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瑠璃は、近くの飛鳥山公園にある「アスカルゴ」の入り口付近、古びた石壁に溶け込むように隠されたドアへと誘われるように進んだ。長年の風雨に晒された苔が薄く生えたその表面は、触れるとひんやりとしていた。公園の明るい日差しとは対照的に、周囲の空気は静謐で、秘密めいた気配を帯びている。「アスカルゴ」――急峻な坂道をカタツムリのように進む姿から、住民の公募でつけられた愛称だ。
その入り口は、喧騒から離れた木々の影にひっそりと佇み、まるで秘密の扉のようだった。瑠璃は、その古びた壁にそっと指を触れた。どこを触っても、反応する指紋センサーが感知し、瑠璃はその古びた石壁に溶け込むように隠されたドアへと、まるで磁石に引かれるように吸い込まれていった。中へと足を踏み入れた瞬間、外の喧騒は嘘のように消え失せ、瑠璃は別世界へと誘われた。
そこは、まるで最新鋭の研究所の入り口を思わせる、無機質で洗練された空間だった。金属の扉が音もなく開き、瑠璃は吸い込まれるように乗り込んだ。ボタン一つで、その箱は猛烈な勢いで地下深くへと沈んでいく。窓はなく、地上からどれだけ降りたのか想像もつかない。
やがて、エレベーターが静止し、扉が開くと、そこはさらに驚くべき空間だった。
ルーフが全面ガラス張りになった、まるで宇宙船のコックピットのような、流線型の二人乗りのリニアカーが静かに待機している。そのフォルムは、まるで滑らかな曲線を描くパソコンのマウスのようで、未来的なデザインをしていた。車内は、淡い青色のLEDライトに照らされ、清潔感と機能性を兼ね備えている。瑠璃は迷うことなくそのリニアカーに乗り込み、シートに身を沈めた。静かに閉まるドア。そして、次の瞬間、リニアカーは驚くべき速度で地下のトンネルを疾走し始めた。
窓の外を流れるのは、光の帯と、時折現れる構造物の影。風を切る音もなく、ただひたすらに、彼女は基地へと急いだ。
ここは、都内某所にある国連地球防衛軍日本支部(WEF Japan)基地内。部屋の中央にあるテーブルには、山桐隊長のほか、川中龍斗副隊長、近田智一隊員、本郷史郎隊員、佐内由美恵隊員、宮坂蘭奈隊員が顔をそろえている。
自動ドアが開いて、そこに、瑠璃が遅れて入ってくる。瑠璃も紺色のWEF-Japanのユニフォーム姿になっている。
「遅くなってすいません」
川中副隊長がじろりと振り返りながら
「まったく……、遅いですよ」
「す、すいません」
山桐隊長が
「まあまあ、仕方がないじゃないか、神楽坂隊員は休暇中だったのだから」
山桐は、50歳で身長165cmで腹は出ているが、全体的にがっしりしていて、眉毛が濃く、一見こわもてだが厳格さと温かさを兼ね備えた、頼れるリーダーである。 だが親父ギャグが致命的に面白くないと言う欠点を持つ。
「まったくどうしてこんなどんくさい方が地球の平和を守る世界的な軍の日本支部にいるんですかねぇ」
と、川中副隊長はため息をつく。川中は身長172cmでひょろっとした45歳。眼鏡をかけて眉間にしわを寄せいやに大きな目を瑠璃に向ける。思わず瑠璃は下を向き、すごすごと席につく。佐内隊員が言う
「ちょっと副隊長、それは問題発言ですよ」
川中副隊長は横を向く。
瑠璃は美しくも毅然な態度を取る、頼れる姉御肌の佐内隊員に、羨望のまなざしを向ける。25歳の佐内は女性としては167cmと身長が高く、ロングヘヤで、スリムなプロポーションは、無駄な筋肉はまったくないという様相を見せる。
ふと山桐隊長が
「しかし神楽坂隊員と呼ぶのは舌がからみそうだね。
これからは瑠璃隊員でもいいかね」
すると、すかさず再び佐内隊員が
「山桐隊長!
同僚や部下の女性職員を下の名前で呼ぶのは、今はセクハラですよ!
どうしてここの上司はこうなんですかね……」
思わず山桐は口をつぐむ。
そこで太っていて、いつも汗を拭いている近田隊員が助け舟を出す。
「山桐隊長、休暇中の神楽坂隊員まで呼び出すなんて、どうしたんですか?」
近田は35歳で身長173cmだが体重はもうすぐ100kgにせまるらしい。明るく、楽しい性格で大食漢で、軍一番の力持ちでもある。
救われたように山桐は気を取り直し、
「実は……、ここは宮坂隊員から説明してもらった方がいいだろう。
宮坂隊員、よろしく頼む」
「はい」
と身長は佐内と瑠璃の間の160cmで、実はハイテクノロヂーの眼鏡をかけ、抜群のプロポーションをの宮坂が話し始めた。
「全宇宙の平和と規律を守る宇宙連邦から、我が地球も協力してほしいとのことで、近々、地球も契約を交わす予定になっていることは皆様もご存じの事と思います。
かなり昔から宇宙連邦は地球にメッセージを送っていたのですが、なかなかそのメッセージを解読できず、ここまで遅れてしまいました。
ただ、私は最近の宇宙連邦からのメッセージに違和感がありました。
私は目が見えない分、あらゆる音に興味を持っていました。
そんななか、幼い頃から、宇宙からのメッセージのようなものを感じていました。
そのメッセージを解読するために、データ分析の能力を磨いたとも言えます。
そして、その能力で違和感を覚えたのです。
今回、その違和感を突き止め、結果をWEF本部にも照会していますが、まず間違いないだろうとのことです」
28歳で身長180cmと身長が高く、スリムだが、鍛えられた身体であるのがユニフォームからでもわかり、クールでイケメンな本郷隊員が聞く。
「どんなメッセージだったのだ?」
宮坂は答える。
「はい、どうやら宇宙での犯罪者が地球に、しかも日本に来たらしいのです」
一同は目を見張る。
「かなり極悪な宇宙人のようで、このままでは重大な被害が地球に起こるだろうとのことです」
近田は慌てて聞く。
「な、なんやて!
宇宙連邦は何もしてくれへんのか、と!」
宮坂は言う。
「もちろん手を差し伸べるつもりだが、まず宇宙警官を派遣したとのことですが、何せ宇宙連邦と地球はあまりに遠いので、ワープを使いながらでも時間がかかるそうです。
何より、地球は速く、自らの地球防衛軍を人類の前にお披露目をして、地球人が一体となって自らを守ってほしいとのことです」
瑠璃は思った。
「ファイターマンが言っていたことと一致するわ」
近田
「は?宇宙警官?」
「とにかく、しばらくは日本中をパトロールして極悪な宇宙人とやらを探索しよう」
川中はしかめっ面をして
「なんだか雲をつかむような話ですな」
近田はすかさず言った。
「我々の戦闘機でパトロールしてはだめですか?」
川中があきれたように言う。
「何を言っているんだ近田隊員、我々はまだ正式には、日本でも秘密の組織なんだよ。
出来るわけないじゃないか?」
山桐は言う
「空からのパトロールはテレビ局の取材を装ったヘリコプターで巡回してくれ。
リニアカーで日本のどこを回ってもかまわん。
また足でパトロールする者は特に人が多そうな大きな町を中心に歩き回れ」
隊員たちは
「ラジャー!」
と言って立ち去る。
川中副隊長はため息をつきながら言う。
「どこを回ってもかまわないって隊長、経費がかかりそうですねぇ」
山桐は無表情で川中を見つめる。
「川中副隊長、何をしているんだね」
「へ?」
「へ?じゃないだろう。
君も出かけたまえ」
「わ、私もですか?」
「当たり前田のクラッカーだ。
雲をつかむような話だからこそ、君も戦力になりたまえ。
私も、この後、出かける」
「わ、わかりました」
と、そそくさと不満げに川中副隊長も出ていく。
そして基地には山桐と宮坂が残った。宮坂は山桐の姿をハイテクの眼鏡で位置を確認しながら、レーザー白杖を延ばし、、その近くに寄り、話しかける。
「山桐隊長、あのぉ……」
「な、なんだね。
宮坂隊員、わ、私には妻も子供も……」
宮坂は、山桐の声の震えにわずかに眉を寄せ、ため息をつきながら言った。
「なに、バカなこと、言っているんですか?
違います。
あの事は言わなくていいんですか?
と言いたかったのです」
「ははは、ちょっと受けようと思ってね。
ええっと、あの話って、あぁ宮坂隊員、君が前々から受け取っているもうひとつの微弱なメッセージのことか?」
「はい。
まだ解読は出来ないのですが、どうも気になります」
「ふむ、もう少し解読出来てからでいいだろう。
引き続き、そのメッセージというか電波の解析を急いでくれ」
「はい」




