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夜の病院、小池の入院している特別室の白いスペースに、ぼんやりと、赤いドレスをまとった若い女性の立体映像が浮かび上がった。
「お母さん」
「百合!」
小池早苗はおぼつかない足取りで、百合に抱きついた。
百合も早苗を抱きしめた。
この最新鋭のホログラムは、たとえ離れ離れで交信しても触れ合う感覚を味わえるのだ。
しばらく抱き合った後、百合が言った。
「お母さん、ごめんなさい、ジャミラン星に残ることにして。」
「いいのよ、百合、あなたが幸せなら。」
「ありがとう、お母さん。」
小池さなえは、少し口の端をあげて言った。
「でも、あなた、面食いとはおもわなかったわ。」
百合は少し膝をかくんとし、少しよろけた。
「な、何を言うの、お母さん、私はヒューマ王子の優しさに引かれて……」
「ふふふ、いいのよ、今度はヒューマさんに会わせてね。」
「はい。」
小池早苗は、軽い溜息をつき、少し離れると
「実はあなたに話があるの……」
「なぁに、お母さん」
さなえはためらいながら、打ち明けた。
「あなたは実は私の娘ではないのよ。」
百合は目を見開いた。
「え?」
さなえは、少し遠くを見るような顔つきになった。
「私がね、選挙活動のため、奈良県に里帰りしていた時に、吉野川の上からどんぶらこどんぶらこと光る保育器に入った赤ちゃん、つまりあなたを拾ったの。」
「……私は桃太郎か?」
百合は苦笑しながらさなえの次の言葉を待つ。
「ごめんね。」
百合は首をふって言った。
「ううん、実はね……私、なんとなく、感じていたの。
血の繋がりがないんじゃないかなって……」
「え?
そうなの?」
「うん、だって、お母さんと私、全然似てないし、私、かわいいし。」
今度はさなえの方が少しよろけそうになった。
「でも、あなたは私のお母さん、たくさんの愛情をくれたわ。」
「百合……」と、再び遠く離れた星同士で立体ホログラムで抱き合った。
小池早苗は、今までになく穏やかな表情となり
「なんだか、ばかばかしくなっちゃった……」
「お母さん、何が?」
「いえね、私、憲法九条を変えてから次の段階でアメリカの51番目の州になろうと思っていたの。
それは日本を強くするためにね。
でも、日本にもWEF-Japanという頼もしい仲間がいて、彼らは強いだけでなく、とても優しい。」
「そうね、お母さん。」
「だからそれはなかったことにするわ。」
立体ホログラムの映像が、微妙にビビッと、乱れ始めたが小池の顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。




