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百合は近くにあった椅子に座り、話し出した。
「実はこの星、ジャミラン星は、星全体をひとりの王が治める、争いのない平和な星だったそうです。
その平和な星に、数十年前に突然、ウダンボ星人たちがやってきて、人間をガマガエルに変える薬品をミスト状にばらまいたのです。」
WEF-Japanの隊員たちは、息を飲んだ。
「ガマガエルはウダンボ星人の主食なのですが、計画的に食料を生産するという術を考えないウダンボ星人は、次々と色々な星の住民をガマガエルに変え、食べ尽くし、だいたい30年の周期で星を滅ぼし、別の星に移るということを繰り返しているのです。」
「なんと……」
と、佐内は唖然とする。
百合は少しうなずいて続けた。
「ある時、ここの王、イッテツ王がどこでどう知ったのかは分かりませんが、10万光年離れた地球にいる娘、つまり私なんですが、息子のヒューマ王子とキスをすると、ガマガエルの姿から人間に戻れると分かり、15年前に私を地球から拉致してきたのです。」
瑠璃はしかめっ面をして言った。
「そんな、身勝手な……」
「はい、イッテツ王もそれは分かっていたのですが、ジャミラン星全体の住民のためだと思い、心を鬼にしたのです。」
近田は困惑した様子で言った。
「なんで、百合はんと、この星の王子がキスをしたらガマガエルが人間にもどれるんや?」
「それは分かりません……。」
瑠璃は気づいた。
「あ、ガマガエルたちが人間になっていないということは、百合さんはまだそのキスをしていない……」
百合はうつむいて言った。
「ごめんなさい。
ここの人々のために王子とキスをすればいいのですが、どうしても生理的に受け付けないのです。
王子はやさしいのですが……」
その時、のしのしとゆっくりとした足音が聞こえ、大きなガマガエルが入ってきた。
その全身がいぼだらけの醜いガマガエルを見て、佐内と瑠璃は絶句した。しかも、異様な臭いまで漂ってくる。
「こんにちは、地球の皆さん、ジャミラン王国の王子ヒューマです。」
それは名乗った通りの、ジャミラン王国の王子ヒューマだった。その姿は醜いが、声は若い青年のものだった。
しかし、体全体からの悪臭が、隊員たちを驚かせた。
「百合姫を迎えに来たと聞きました。
そもそも百合姫を拉致してきたのは我が父、イッテツ王の蛮行です。
本当に申し訳ないことをしました。
イッテツ王も今はウダンボ星人に殺されていませんし、どうぞ、地球に連れて帰ってあげてください。」
ヒューマ王子はそう言って頭を下げた。
本郷は困惑して聞いた。
「よろしいのですか?
それではここの住民たちはガマガエルのままで……」
「仕方ありません。
そもそもイッテツ王がウダンボ星人との友好条約を、特に相手のことを調べもせず結んでしまったのが原因なのです。」
瑠璃は、この王子が百合には、優しくしていたのだと察し、やるせない気持ちになった。そして言った。
「他に方法はないのかしら……」
百合はつらそうに答えた。
「ヒューマ王子はやさしくて、私の行動を束縛しませんでした。
でも、やはり地球に帰りたくて、ひそかにこの王宮のコントロールタワーから地球に電波を送っていたのですが、職員の目を盗みながらですから、大きな出力で発信できなくて、本当に届くか不安でした。
そのメッセージの『助けてください』には、この星の住民たちのことも含めているのです……」
川中はやっと口を開いた。
「そうだったのですか……。
いやはや、この星の方々のこともお気の毒ですが、残念ながら私どもは小池首相の娘さんを連れて帰るだけが業務でして……痛っ!」
佐内が川中の横っ腹を肘で突いた。
その時、王宮の広間は、突然の激しい振動に揺れた。




