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アリゾナの乾いた大地に、巨大な影が降り立った。
マックスの会社の宇宙船だ。
鈍く光る金属の巨体が、砂塵を巻き上げながら、轟音と共に荒野に静止した。その威容は、周囲の荒涼とした風景に異質な存在感を放っていた。
宇宙船の後部には、三つの卵型のカプセルが連結されており、それらもまた、静かに大地にその姿を現していた。
マックスは、既に現場に到着していた。彼の愛車、今ではクラシックカーと呼べるフェラーリ・ディトナは、宇宙船の着陸地点から少し離れた場所に停車している。荒野の熱気と埃が、彼の顔に張り付いている。
彼の目は、目の前の光景に釘付けになっている。宇宙船のハッチが開くのを、彼は固唾を飲んで見守っていた。
砂漠の静寂を破るように、金属が軋む音が響く。ゆっくりと、しかし確実に、宇宙船のメインハッチが開いていく。
その開口部から現れたのは、ふらついた足取りのスペースXYZ社の社員たちだった。
マックスは声をかけた。
「ご苦労様。」
社員たちは恐縮して
「はい!」
と敬礼したが、ふらついて倒れてしまった。
「よくやった。
約束通りボーナスは2倍にしてやる。」
社員たちは戸惑いながら言った。
「会長、ボーナスは10倍とおっしゃってくださいましたが……」
「何?
そうだったか?」
「はい……」
「じゃ、5倍でどうだ。」
「……」
マックスは苦笑いして言った。
「わかった、10倍出そう。」
「ありがとうございます!」
マックスは、今後も働かせるためにも、ここは折れた方が良いと考えた。そして、早速言った。
「さあ、ヒトクイを見せてくれ。」
「はい。」
少し元気になった社員の一人は、リモコンのスイッチを押した。
すると、宇宙船の後ろにつながっている卵型のカプセルの上部が、静かにせりあがった。
マックスは
「ん?」
と首を傾げた。
3台のカプセルから現れたのは、たしかにヒトクイだったが、なんだか様子がおかしい。
何となくおとなしいのである。一頭は完全に眠っていた。
「なんだ、大人しいな。
長旅で疲れているのか?」
社員たちは説明した。
「いや、ヒトクイは本来、大人しい性格なんだそうです。
先日のニューヨークで暴れたヒトクイは、凶暴な個体だったようです。」
「何?
でも、人を食べるんだろう?」
「食べることは食べますが、本来雑食でして、なんでも食べるそうです。
私たちが行ったミラノ星では、ヒトクイが人を食べないよう、家畜や雑穀を与えているそうです。」
マックスは戸惑った。
「まぁ、それならまあいい。
とりあえず早く殺処分して、体の中のレアメタル成分を取り出すんだ。」
社員たちは顔を見合わせ、
「殺処分ですか?
どうやって」と尋ねた。
マックスはにやりと笑って言った。
「それはな……お前らが考えるのだ。」
前のめりになって倒れた社員たちをしり目に、マックスはフェラーリに乗り込み、さらに言った。
「とりあえず、ヒトクイはこのアリゾナの砂漠に放牧しておけ。
殺処分の方法が考えつかなくても、食物の少ない砂漠地帯だ。
やがて餓死するだろう。」
「はぁ……」
と、社員たちは、おとなしいヒトクイたちを見て、複雑な表情を浮かべるのだった。
そして、マックスは古いフェラーリに乗って、去っていったが、かなりその車の姿が遠くになり、小さくなったころ、一筋の光が車に降り注いだ。
第4部終わり




