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「え?
帰らない?」
佐内は百合に聞いた。
「はい、私はヒューマ王子と結婚して、この星の方たちと、この星を復興します。
この星のみなさんも私を慕ってくださっているようですし。」
百合の横には、車椅子に座ったままのヒューマ王子が、優しく微笑んでいた。
近田は目を細めてにやりと笑った。
「百合はんって、面食い?」
「な、何を言うんですか?」
「顔が真っ赤やで。」
百合とヒューマ王子、いやヒューマ王の後ろにいる住民たちを含めて、周囲はどっと笑いに包まれた。
百合は取り繕うように話を変えた。
「私、今後は遠慮せずジャミラン星のシステムを自由に使えると思うので、地球にいるお母さんと気楽に話せると思うし、15年捕われなかったここの宇宙船で地球に遊びに行けると思います。」
瑠璃は目を輝かせて言った。
「わぁ、その時は連絡くださいね。」
和やかな雰囲気の中、ジャミラン星独特の曲がりくねったデザインの松葉杖で、立っている川中は黙って誰かを探すようにきょろきょろしていた。本郷はそれに気づいた。
「副隊長、どうしたんですか?
誰かを探しているんですか?」
「い、いや、なんでもない。」
百合は銀色に輝く箱を佐内に渡した。
佐内は不思議そうな顔をして聞いた。
「これは?」
「私はこの星で行動に制限はかけられていませんでした。
もちろん、発信は隠れてやってましたが。」
百合は苦笑しながら続けた。
「ですから地球の情報はいつも把握しておりました。
お母さんのあの不自然な体の動き、先日のファイターマンとダマリナの戦いなどを見ていると、お母さんはダマリナの毒素に感染していると思います。」
WEF-Japanの隊員たちは表情をこわばらせた。
本郷は問い返した。
「それは本当ですか?」
「はい。
私がこのジャミラン星に拉致される数年前に、ジャミラン星はタンバル星人を中心にした、宇宙愚連隊に侵略されかけたことがあります。
その時、ジャミランの人々がタンバルの毒素にやられて、体が石灰化して、たくさん亡くなったそうなのです。
そこに宇宙連邦が助けに来てくれて、ジャミランの人たちにロケットランチャーなどの武器を与えたりして一緒に戦い、宇宙愚連隊を追い払ったのです。
その時、宇宙連邦からタンバルの毒素を消す薬が渡されて、生き残った人々はそれで助かったそうなのです。
これはその残りです。
地球にはまだ宇宙連邦が来ていないようだし、毒素にかかっているのはお母さんだけのようなので、ぜひ、これを持って行ってください。」
近田は唖然として言った。
「ジャミラン星って、苦労して貼るんやなぁ。」
佐内は渡された銀色に光る箱をしっかり受け取って言った。
「承知しました。
小池首相の治療に使わせていただきます。」
そして、たくさんのジャミラン星の人々の見送りの中、WEF-Japanの隊員たちは、コスモライナーに乗り込もうとしていた。
ジャミラン星の人々から「ありがとう」「また来てねぇ」と、声や、万歳、拍手などが聞こえる。
瑠璃の首からかけたペンダントもきらっと一瞬、輝いた。
川中はふと、見送りの群集の中の一人の少女と目が合った。
「きららちゃん!」
その少女は手を振りながら、口元は
「元気でね、またね。」
と言っているように見えた。
思わず川中はタラップから駆け下りようとした。佐内はびっくりして、川中の腕をつかむ。
「危ない!」
川中は佐内に腕をつかまれながらハッチの中に連れていかれる。佐内は少し怒ったような声で
「何やってんですか!
副隊長、これから出発だというのに落ち着いてくださいよ、まったく。」
「まったく」といつもの佐内の嫌味を聞きながらも、川中はどきまきして何も言えなかった。
川中の頭には、きららの最後の言葉が浮かんできた。
「龍斗クン、そんな悲しそうな顔しないで。
私、死ぬんじゃないのよ。
他の星で生まれ変わるの。
それから龍斗クン、約束。
宇宙の不思議を、諦めないでね。」




