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かっては美しい街、フランスのパリ。
そのパリは今や、がれきの街となり、無残な景色となっている。しかも街の真ん中に、ファイターマンに倒された宇宙生物ヒトデナシが俯せで倒れている。あたかも街の中に大きな星印が印刷されているようである。辺りは宇宙生物の死体からにじみ出る粘液からの悪臭が立ち込めている。
宇宙生物のこの死体の処理にフランス政府は頭を痛めていた。
海へ、投棄するにも海までどう運べばいいのかわからず、まして、謎めいた宇宙生物を魚たちの餌にして大丈夫なのかの疑問が判断を遅らせていた。
ニューヨークの街に現れてファイターマンに爆破されて粉々になった宇宙生物のヒトクイの残骸を、レアメタルの成分があることをかぎつけ、現在、収集作業を行っているスペースXYZというSNSの大企業にも依頼したが、創始者であるスティーブ・マックスから今はそこまで手が回らないと拒否もされている。
そこで、フランス政府は、WEF本部に協力を要請した。WEF本部は、その巨大な質量と、未知の物質であることから、慎重な対応が必要だと判断した。
彼らは、まず、ヒトデナシの死体から採取したサンプルを分析し、その生態や成分を解明しようとした。しかし、その粘液は強酸性を示し、通常の分析機器では対応できないことが判明した。
そこで、WEF本部は、驚くべき処理方法を考案した。
それは、まず、ヒトデナシの死体を、各国のWEFと協力して一度、地球の大気圏外に運び、時はなし、ヒトデナシの死体が地球の重力に引っ張られ、大気圏に突入する際に、燃え尽きさせるという方法だ。この方法は、悪臭の拡散を防ぎ、また、未知の物質が環境に与える影響を最小限に抑えることができると考えられた。
しかし、問題は、その巨大な死体をどうやって、地球の大気圏外まで運ぶかと言う事だった。パリの街は瓦礫で埋め尽くされ、通常の輸送手段は使えない。
そこで、WEF本部は強靭な鎖でヒトデナシの死体を各国WEFの航空母艦コスモフェニックスで、釣り上げて大気圏外に投棄しようとした。WEF-Japanもこの作業に参加していたが、うまく行かない作業に困っていた。
コスモフェニックスの近田は嘆く
「こら、あかんわぁ。ぬるりと滑ってコントロールが効かへんわぁ」
瑠璃はそおっと持ち場を離れてトイレに駆け込む。
「ファイターマン、ねぇ、ファイターマンってば」
眠そうな声でスマホからファイターマンの声が聞こえる。
「なんすか?」
「なんすか?じゃないわよ、今、先日の宇宙生物の処理がうまく行かないのよ。」
「だ、だからなんですか?倒した怪獣の処理までヒーローは責任持てませんよ。」
瑠璃はあきれて返す
「自分でヒーローなんてよく言うわ。とにかく何とかならないの?
「あのねぇ、ルリさん、念力で怪獣を浮き上がらしたり、光線で怪獣を凍らしたり、指から水を出したりするなんて便利なことって実はあまりないんですよ。まぁ、空を飛ぶ無頼派ドラマみたいに出来ますが……」
「何を言っているかわからないけど、なんっとかして!これからスマホをかざすから」
「ちょ、ちょっと」
瑠璃は窓のないトイレから飛び出し、コスモフェニックスの老化にある丸い窓に向かってポーズをとり、
「チェーンジファイトー」
と、スマホを窓にかざす。
「あー!」
と、突然、ヒトデナシの死体処理現場の近くにしりもちをつきながらファイターマンが現れる。
作業をしていたWEFのメンバーや、心配そうに見守っていたフランスの人々はあっけにとられる。そして、つぶやく
「また、あの巨人だ……。やはりカッコ悪いなぁ」
ファイターマンは首を振りながら、仕方なく、ヒトデナシの死体処理現場に近づき、ホバリングしている複数のコスモフェニックスから垂れている鎖をヒトデナシノ死体に括り付け始めた。
しかし、時々ふぶやき声が瑠璃の耳に聞こえる。
「あぁ、臭い、臭い……」
瑠璃はため息をつく。
そして、ようやくヒトデナシの死体に鎖がしっかりと括り付けられた。
フランス・パリの街の至る所に、瓦礫の山がそびえ立ち、かつての美しい街並みは見る影もない。崩れ落ちた建物からは、鉄骨がむき出しになり、窓ガラスは粉々に砕け散っている。シャンゼリゼ通りは、倒れた街路樹や車の残骸で埋め尽くされ、かつての華やかさは失われていた。セーヌ川の水面は、濁り、異臭を放っている。ノートルダム大聖堂は、一部が崩落し、痛々しい姿を晒している。ルーヴル美術館のガラスのピラミッドは、砕け散り、その残骸が、瓦礫の中に散らばっている。
そんな中、コスモフェニックスからの鎖によってゆっくりと浮上したヒトデナシの死体は、まるで巨大な黒い星のように、瓦礫の街の上空を移動していく。その光景は、破壊されたパリの悲惨さを、一層際立たせていた。
WEF-Japanの隊員たちは、緊迫した面持ちで、その作業を見守っていた。
やがて、ヒトデナシの死体は大気圏外で解き放され、地球の重力で大気圏に突入し、燃え尽きた。心配されたスペースデブリ(破片)もなく、未知の成分も空気中に検知されず、人類は地球の自らの防衛力に改めて感嘆するのであった。
そのころ、瑠璃は時々、スマホのにおいを嗅いでいた。
「なんとなく臭いわねぇ……」
スマホからファイターマンの声が聞こえる
「そんな……自分で、私を手つだわせておいて、それはないんじゃ……」




