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東峰と瑠璃は、トヨタのスポーツカー、GR86で高速道路を走っていた。
GR86は、トヨタが手がけるFRレイアウトのスポーツカーだ。
流麗なクーペフォルムは、見る者を惹きつける。
低く構えたボディライン、シャープなヘッドライト、そしてリアのディフューザーが、そのスポーティな走りを物語る。軽量化されたボディと、パワフルな水平対向エンジンが組み合わされ、ドライバーの意のままに操れる俊敏なハンドリングが魅力だ。
運転しているのは、瑠璃だ。
太陽の光がフロントガラスを透過し、車内を明るく照らしている。
東峰は、助手席で半ば呆れながら言った。
「まさか、こんなスポーツカーをレンタルできるなんて思わなかったな……。」
そして、窓の外を流れる景色に目をやりながら、続けた。
「なぁ、瑠璃、スピード出しすぎじゃない?」
「え?そう?」
瑠璃は、楽しそうに笑いながら、アクセルペダルをさらに踏み込んだ。
「あわわわ」
東峰はさらに体が、シートに押し付けられた。
GR86は、まるで意思を持った生き物のように、青空の下の高速道路を駆け抜けていく。風が窓から吹き込み、髪をなびかせる。その疾走感は、日常の喧騒を忘れさせ、二人の心を解き放っていくようだった。
二人は、もう夕方だが軽井沢に到着し、テニスを楽しもうとしていた。
軽井沢は先ほどまで、梅雨らしく雨だった洋画が、二人が付いたときには梅雨の晴れ間となっていた。空は、先ほどまでの雨雲が嘘のように澄み渡り、淡い藍色に染まっていた。
西の空には、燃えるようなオレンジ色と淡いピンク色が混じり合い、雲の切れ間からは、まだ明るさを残す太陽の光が、軽井沢の森を黄金色に染め上げていた。木々の葉は雨に洗われ、一層鮮やかな緑をたたえ、風にそよぐたびに、瑞々しい香りを放っている。遠くの山並みは、夕暮れの柔らかな光に包まれ、幻想的なシルエットを描いていた。ひんやりとした空気が肌を撫で、心地よい湿り気を含んでいる。
東峰はボールとラケットを持ちながら、言う。
「瑠璃、行くよ。」
車やバイク、もちろん戦闘機もなのだが、それらの運転には、天才的なテクニックを発揮するが、スポーツとなると、からっきしダメなのが瑠璃だった。そんな瑠璃が、GR86で軽井沢まで来た勢いで、珍しくテニスをしようと言い出したのだ。
そんな瑠璃に面食らいながら、東峰はコートに立っていた。
案の定、瑠璃は東峰が打ったボールに食らいつくのがやっとという状態で、汗まみれになってへたり込んでしまった。
ボールを追いかける彼女の動きは、まるで水を得た魚のような東峰とは対照的に、ぎこちなく、どこか空回りしているようだった。ラケットを振る腕は力なく、ボールは狙った方向にはほとんど飛ばない。
それでも、彼女は必死にボールを追いかけ、転んでも立ち上がり、額に滲む汗を手の甲で拭いながら、必死に東峰の打ったボールに食らいついていた。
東峰は、夕日の逆行の中、汗をほとばしながら、不器用にボールを追いかける瑠璃を見て、なんだか美しいと思っていた。
しかし、その瑠璃はそれでもなお、背中に貼り付いた、視線を振り落とすことが出来ず、かなり疲弊していたのだった。




