いた彼女の言葉を思い出す。

 彼女は確かにそう言った。ならば、やはりこの事件自体は人為的なものだろう。


 シルフィの施した結界により魔術礼装が一時的に機能しなくなり、焦った犯人が自ら直接行動を起こした——と考えた方が、合点がいく気がする。


「とにかく……ここはミカ様に任せて、あの女を拘束した方がいいんじゃないか!? 今すぐあの女を探し出して捕まえろ!!」


 切羽詰まったようにレイモンドが叫び、同意するようにジュリアンが強く頷いて使用人の一人に指示を出そうとした、まさにその刹那——


 ————ふわりと、静かな風が吹いた。荒立ったその場を諭すような、優しく宥めるような風が。


「わ、私ならここにいます!」 


 小さな声ではあったが、凛として自信に満ちた、堂々とした声色だった。

 その声に小さく息を呑んだエレナたちは一斉に振り返り——声の主を凝視する。


 ソフィアは彼らの鋭い視線を正面から受け止めるように、力強く見つめ返していた。

 ハルトマンの最期は当然彼女の視界にも入っているだろう。

 その証拠に彼女の華奢な肩は微かに震えているし、死への恐怖から膝も笑っている。

 それでも、逃げずにそこに立つその佇まいに、数秒前まで狂ったようにソフィアを疑っていたエレナでさえも、一瞬言葉を失ってしまった。


「……また、気まぐれな導きですか? シルフィ」


 僕のどこか呆れつつも、苦笑交じりの声に応えるように、風は暗闇の中から静かに姿を現した。


「どうかな。あれは彼女自身の意思に違いないよ」


 その答えを聞いて、僕は心の中で思う。


 ——やはり、彼女はどこまでも気まぐれな風のようだ、と。


 そしてその風は、いつだって迷う僕たちをそっと導き、応えてくれるのだ。


◇ ◇ ◇


 ————霧が立ち込める北の辺境


怨嗟の声は人々を呑み込んでいく。


 四年前を境に回り始めた鉱山業、突然の当主の死。


 屋敷を包む不自然な魔力の流れ。


————これから始まるのは無慈悲な処刑儀式。


 裁かれるべき罪の在処。天秤にかけられて、虚しく消えた、かつての愛。


 ——悪意とは、愛ゆえに生まれるもの。


 ——愛しているがゆえに、裏切られたその想いは、深く、深く沈み、歪み、崩れ——


 果てに怨嗟へと変わるのだ。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

こんな戯れ言に付き合っていただき、大変恐縮です。

これからも彼らの活躍を見守っていただけたら嬉しいです!


あなたにも風の導きが有らんことを

にしみん

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