49
「龍斗くん、龍斗くん」
ふと目を上げると、ぱっちりとした目で、おさげのかわいい少女が川中を見つめていた。
「何?
きららちゃん。」
少女は満面の笑顔で言う。
「龍斗くんって、本当に絵がうまいね。」
川中は自分の描いていた宇宙船の絵を見る。
「そうかな?」
川中は隣の家の、きららという少女と、押し入れの日田で絵を描いていた。
きららはベランダ越しに川中の絵を見て微笑んでいた。
キララは空想好きで、いつも宇宙や未知の生命体について語っていた。
「いつか、宇宙人と友達になるんだ!」
と言うと、きららの目は星空のように輝いていた。川中はそんなきららが大好きだった。
ある日、きららが言った。
「宇宙人はきっと、虹色の光線で話すんだよ!」
と言えば、川中は
「でも、光の速さって決まってるんだよ?」
と、科学的な疑問を投げかける。
でもキララは、川中のそういう「現実的な」部分を面白がり、
「龍斗くんは、いつも本当のことを知ろうとするんだね!」
と言って笑い転げる。
ドアのノブには「面会謝絶」の札が下がっていた。
「ごめんね、川中さん、龍斗君。
今、この通り、会えないんです。」
病室の前で、ドアのノブの札に目をやりながら、謝るきららの母に、川中とその母は残念そうにうつむく。
「いえ、大変な時に来てしまってご迷惑をおかけしました。
龍斗、さ、帰ろう。」
川中母子が立ち去ろうとしたときに、きららの母親が呼びかけた。
「あ、川中さん、ちょっと待ってください。」
川中母子は立ち止まり、振り向く。
「きららが……ちょっとだけ会いたいって……」
彼女の最後の言葉は、
「龍斗クン、そんな悲しそうな顔しないで。私、死ぬんじゃないのよ。、他の星で生まれ変わるの。
それから龍斗クン、約束。宇宙の不思議を、諦めないでね。」
だった。
はっと川中は目が覚めた。
体中、汗びっしょりだった。青ざめた顔を手で覆いながらため息をつく。
「ふう……」
シャワーを浴びてから、これから10万光年の旅に出かける特大の宇宙船コスモライナーの発射準備室に駆け込む。
佐内が川中に冷たい視線を投げかける。
「副隊長、集合時間ギリギリですよ。」
川中は申し訳ない顔をするでもなく
「集合時間には間に合っている。遅れたわけではない。」
佐内はため息をつく。
その準備室には小池首相もいた。
「副隊長の川中さんですね。
このたびはありがとうございます。」
小池は、腰を折って頭を下げる。
川中はシャキッと敬礼し
「はいーっ!
必ず総理の娘さんを連れて帰ってきますので、ご安心ください!」
WEF-Japanの面々はしらけた表情をする。
隊長の山桐は言う。
「イタリアでのシャドウマンタの死体の片付け作業を免除され、私たちは小池総理大臣の娘さん、百合さんを10万光年先のジャミラン星まで、コスモライナーで出向くことをWEF本部から許可を得ています。
頑張ってきてくれ。」
WEF-Japanの隊員たちは
「はい!」
と敬礼する。
そして、山桐は川中の方に向き
「川中副隊長、隊員たちをよろしく。」
「は、はい。」
瑠璃は地球の電波も届かない場所では使い物にならないスマートフォンを、ポケットに忍ばせていた。
佐内はそれに気づいた。
「神楽坂隊員、スマートフォン、持っていくの?」
「はい、何かの役に立つかもしれないので。」
「充電はどうするの?
あ、コスモライナーから取るのか……。
コスモライナーの壁面には太陽光発電パネルが装着されているものね。」
瑠璃は、本当はファイターマンを連れて行くためだとも言えず、少し苦笑いで答えた。
「はい。」
そして、隊員たちは山桐、宮坂、小池、WEF-Japan職員達の見守る中、コスモライナーで旅立っていった。
第五部 終わり




