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路面電車、東京さくらトラム。その愛称も耳に新しいが、この辺りの古くからの住民たちは、今も昔と変わらず、親しみを込めて「都電」と呼んでいる。ガタンゴトンと心地よいリズムを刻みながら、古き良き東京の風景を映し出すように、都電は梶原の街をゆっくりと進んでいく。
その都電の梶原駅のすぐそば、昔ながらの商店街の喧騒が少しだけ遠ざかる一角に、神楽坂家はひっそりと佇んでいる。
神楽坂正美は、もうすぐ50歳になろうとしているが、30代後半にしか見えない、両端が僅かに吊り上がっている大きなネコ目をした身長170cmの背の高い美人である。Tシャツにパープルのカーディガンを羽織った正美は、朝のランニングから帰ってきた瑠璃に話しかけた。
「瑠璃、おかえりなさい。
今日はお休みで東峰クンと会うんでしょ?
朝ごはん食べていく?」
「うん、食べていくわ、お母さん」
身長155cmの自分と違って背の高い母親に向かって少し顔を上げて瑠璃は言う。
「その前にシャワー浴びるわ」
母の正美は応える。
「わかったわ、じゃ、私はお店に行くから、朝食、テーブルに置いておくね」
「はあーい」
ふと食卓を見ると会社員の父の真が今日は休みナタメ、朝から時代劇の再放送を、のんびり見ていた。テレビから
「この紋所が目に入らぬか!」
と、名場面のセリフが聞こえてくる。
部屋に戻った瑠璃は、ジョギングで汗に濡れたシャツを脱ごうとした。スレンダーでくびれたウエストまでシャツをまくりあげたところで、ふとスマホに目をやると、ディスプレイ全体に宇宙警官の顔がじっと見ていた。
「な!何見ているのよー」
「ええ、いや、何も……大きくなったなぁと思って……と、言うかなんというか」
「は?
何言ってんの?
大きくなったって、初めて会ったんじゃないの!」
「あ、え、そ、そうですね」
「このスケベ」と思いながら瑠璃は気が付いた。
「あ、電源切るといいのか」
「ちょ、ちょっとあー」
プツンと瑠璃はスマホの電源を切った。瑠璃は顔が赤らんでいるのを感じていた。




